現れた援軍とバルチャーの切り札
「「あ、兄貴!」」
自分達の船長の危機に現れたランドに乗組員達も驚きながらも歓喜の声をあげる。
ランドは即座に乗組員達と相対する海賊達に向かって素早く飛び上がると蹴り飛ばす。
「ぐっ?」
「がっ?」
「げっ?」
海賊達が乗組員から離されるとランドは「とりあえずアンタらはマーセルのとこにいけ」と告げる。
乗組員達は指示に従いマーセルを囲むように一ヶ所に集まった。
それを確認したランドも海賊とマーセル達との間に陣取った。
「とりあえず…だれも死んでないか?」
ランドの質問にマーセルは「あ、ああ…でもお前どうしてこんなところに…?」と尋ねる。
それにランドは「あー…実は倉庫でウォータースライムの寝具を出したあと少し気になって横になってみたら思いの外気持ちよくてな、そのまま寝てしまったんだ。奥の方にいたから乗組員達も気がつかなかったんだろう…」と気まずそうに答えた。
「ハ、ハハハお前は本当に…本当にマイペースな奴だな!」
ランドの言葉にマーセルは涙を拭いながら笑ってそう言葉にした。
「まぁ…そのお陰でこうしてマーセル達の危機に気がつけたんだ。勘弁してくれな」
「いいさ、お陰でまたお前に救われた。本当に助かったぜ」
マーセルはそう言ってランドに笑顔を向ける。
「まだ完全に助かった訳じゃないがな。あと…それとなマーセル…」
マーセルの言葉にランドは返事をしたあと少し言いづらそうに言葉を続ける。
「なんだ?」
「とりあえず服を着替えてこい。流石にその姿のお前が視界に入ると気が散りそうだ…ここから奴等を通すつもりはないが念のためな」
ランドが気まずそうにそう言葉にすることでマーセルは自分の服がドンクに裂かれていたことを思い出し…「あ、ああ///わかった…///」と言うと数人と船長室へと戻った。
「さて、とりあえず残った乗組員のみんなはすまんが船長室の防衛を頼む。なるべくは俺が片付けるが万一もあるからな」
ランドの言葉に乗組員達は「わかりました、それと兄貴…一ついいですか?」と言葉にする。
「なんだ?」
「兄貴、船長が女だったことに驚いてませんでしたがもしかして知ってたんですか?」
乗組員のなにげない質問にランドはギクリとしたが「い、いや驚いてるぞ?それよりもこの状況の方に驚いたから冷静を装ってるだけだ」と誤魔化した。
ここで「知ってたぞ、こないだお前らの船長の裸見たからな」なんて言おうものなら海賊を撃退したあと自分も海に投げ捨てられかねないと判断したからだ。
そんな事を話してるとドンクはまだ気絶しているがバルチャーが目を覚ました。
「イテテ、なんだテメーは?俺達の邪魔しやがって!」
バルチャーの言葉にランドが「俺はこの船の船長の知り合いでラ…「テ、テメーは先日のCランク野郎!」…ん?」
ランドが言葉を発しようとしたらドンクがぶっ飛んだ事で固まっていた護衛達がそんな声をあげる。
そちらに目を向けたランドは「お前らは確か…ぼったくり商人の後ろにいてフォルクスさんにボコられた奴等じゃないか。となると…他の商人が言ってた噂の通りお前らの雇い主と海賊は関係があったんだな」と口にする。
「お前らコイツを知ってるのか?」
バルチャーの言葉に護衛の男達は「ああ、先日話した元Sランクと一緒にいたCランク冒険者の野郎だ」と答える。
その言葉を聞いてバルチャーは「なんだよCランクか、元Sランクの奴ならともかくそんな半端なランクの奴に嘗められてたまるか!」と強気な態度を示した。
「その半端なランクの奴の攻撃で気絶してた奴がなにを言ってるんだ?」
ランドはそう言ってバルチャーを煽る。
バルチャーはランドの言葉に顔を真っ赤にすると「嘗めるんじゃねぇ!野郎共、コイツをぶっ殺せぇ!」と襲いかかった。
ランドが迎え撃とうと構えたその時…
「あ、師匠ーー見つけましたよーー!」
そんな声が突然上から聞こえランドも乗組員達も海賊も上を見上げる。
そこには銀色のドラゴン…ラジが飛んでいた。
「な、なんだこのドラゴンは!?」
バルチャーは驚愕の顔をするがランドはそんなことは気にせずに「ラジ、探しに来てくれたのか?」と言葉にする。
「皆さん師匠が見当たらないと大慌てでしたよ」
「そ、そうか悪かったな」
「今背中の皆さんを降ろしますからねーー」
ラジがそう言うと背中から何人かの人影が降りてくる。
セーラとガレリアはその身体能力から自力で飛び降り、メリッサは風魔法を自身の足元に展開して降りてきた。ノエルとトルテはトルテが風の精霊に頼んだのかゆっくりとした速度で甲板に降り立ちそしてラジがそのそばに人の姿で着地した。
「探しに来てみたらとんだ騒ぎね」
「とりあえず君が無事で良かったよ」
「コイツらやっちまっていいのかい?」
「うーん、とりあえず工具を返すのは後ですかね?」
「なんか嫌な気配を持った人がいるわね?精霊も嫌そうな雰囲気出してるわ」
「師匠ー手伝いますよ」
各々がそんな言葉を口にするのでランドは「助かります、セーラさんは乗組員の治療をお願いします。メリッサさんとガレリアは俺と一緒にコイツらを海賊の船に放り込んでもらえますか?ラジはノエルとトルテあと乗組員達を守ってやってくれ」
「「任せな(さい)」」
「わかりましたー」
ランドの言葉に全員がそう答えて構えた。
海賊達は思わぬ増援に少しためらったが…
「てめぇら怯むな!むしろ高く売れそうな女が増えたんだあの野郎始末して全員奴隷として売り飛ばすぞ!」
バルチャーの言葉に海賊達とドンクの護衛の男達は「オラアァァァァァ!」と声を出すと向かって来た。
ランドは襲いかかる海賊達を武器は使わず海賊の船の方に殴り飛ばした。そして他のメンバーも…
「とりあえずは治療をしましょうか、皆さんこちらに来て頂戴」
セーラはそう言って負傷している乗組員達に治療魔法をかける。
「このアマ!魔法使いみてぇだが近接に耐えれるか!?」
メリッサに襲いかかった海賊はそう口にするがメリッサは「嘗められたものだね、むしろ君達ごときが私に近付けるとでも?(ランド君ならいつでもウェルカムだけど///)」と返すと無詠唱で風魔法を展開して向かって来た海賊達を吹き飛ばした。
「は、てめぇ獣人か?良い身体をしてるから手足をついて謝るならペットにしてやるぞ?」
ガレリアに襲いかかった海賊がそう笑いながら襲いかかるがガレリアは「ハン、アタシより軟弱な男になんて興味ないね!(それこそランドみたいに強くないとね///)」と海賊達の胸ぐらを掴んでは海賊達の船に放り投げた。
「ガキがぁ!どこから現れたか知らねぇが大人嘗めるんじゃねぇぞ!」
乗組員達やノエルやトルテを守るラジに海賊が襲いかかるが「ガキって、ボクこれでもお前達よりもずっと歳上なんだけど子供扱いするなぁー(でも師匠に頭撫でられるのは嬉しいけどね///)」とこれまたランドのように船に殴り飛ばしていく。
やがて、海賊達の船の甲板には気を失ったり痛みで呻く海賊達とドンクの護衛が積み上げられていた。
そして残るはバルチャーだけとなった。
「く、てめぇらこれで勝ったと思うなよ!」
いまだに虚勢をはるバルチャーにランド達は…
「もう観念して法の裁きを受けろ」
「往生際が悪いわねぇ」
「諦めたら?」
「もう観念しな!」
「お前なんかが師匠に勝てるか!」
と声をあげる。
するとバルチャーは「嘗めるなよ!なるべく船を壊すなと言われてたから使わなかったがこうなりゃ奥の手だ!」と叫ぶと懐からなにかを取り出した。
「あれは?」
「「笛?」」
ランド達がそう困惑してるとバルチャーがその笛を吹いて鳴らした。
プァーーーーーーン!!!
すると船の近くの海面が盛り上がり始めなにか大きなものがザッパァーーーーンと姿を現した。
それは横幅は三メートル程だが長さはラジのドラゴンの姿よりも長い体をした魔物だった。
「これは…」
「あら、大きいわね」
「な、なんてデカさだ」
「ボクより長いや」
そんな感想をそれぞれが抱いているとメリッサが言葉を発する。
「コイツは…もしかしてリヴァイアサン?」
そうその魔物は海でも屈指の強さを誇る魔物、リヴァイアサンだった。
この世界にはそれぞれの地形によって「遭遇して敵対したら諦めよ」と言われる魔物がいる。
まず空はラジやガルヴと言った「空の覇者」と呼ばれる魔物「空竜」である。
そして地上においてはアルガス達のパーティーが倒した「地竜」も驚異ではあるがそれを越える魔物として「大地の征服者」として「キングベヒーモス」と呼ばれる魔物がいる。
そして海では「海を制するもの」としてこの「リヴァイアサン」が挙げられる。
ランド達の目の前に現れたのはまさしくその「海を制するもの」と呼ばれる魔物であった。




