悪徳商人への警告と年の功
このページ後半でノエルが「ソッチの気」と心の中で発言していますが作者としては実際に世の中で「LGBT」と言われる方々に対する偏見や嫌悪感等は一切ありません。あくまでも作品の演出としての一文として書いてるだけです。
マーセル達とやって来た商人との取引は滞りなく進んでいった。ランドとフォルクスは直接取引には関与せずなにかあったときの見届け人なので少し離れたところで様子を見ている。
「無事終わりそうですね」
「そうだな…問題も起きそうにないようだ」
「これなら夕方までには…「おい、どう言うことだ?昨日言ってたのと随分値段が違うじゃねーか!」……ん?」
ランドが安堵の声を出そうとしたそのときにマーセルの声が響いた。
ランドとフォルクスがそちらに視線を向けるととある商人とマーセルが揉めていた。
「いやー確かに昨日はその値段で了承したがな、お前さん達と契約したあと他の客からも注文があってよ。そちらさんはお前さん達より良い値段で取引してくれるってんでな、だが俺達としたら先約はそっちだったからお前さん達が優先だ。だけど向こうさんの提示する値段も捨てがたいもんでよ、せめて同等の支払いが欲しいわけだ。まぁ嫌なら別にいいぜ?持って帰ってあちらに売るだけだ」
そう言ってその商人と護衛だろうか数人の武装した男達はニヤニヤしている。
「なにやら面倒なことになってますね」
「なんだあいつら?」
「あいつらは「ドンク商会」の奴等だよ」
ランドとフォルクスがそんな声を出すと前を通った商人が答えてくれた。それは昨日ランドが「キングミノタウロスの斧」を値下げの代わりに譲った店主だった。
「「ドンク商会?」」
ランドとフォルクスの二人が同時に聞き返す。
「ええ手広く取引をしてるから品揃えは悪くないんですが、本当に必要な物を欲してる相手にはなにかと後になって理由をつけて値段を引き上げるんですよ。あの船乗りの兄ちゃん達は船の修理の部品を探してましたからね。私達のところでも可能な限り揃えましたがあそこしか伝手がない商品もあったんでしょうな。品揃えはともかく人格としては同じ商人として恥ずかしいです」
「領主はなにも言わないのか?」
フォルクスの質問にその商人は「結局相手も足下を見られるとはいえ必要なものですからね、諦めて買うんです。そうなると「互いの同意のもとの取引だ」と言われたら領主様もそれ以上はなにも言えませんから」と答えた。
「こ狡いやつもいたもんだ」
「ですね…」
二人がそんなことを口にしてると更にその商人は「あと一つ、これはあくまでも噂なんですが…」と声を潜めて口にする。
「あそこは裏で脛に傷をもった奴等とも繋がりがあるとか、最近この辺に出る海賊にも食糧や武器を渡す代わりに襲った船の戦利品を分けてもらってるとかの噂もありますよ」
「それは本当か?」
「あくまでも噂です、私達も下手に藪をつついて蛇を出したくないですからね。調べようとする奴はいないんですよ」
商人はそう答えると「では…」と言って街へ戻っていった。
「なんか怪しいですね…」
「そうだな」
二人がそんな会話をしているとマーセル達の方でも動きがあった。
「それにしてもいきなりこの値上げは…」
そう困惑するマーセルにドンク商会の商人は「だから嫌なら別に買わなくていいぜ?それとも兄ちゃん綺麗な顔してるし俺達にサービスでもするか?そしたらまけてやらなくもないぜ?」と言うと護衛の奴等と下品に笑いだした。
「てめぇら!!」
乗組員達がそう言って前に出るとドンク商会の護衛達も「なんだやるのか?」と武器を抜いた。
流石に見過ごせないと思ったランドとフォルクスはマーセル達のところへと向かう。
「まてまて、ここでの揉め事は容認できないぞ」
フォルクスの言葉にドンク商会の商人と護衛達はこちらに視線を向ける。
「なんだあんたらは?部外者は引っ込んでてもらおうか」
商人の男がそう口にするがフォルクスはそんなものはお構いなしに言葉を続ける。
「ここはある人の私有地だ。そして俺達はその人の護衛で来ているものでな、そこの船乗り達はここの主人が客人として迎えた奴等だ。商売については管轄外だから口にしないが彼等に危害を加えるというならお前さんがたは敵と見なすがその覚悟はあるか?」
そう言うフォルクスの後ろにはランドも控えておりいつでも動けるように構えている。
商人の男はやって来たのがたった二人だと言うことと一人は中年でもう一人は優男なので嘗めていた。なにしろこちらの護衛は五人もいるのだ。
「ハ、どこの金持ちの護衛かしらんが俺達になめた口を利くなよ!」
そう言うと男は護衛達に顎でクイッと指示を出す。
指示がでた護衛達はフォルクスとランドの前に並ぶと声を発した。
「どこの誰だか知らねぇが俺達とやろうってのか?」
「俺達はこれでも元はBランク冒険者だぜ?」
「無理するなよおっさん!」
「そっちの兄ちゃんもな!」
「てめぇらランクはいくつだよ?」
そうイキる五人に二人は顔を合わせて肩を竦めると返答する。
「さっきも言ったがこれ以上は敵対と見なすぞ?」
「良いんだな?」
「あとお前達の質問に答えるなら、こっちの若いのは一応現役のCランクで俺はもう引退した身だ」
その返答を聞いた五人は笑い出す。
「ハハハ、引退爺とCランクかよ?こりゃここの地主とやらも大したことないな!」
「痛い目会わせてやるよ!」
そう言ってこちらに武器を向けた。
「俺がやりますか?」
ランドがフォルクスにそう尋ねるとフォルクスは「いや、たまには俺も運動しとかないとな。お前は何かあったら対応できるように構えとけ」と答えた。
「わかりました」
そのやり取りを聞いた五人は二人の言動に「嘗めるんじゃねぇ!」とかかってきたが…
「「グハッ!?」」
あっという間に五人ともフォルクスにぶちのめされた。
「な、なんだと!?」
商人の男は目の前の光景に驚きを隠せない。
「流石ですね」
「まぁ引退したとはいえアイツ程ではなくとも今でも時折鍛練はするからな」
「Sランクだっただけのことはありますね」
ランドのふいに口にした言葉を商人の男は聞き逃さずマーセル達も驚きの声をあげる。
「え、Sランクだと!?」
「えぇ!?」
そんな反応の面々にフォルクスは苦笑いしながら「もう引退した身だがな」と告げる。
商人の男はフォルクスの元ランクを聞いて戦慄した。
「で、まだ問題を起こすのか?」
商人の男にランドがそう声をかけるとその男は「い、いいのか…俺達から買わないなら修理できないんだぞ?それに修理をする技術を持った職人も俺達から斡旋する予定なんだぞ」と発言した。
「だから、俺達は商売については口にしない。だがまだ何かやるならつまみ出すぞ?」
そんなやり取りをしてると「なにか揉めとるのかの?」と声が聞こえた。
そこにいる全員が声の方を向くとそこにはノエルとアレックスが立っていた。
「ノエル達どうしたんだ?」
ランドの質問にノエルは「少し散歩をと思いまして」と答える。
「それでどうしたのかの?」
続けてアレックスがそう尋ねると「実はですね…」そう言ってランドが説明をする。
ランドから話を聞いたアレックスはマーセルに「ふむ、少しその修理する舵を見せてもらっても良いかの?」と言葉にした。
マーセルは「構わないが、爺さんは職人か?」と口にする。
「まぁ少し経験があっての」
そう答えるアレックスを不思議に思いながらマーセルがランドとフォルクスの方をみると二人とも頷いたので「わかった」と言って乗組員に案内するように指示を出す。
「フン、どこぞの老いぼれがどうにか出来るほど技術は甘くないぞ」
強引なやり方は失敗したとはいえ結局は自分に折れるだろうと商人の男はタカを括っている。その頃には護衛の男達も起き上がりフォルクスから距離をおくようにして立っていた。
やがてアレックスが戻ってくると言葉を発した。
「あれくらいならわざわざ職人を呼ぶまでもないわ、部品さえあれば儂が何とかしてやるわい」
「な?」
「ホントか爺さん?」
商人の男とマーセルがそんな反応をする。
「勿論じゃ、まぁ儂が直してもエエがせっかくじゃから儂が教えるから乗組員達にやらせた方がいいじゃろう。その方が今後にも役立つしの」
だが商人の男はまだ往生際悪く言葉を発した。
「そ、それで直し方を知っても部品がなけりゃ修理できないだろが!」
男の言葉にアレックスは「ふむ、マーセルよ足りない部品とはどれじゃ?」とマーセルに尋ねる。
「ああこの金具だ。いくつかはあるんだが数が足りなくてな」
マーセルはそう言って懐から一つの金具を出す。
それを手にしたアレックスは「ふむ…ノエルお主これをつくれるか?」とノエルに声をかける。
ノエルは「見せてください」とアレックスからそれを受け取り眺めてから答える。
「これくらいなら簡単に作れますよ」
「そうか、では頼むぞ」
「わかりました」
「な、なんだと!?」
二人の言動に商人の男は驚きを隠せないがまだ往生際悪く言葉を発する。
「おい、船長の兄さんよ!こんな奴等に任せていいのか?素人にやらせて後で不具合が出ても知らないぜ?」
確かに商人の男が言うことも最もなのでマーセルは困惑する。
「うーん、だがお前らの値段はぼったくりすぎだし…「それなら心配ない」…は?」
そんなマーセルに声をかけたのはランドだった。
「この二人なら問題ない、なんならそんな弱味につけこむような奴等よりマシだと断言できる」
「おい、お前!根拠のない発言はやめといた方がいいぞ!」
商人の男の言葉にランドは「根拠ならある」と言い返す。
「だったらその根拠とやらを聞かせてもらおうか?」
商人の男の言葉を受けてランドがフォルクスの方を見るとフォルクスが頷いたのでランドはそれに返答した。
「まずはこのご老人だが…「老人は余計じゃ」…すいません。この人の名前はアレックスさんだ、お前も商人ならその名前くらい知ってるだろう?」
「ア、アレックスだと!?グラン王国で伝説の魔道具職人と言われるあの?」
「え、マジかよ?」
商人の男とマーセルが同時に驚きの声をあげる。
「そしてこっちの美人な女性はアレックスさんと同じく「伝説の職人」と呼ばれた鍛冶屋ダイガンの技術を受け継いだ孫娘だ。そんじょそこらの鍛冶屋とは訳が違うぞ」
「やだランドさんたら…美人だなんて///」
「ダ、ダイガンの孫だと!?」
「へぇノエルの嬢ちゃんがそんなすごい人の孫だとはな」
「あんたらがこの二人より優れた職人や鍛治ができるなら答えてみろ」
ランドの言葉にドンク商会の面々は「く、このままじゃ済まさないからな!」と叫ぶと踵を返して引き上げていった。
「助かったぜランド、それに他のみんなも」
「気にするな」
「問題起こさせるわけにもいかないからな」
「明日しっかり教えてやるでの」
「明日までにいくつかは作っておきますからね」
「ありがとう」
そんな会話をしてるとき、引き上げる途中のドンク商会の護衛の一人が気に入らなかったのか「覚えてろよ!」と声を出すとマーセルに向かって足下の拳大の石を投げつけた。
突然のことに全員の反応が遅れ石はマーセルの顔へと迫る。
「船長!」
「マーセルさん!」
マーセルも突然のことに思わず目をつぶるが…
パシッ!
そんな音と共にマーセルの目の前に手が割り込み石を受け止める。
「おい!反省が足りないなら次は俺が相手になるぞ!」
そう言ってランドは受け止めた石を投げ返す。
石は男に当たらずその横の木に当たると「ドスッ!」と音をたてて半分位を木にめり込ませた。
「ヒ、ヒイィィィィィ!」
それを見たドンク商会の面々は慌てて逃げ出した。
「わざと外したのか?」
「流石に当てるのはちょっとと思いまして」
「ランドさんの投げた石なんて当てたらあの人死んじゃいますよ」
「旅先でまでグロいのは見たくないからのぅ」
そんな会話をする四人に乗組員が「ランドの兄貴、船長守ってくれてありがとうございます」と礼を述べる。
マーセルも「重ね重ね悪いなランド」と言葉にする。
「気にするな、マーセルの綺麗な顔が傷付かなくてよかったよ」
「な、またお前はそんな///」
ランドの言葉に赤くなるマーセルを見たフォルクスとノエルは…
「まぁ男でも女ほどじゃなくても顔に傷はいやだわなぁ」
(なんでマーセルさん顔が赤いのかしら?ま、まさかマーセルさんってソッチの気があるの!?それでランドさんに…いやまさかそんなことはないわよね…ないよね?)
とそれぞれの考えを口にしたり心で思ったりしていた。
ただその中でアレックスだけは長年生きてきた勘からか(ふむ、ランドに対するマーセルのあの反応を見るにおそらくマーセルは…まぁ儂が下手に皆に言うのも野暮か、マーセルが自分で決める方がよかろうて)とマーセルの正体に気がついたが自分の胸に留めておくことにしたのだった。
そして当のマーセルは…
(また助けられた…。なんだろうな?胸が嵐の時の船みたいに揺さぶられるぜ///)
とドキドキしていた。
ランド「ところでアレックスさん、ノエルに部品を作ってもらうにしても釜とかはどうするんですか?」
ノエル「そういえばそうですね、あと素材も」
アレックス「釜は先日使ったバーベキューコンロの温度制限の機能を解除すれば高温も出せるから大丈夫じゃ。ダイガンがバーベキューをしてたときに「あ、今なんか降りてきた」とかいって急に鍛治をできるようにしてあるんじゃ。素材については部品の大きさや数を考えたら先日船を引いた時に用いた錨用の鎖の輪を一つ溶かせば十分じゃろて。マーセルもそれくらいは構わんじゃろ?」
マーセル「あぁ、それくらいで揃うなら安いもんだ」
ランド・ノエル(あのコンロそんな機能まであったのか…)




