STEP1 Frozen Flare 99
「俺の分もやろうか」
ザキがすかさず、シヴァの弁当箱からオレンジだけを抜きとった。
ウミハルは、自分の分だけで十分と答えている。
メンバー同士が以前より親密になったかというと、それほどでもなかった。不和の原因などどこにでも転がっている。
ウミハルは、ヨータとシヴァの仲がいいことを羨んでいるし、ヨータは、大学生活が中心となって疎遠になったウミハルに屈託があるし、兄貴風を吹かすヨータにライは少し辟易しているといった具合だ。
親密になったとしたら、私と彼らの関係だと言える。
彼らの本音を聞いて、私の彼らに対する見方は少しばかり変わった。
それが分かるのか、彼らも私に少しずつ心を開いて、愚痴らしいものは零すようになっている。
「アルバムが完成したら、俺の奢りで何かうまいもん食わせてやろう」
言わなければよかったと思ったが、もう遅い。
成長期真っ只中の青少年が五人。その食べる量も目を見張るものがある。
弁当に文句をつけながらも、嫌いな物以外は全員しっかり食べるつもりのようだ。
「あー、俺焼き肉」
すかさずヨータが手を上げて言うと、ザキが鮨がいいと言った。ライも、鮨でいいと言ったが、ウミハルが新たな提案をする。
「真ん中とって、中華料理」
ザキが、ウミハルに絡む。
「どこが真ん中なんだよ」
「肉も魚もあるだろうが」
シヴァが果物だけなくなった弁当箱を恨めしそうに睨みながら、ポツリと言った。
「俺は、久しぶりに鍋が食べたいな」
フグだのカニだのカモだのと、声が飛び交う。
私は、おいおいと思いながらも、見栄を張って任しておけと答えていた。
五人の話題は、今度は新曲をどうしていこうかという話へと移っていく。
アルバムの次はツアーそして、また新曲にプロモ活動。彼らは貪欲に次のビジョン次のビジョンへと向かっていく。
これから、彼らはどこに向かって歩いていくのだろう。
私は、彼らの行く末を見守っていきたいと思った。
愛美もまたこの街のどこかで、時には私達のことを思い出してくれるだろうか。
まるで台風のように現れて、色々な人間の心の中に、色々な思いを残して鮮やかに消えてしまった不思議な女性。
また何かあったら、あの綾瀬という男の元へ尋ねていこう。
その時、君に会えるかどうかは分からないが、君のことは決して忘れないだろう。
――何処までも 何処までも 漕ぎ出すように 彼方へ




