STEP1 Frozen Flare 98
最高のライブパフォーマンス、そして最高の歌と音を聞かせてくれたと。
たかが新曲用のキャンペーンではない。彼らのアルバム、そしてコンサートツアーが待たれるばかりであると、記者は結んでいた。
『皆殺しのJungle』を歌っている途中でザキが倒れたのも、全てライブパフォーマンスだと思われたのだ。
この時に、ザキの人生が全てかかっていたのだとは誰も知らない。
あんなライブを見ることは、二度とできないのだ。
その場面で重要な役を買った愛美は、事務所からデビューを控えたミュージシャンで、ザキの恋人ではないかと、憶測は憶測を呼ぶ。
もちろん、事務所としてはノーコメントを通した。
シヴァを発掘した、見にきていたプロデューサーの向井が、愛美を何とかデビューさせられないかと再三私に言ってきたが。
私は、彼女が何者か口にすることはなく、再びSGAに足を踏み入れようとも思わなかった。
彼女らは、我々とは違う場所で生きている。そっとしておくのが一番いいのだと、私は分かっていた。
――何処かへ 何処かへ 誘われる 流される 新たなる世界と旅立ち
ライブで演奏されたフローズンフレアの楽曲は、とても評判がよかった為に、一月に発売が決まっていたアルバムに、急遽入れることが決まった。
ライブが終わったばかりだと言うのに、メンバーは早速レコーディングスタジオに詰めこまれることになる。
歌詞は、ナオが作ったものに手を加えることなく、アレンジだけはライブで演奏されたビート感のある曲に仕上げられた。
編曲は、ウミハルとライによる。
「サトミ。何だよ。この仕出し。すげぇまずぃー。俺を何だと思ってんだよ」
ただ今、食事休憩中。
ザキは、頼んだ仕出し弁当に箸をつけるなりそう言った。
他人を馬鹿にした物言いといい、突慳貪な態度といい性格は相変わらずだ。
ただ、歌を歌っている時、彼は本当に楽しそうに歌うようになった。
奇跡という薬も万能ではないらしい。三つ子の魂百まで。性格の悪さは直るものじゃないだろう。
「下積みの苦労も知らないでは、デカくはなれないぜ。にしても、これあんまうまくないけど。こら、光、残すな」
ヨータは、自分も嫌いな里芋を箸でよけている癖に、弟が肉の脂身と赤身を分けているのに注意をする。
ライはそれを無視して、脂身は口にしなかった。兄弟揃って頑固なのだ。
「そうか、食えりゃ何でもいいじゃん」
ウミハル一人が、パクパクとおかずを次から次へと口に放り込んでいる。
シヴァはお茶で口直しを何度もしながら、ウミハルに向かって弁当の箱を差し出した。




