STEP1 Frozen Flare 97
「見果てぬ夢がある 空を飛びたいよ いつか言ってた君が 眩しい 何処かへ 何処かへ 目を閉じる 目を開く それだけで違って見える 景色 君がくれた魔法」
ザキにばかり目がいっていた私は、いつの間にか愛美と長門の姿が消えていることに気が付かなかった。
その後、あの二人の姿を見ることは、ついぞなかったのだ。
ライブを終えて控え室に戻ってみると、退職届けが一通残されていた。
当方がたの事情により、今日限りでもって辞職致しますという無味乾燥な一文だけで、誰にも何も言わずに、それこそ魔法か何かのように長門と愛美は私達の前から消えてしまったのだ。
次の日になってザキは私に、愛美が欠勤している理由を聞いてきた。
ザキに言われた通り辞職させたと私が言うと、それ以上はザキは何も言ってこなかった。
長門のボディガードの解雇も、その時に告げた。
ザキ以外の者は薄々何かを感じているらしく、誰も愛美の消息について尋ねることはない。
あの日、ライブで起こった全ては、夢の中の出来事のようだったとシヴァが思わずといったようにそれだけ洩らした言葉は、全ての者の気持ちを代弁していた。
――何処かへ 何処かへ 通じていく 伸びていく
ザキあての脅迫文は、悪質な嫌がらせだったということで、警察はけりをつけた。
しかしザキがライブ中に、脅迫文がきたことを話したことで、マスコミはまた勝手な憶測で話を作ってしまった。
テレビの取材でやらせだとザキが、言ったことも一因だ。
ザキが襲われてライブが延期になったことも脅迫文も全て、ネタ作りの為の事実無根だったと言うのだ。
否定しなかった為に警察からは、人騒がせなと、お叱りを受けることになる。
結局はマスコミの成せる技か、ザキの件だけでなく、メンバー達がとり沙汰されていた噂まで、全ては嘘偽りだということに落ち着いたようだ。
我々としてもザキの件を、何をどう説明してもいいか分からなかったので、世間が思うようにさせておいた。
所詮メディアなど、虚構なのだ。
噂は、しがない噂として人々の記憶の隅に押しやられ、Fフレアはただのアイドルグループではなく、未知の才能を秘めた近年にない大型新人バンドだと目されるようになった。
それもこれも、ライブが音楽業界で非常に高く評価されたからだ。あの日のライブに招待した音楽記者達は、最大級の賛辞を惜しまなかった。
――広がっていく
ある音楽誌には、このライブを見ることができた者は、幸運などという生易しいものではないと言う記事が掲載された。




