STEP1 Frozen Flare 86
その時ザキが、全員を睨むようにして、憎々しげに言った。
「お前らが俺を嫌ってるぐらいは、俺だってお前らが嫌いなんだよ。見せかけだけの、信用ならない奴ばっかりでさ」
そう言ったザキは身を乗り出すと、一番手近にいたシヴァを指差した。
「友達が薬漬けになってお巡りに捕まったら、ヤッてもない癖に一緒に捕まるのが、それが優しさかよ。友人なら止めろよ。そう言うもんだろ。いい人ぶっちゃってさ、結局自分を善人に見せたいだけだろ」
シヴァの端正な顔が歪む。
ザキの指が、隣のウミハルに向けられる。
「騙されて捨てられていいように利用されて、それでもあの女を許すってのか? 妊娠したって嘘吐いて、そうしてまでマスコミにとり上げられたいなんて、お前がはっきり言やいんだろが、騙されたんだって。あいつは最低だって。そんなこと言うのは、プライドが許さないんだろ」
ウミハルは顔を背けると、俺と彼女の問題だと呟いた。
ザキは、ハンとあからさまに馬鹿にした声を上げると、ライを跳び越えてヨータを指差した。
「ヨータもヨータだ。喧嘩で手頚痛めたなんて誰が信じんだよ。ドラムやり過ぎで、腱鞘炎になったって言えよ。ライブから外されるのがそんなに怖いか。そんなにまでしてバンドにしがみついていたいか」
包帯は巻いていなかったが、ヨータは右の手頚を庇うように左手で握った。
ザキは、嘲るような表情を浮かべて、最後にライを指差す。
ヨータは、弟を守ろうとするかのように自分が盾になろうとした。それをライが首を振って制す。
ザキはそんなライを不愉快そうに睨みつけた。
「松山の野郎に、試験の点を甘くするかわりにヤらせろって、脅されてんだろ。俺にも何だかんだ言ってきてたから。そうまでして学校卒業したいか。そうまでして教師に気に入られときたいか」
ヨータが、ギョッとしたようにライを見た。
知らなかったのだろう。
ライは、開き直ったようにザキを睨み返す。
――他の奴らだってそうだ。
ザキはそう言って周囲のスタッフを見渡す。
皆、顔を伏せて、ザキと視線を合わせようとする者はいなかった。ただ、ザキは愛美の方は見なかった。
「俺は何にも知らないと思ってんのかよ。ご機嫌伺いして、ペコペコしてたらそれで金ももらえるし、どうせ一時のことで、売れなくなったら放り出しゃいいんだって思ってんだろう。生意気だって言えよ、年下の癖にって言えよ。言えないだろう。ライブ抜けるぐらい、なんでもないんだぜ」
そう言うとザキは、いかにも満足そうにソファに身体を沈めた。




