STEP1 Frozen Flare 87
伊集院ともう一人の刑事は明らかに狼狽した顔で、助けを求めるようにスタッフ達を順々に見ていくが、誰も闖入者に構いはしなかった。
メンバーは、それぞれ難しい顔をして黙り込んでいる。
異様な沈黙が、部屋を支配していた。この状況では、何を言っても嘘になる。そう思えば思うほど誰も、何も言えなくなるのだった。
ザキは一人、悦に入ったようにニヤニヤと笑っている。
「ザキ」
重い沈黙を、重い決心によって破ったのは、シヴァだ。
「俺はお前と音楽がやれて嬉しいんだ。みんなそう思ってる。そりゃ、お前は扱いにくいかも知れない。でも仲間だと思っている」
シヴァは、一言一言ザキの顔を見ながら思いを込めて語りかける。
「いい人と思われたい訳じゃない。俺は弱い人間だから、俺にできることだけやってる。人を救う強さはなくても、側にいてやりたいと思ったんだ。一つの苦しみを分け合うことしか俺にはできない」
シヴァは、ニヤニヤ笑いを引っ込めたザキを静かに見つめている。
ザキが口を開こうとした時、ヨータが吐き捨てるように言った。
「心配かけたり、迷惑かけたくないと思って黙ってんじゃねーか」
怒ったように前だけ向いて、痛めた右の手頚を強く握り締めていた。悪いのは、全てその右手だとでも言うように。
「俺はお前のことが嫌いだ。けど、お前の歌は好きだ。足引っ張りたくなくて、俺も光も、何とか上達しようと思って焦ってばかりだ。腕痛めたのは、身体の管理もまともにできない俺が悪い」
ウミハルが、茶化すようにヨータの肩をつく。
拗ねたようにヨータが眉をしかめて、ウミハルに肩をぶつけた。
ウミハルの顔に笑顔が浮かぶ。そしてザキをチラリと見て、軽い調子で言った。
「プライドにしがみついてんのはどっちだよ。口も悪いし、お前の歌詞も突っ張ってはいるんだけど、本当は寂しくってたまらないって、訴えてるような感じがするんだよな。もっと素直になれよ。強がって、大事なことを見失ってる今のお前のが、格好悪いぜ」
ザキは、今は憎しみを込めた目で全員を睨んでいる。
先ほどまでの、余裕に満ちた仕草はどこに飛んでいってしまった。
今、上位に立っているのはザキではない。
ライは立ち上がると、毅然とした態度でザキを見下ろして言った。
「体育の松山は辞職します」
自分を侮辱したり哀れみたい者は、勝手にすればいいと言いたげな、強い態度だ。その場にいた者は、尊敬の眼差しをライに向けていた。
「脅してるのは俺の方です。先輩にも色々言ってたって聞かされて、あいつだけは許せません」




