STEP1 Frozen Flare 70
私は、伊集院ですと名乗るだけで、警察手帳を内ポケットへと戻した。私は、どうやら歓迎されていないようだ。
「昨夜のことを一応、順を追ってお話し願えますか?」
「順を追ってと言われましてもね」
迷惑そうに、里見は顔を背けながら言った。
私は、そんな彼の様子は意に介さず別のポケットからメモ帳をとり出して、名前を確認しながら、
「曽根崎一也さんですか?が、帰宅途中で暴漢に襲われた時、里見さんが一緒におられたのではないのですか?」
と、聞いた。
里見は諦めたような顔で、私に顔を戻す。
「そうですね。ザキがライブのリハを終えてスタジオを出たのが、七時四十五分頃です。私は、ちょっとメンバーの一人と打ち合わせがあって――あそこにいる彼ですが――スタジオに残っていたんです」
途中里見は、私が先ほど声をかけた若者の方をメンバーの一人だと、示して見せた。
「ザキのことは、車で送る約束をしていましたから、話を終えて駐車場にいくと、数人の人間がザキを囲んでいました。私がきたので、慌てて逃げ出しましたが、ザキは気を失って倒れていました」
メンバーと言うことは、あの若者もフローズンフレアとやらのグループの、一員なのだろうか。
私は彼がミュージシャンとも知らず、雑用要員か何かだと思って声をかけてしまった。
「曽根ざ、ザキ?さんは、その暴漢の顔を見ているのですか?」
「いえ、いきなり殴られて、あとは救急車の中で目覚めるまでは何も覚えていないそうです」
「お怪我の方は?」
私は、案じるように尋ねる。
「無傷ですが、倒れた時に頭を少し打ったようです」
「救急車が呼ばれた現場は、そのスタジオの入口ですか? 駐車場は裏にあるのに、曽根崎さんを動かしたんですか? 頭の打ちどころが悪ければ、動かすのは危険だったでしょうね」
里見は、ムッとしたように私を見た。
「私は、現場は見ていないんです。怪我はないようでしたが、一応診てもらうべきだと思って救急車を呼んだんです」
何やら、問い合わせの電話がずっと鳴り続けている。マスコミも集まってきているようだ。
その時、扉から滑るように入ってきた一人の少女に、私は思わず目を向ける。誰かを目探ししているポニーテールの少女に、私は見覚えがあった。
思わず私は立ち上がりかけて、声を上げそうになった。
「あれ、君」
「どうしました?」
怪訝そうに私を見る里見よりも、少女が気にかかってしょうがない。
少女が目探ししていたのは、どうやら私の目の前にいるこの男らしい。




