STEP1 Frozen Flare 71
少女は里見の方だけ見てこちらには気付かず、来客中と見て諦めたようだ。私もまた、少女の方は諦めることにする。
一度見かけた時は声をかけ損ね、その後もう一度会った時にも、話し損ねてしまった。
よりにもよって、買春しようとしていると思われてしまったのだ。
今更蒸し返すのも何なので、里見に対して私は曖昧に言葉を濁して、本題を進めることにする。
「個人的な恨みか、それとも行きずりの犯行か。恨みによるものなら、狙われた原因などに思い当たりはありますか?」
明らかに、里見には何か思い当たることがあるらしい。
事務所の外の喧騒にも閉口したが、事務所内の騒々しさも似たようなものだ。
電話の音と、声高な話し声がひっきりなしにしている。
マスコミらしい人間の目を避けて、愛美は裏口から入ってきたが、事務所に顔を出すのはこれが初めてだ。
里見は表沙汰にしたくなかったようなので、マスコミに流れたネタは事務所から出たものではなく、病院方面から洩れたものに違いない。
ザキはまだ病院で、長門がついていた。
マスコミが出てきたとなると、ザキの家にも押しかけて行くかも知れない。
里見と話がしたかったが、何やら里見も忙しげであった。仕方がないので待つことにしたが、身の置場がないとはこのことだ。
壁際に後退した愛美は、危うく誰かにぶつかりそうになる。
す、済みませんと慌てて謝りかけた愛美は、思わず口を開けたままポカンとなった。相手も同じように驚いたらしい。
「あ、眼鏡」
全く同時に言葉を発して、二人ともちょっと照れたように笑いあう。
シヴァの、お先にどうぞというジェスチャーを受けて、
「昨夜ので、壊れたんです」
と、愛美は言った。
シヴァの表情が曇る。
メンバーには、ザキは愛美と一緒にいる時、襲われたと事実を伝えてあった。
ケンゾーと交わした言葉の中で、愛美はケンゾー自身には、ザキの襲撃にどんな形にしても加担していないという見解をもった。
襲った相手――愛美は素姓はもちろん名前も知らないが――は、確かに誰かを庇おうとしていた。
ナオ、か。
しかし、シヴァやヨータの名前が出てきたことも見過ごすことはできない。
メンバーに事実を伝えることで、どんな反応を見せるか、気になるところではあった。
愛美が、今度はシヴァを促す。
シヴァは今朝は、スラックスに開襟シャツという出立ちに、縁のない眼鏡をかけていた。
「普段は、コンタクトなんだけど時間がなくて」
そう言って、シヴァは心配そうな顔で愛美を見る。
「大変だったね」




