STEP1 Frozen Flare 68
ただケンゾー一人が、扉を開けて夜の闇に消えようとしている少女に向かって声をかけた。
「あんた一体?」
振り向きもせず、少女は夜の中に紛れ込んだ。
「St.Guardian.闇を狩る者」
扉が、微かな音を立てて閉じた。
*
ザキは、救急車で病院に運ばれた。
搬送される車の中で目覚めたが、頭を打ったこともあり、一晩入院することになる。
長門が連絡しておいたので、マネージャーの里見もすぐに病院へと駆けつけた。
愛美も、病院で手当てを受ける。
もう使い物には、ならないだろう。
地面に叩きつけられて、つるがおかしなふうに曲がっていた。これだから安物はいけない――もちろん、愛美がかけていた眼鏡の話だ。
愛美の額の傷は、十日程度で治る。大層にも包帯なんか巻かれてしまったが、前髪に隠れて傷は目立たないので、大判の絆創膏で十分そうだ。
人気のない待合室のロビーで、長門はソファに腰掛けている。里見に何かきついことを言われたようだが、応えているふうは微塵もなかった。
処置を終えて出てきた愛美の頭の白い包帯に目を止めるなり、長門は、
「女が顔に傷なんか作って、どうするんだ」と、言った。
長門には、事の顛末は伝えていない。本人も聞こうとはしなかった。
愛美もまた話すつもりはない。
それでも別に構わないだろう。
「何よ。仕方ないでしょう。何なら、責任とって結婚でもしてくれる?」
愛美は唇を尖らせて、やつ当り気味に長門に絡んだ。
長門は、ジーッと愛美を見つめていたかと思うと、
「責任って、相手がいないんなら」
と、答えた。
そう簡単にさらりと言ってしまわれると、愛美も立つ瀬がない。
「いいです」
愛美は目を逸らして頬を膨らませると、長門の前を離れた。
「何よ、いけすかない奴」
口に出してそう呟いた後、愛美はもう一度心の中で呟く。なぜか、あまり腹立たしく感じなかったことに、愛美は腹を立てていた。
(何よ。いけすかない奴)
事務所 PM10:00
昨夜の八時過ぎ頃、とある場所で暴行事件が発生した。
通報があったのは、今朝になってのことだ。
被害にあったのが芸能人だと言えば、その理由も分かるだろう。芸能人絡みの仕事は、手間だし気が張る。
出勤早々デスクにつく暇もなく、部長に行ってくれと頼まれた。宮仕えの身で、嫌だと言える訳がない。
芸能人と言っても、ミュージシャンともなると、芸術家膚でとっつきにくい感じがする。
新人グループ、フローズンフレアは、最近若い女の子達の間で流行っているようだ。




