STEP1 Frozen Flare 66
「フローズンフレアを乗っとるも何も、元はと言えば、シヴァがプロデューサーに目をつけられたことから始まる訳でしょ」
店の中には、淡々とした少女の声だけが響く。
「彼にはそれだけの才能があり、ボーカルを引き継いだザキには、人を納得させるだけの音楽性があるってことじゃない」
人の話などまともに聞いたこともないような少年達は、ただ黙って少女の言葉に耳を傾けていた。
「フローズンフレアの元メンだって、ものがものなら、別のメンバー与えてでもデビューさせようとしたんじゃないかしら。ご意見は?」
最後の言葉は、明らかに別な人間に向けられたものだ。
少女の視線は、少年達とは違う場所に投げかけられている。
奥のステージに、若い男が現れた。
二十代半ば以上には見える男は、
「きついな、でもその通りだ。俺らのじゃ、音楽業界や、一般的な音楽を聴く人間の欲求には合わないんだ」
と、ステージを歩いてきながら、大したことじゃないと言わんばかりの口調でそう言った。
「ケンゾーさん」
少年の一人が、思わず立ち上がりながら叫んだ。
そのケンゾーの後から、おずおずといった感じで、ボーイッシュに髪の毛を短くした女が現れる。
「成程。あなたが元フローズンフレアのケンゾーさんで、そっちがナオさんってこと」
少女は、唇の端を歪めて笑った。
ケンゾーは段になっているステージから飛び降りると、散らばっている椅子やテーブルの間を抜けて、たまっている少年達の方に向かって歩いてくる。
「フローズンフレアって言っても、言葉の意味は違うんだよ。Flareってのは、元々フランス語の閃きという言葉からきているのさ。一瞬の輝きを閉じ込める、そういう意味でナオがつけたんだ。ザキは、自分の中の感情を凍りつかせるという意味で使っているようだがね。因みに俺とナオは、気の合う仲間達と今はライトネスってバントをやってる」
ナオはステージ上で暫くジッとしていたが、やがて心を決めたようにケンゾーに続いてステージを降りた。
「デビューが決まっていたのに、突然脱退して、迷惑かけてやろうとでも思ったとか?」
少女は、今度はケンゾーに向き直った。
少年達が少女の言葉に殺気だった様子を見せるが、構わないんだと言うように、ケンゾーはパタパタと手を振る。
少年達は、大人しく元の位置に戻って、ことの展開を見守りにかかった。
「俺がドタキャンしたのは、俺じゃなくてもいいってことが分かったからだ。すぐにでも埋め合せはできる、幾らでも替えは利いたんだ。俺も、ナオも」




