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STEP1 Frozen Flare 64

 男達の足音が路地から消えてしまうと長門は、

「引いたんじゃなく、本気で逃げたのか」

 と、素人以下だなと言うように呟いた。


 愛美は力の入ったままの右手を、きつく握り直した。ザキは地面に伸びている。


 長門は、ポケットに突っ込んであった愛美のハンカチを手渡した。


 車を入口に回した時、二人の姿はそこになく、柄のある女物のハンカチが落ちていただけだった。

 何かあったらしいと、長門は勘を頼りにザキと愛美を探し始めたのだ。愛美は黙って受けとったハンカチを、リュックへとしまう。


 その時、初めて愛美の額から頬にかけて血の筋が垂れていることに長門は気付いた。


「血が出ているぞ。大丈夫か?」


 愛美は、血を拭うでもなく長門に背を向けて歩き始める。長門が声を声をかけようとしたのを察知したものか、愛美は振り返らずに言った。

「長門さんは、ザキをお願い」


 愛美は、再び歩き始めた。

「追って、片を付けてきます」


 闇に消えた愛美の右手には、白い匕首が握られている。

 長門は、無意識の内に唇を撫でていた。




 小さなステージがあるライブハウスの、安物染みたテーブルの一つに、五人の少年達がそれぞれ思い思いの格好でテーブルにより掛かったり腰掛けたり、椅子に座ったりしていた。

 年齢は、下は十代半ばぐらいから、上は二十代半ばほど。


 閉店の札がかかっている為、店は彼らだけの貸切り状態だ。


 昔、自分も音楽をやっていた四十代の店主が、金もない集まる場所もないような若い音楽をやっている連中に、店を解放してくれている。

 いくつかの決まりを守ることを基本に、若い連中のいい溜り場になっていた。


「せっかくあとちょっとだったのに」

 外で買い込んできたコーラを流し込みながら、椅子に座っていた少年の一人が愚痴るように言った。

「グダグダ喋ってないで、さっさとやっちまえばよかったんだ」

 畜生と呟いて、別の少年がテーブルをドンと叩いた。


 ライブハウスの扉が開いた。仲間がきたのかと思い、顔を上げた五人の少年達は一様に驚いた顔をする。

「お前はさっきの」

 一人が思わずといった感じで呟いた。

「何で、ここが?」


 別の少年もそう言って、慌てたように口を閉じる。

 自分達がやったと認めているようなものだ。真っ直に少年達に向かって、一人の少女が歩いてくる。

「まさか発信器とか?」


 その一言で、みんなが自分の服に目を落とした。

 狭い店ではあるが、明かりが殆ど落ちている為、すぐ側までくるまで少女の表情は窺えなかった。無表情な顔に、血の滴が流れている。

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