STEP1 Frozen Flare 49
リュックから覗いていて、長門がずっと気にしていたウィスキーのミニボトルに、ザキが気付いた。
歩み寄ってきたかと思うと、愛美の承諾を得ずに勝手に鞄に手を突っ込んで瓶をとり出すと、琥珀色の液体を目の前にかざして見る。
「アル中かよ」
愛美に向かってそう言いながら、キャップを開けて精一杯粋がった様子で、まだ半分以上入っている液体を揺すった。
長門からすると、軽々しく扱っては欲しくない――密輸で、しかも密造酒という貴重な代物だ。
「長門さんのよ」
愛美がすかさず言い返した。長門は素早く立ち上がって、今にも口を付けようとしていたザキの手から、瓶をとり上げる。
「やめておけ。違法酒だから喉を潰すぞ。歌えなくなったら事なんだろうが?」
ザキは、少し怯えたような目をした。
そうやってとり上げておいて、長門は自分が瓶に口を付けようとする。
が、しかし。ふと気が付くと、怖い目をして愛美が長門に向けて手を差し出していた。
断酒ね、あっさりそう言って指定を受けたスタジオに向かう道すがら、愛美は長門の酒をとりあげたのだ。
一言何か言うと何倍にもなって返ってきそうなので、つい面倒になって預けたままにしておいた。
長門は愛美と瓶を交互に見ていたが、愛美がじれたように手をまた出すと、嘆息しつつ瓶とザキの手にまだあったキャップをとって渡す。
愛美は、瓶の口に鼻を寄せて匂いを嗅ぐと、顔をしかめて遠くにやりながらキャップを締めた。
「全く、本当に。法律に触れるようなもの、どっから仕入れてくるんですか?」
再び鞄に仕舞われてしまう。
銃刀法違反はお互い様だろうと長門は思う。
長門は、相手が銃だろうが刃物だろうが、素手で渡り合うことは造作もなかったが、ナイフは必ず身につけていた。
アメリカではほんの子供でも、ナイフを持っている。日本で、高校生や何かのナイフの所持が問題になっているが、アメリカ社会の後追いをしているに過ぎない。
凶悪犯罪だの何だのと言うが、素人の殺しなど児戯に過ぎなかった。
殺し方というものがあるのだ。
刃物で滅多刺しにしたって、急所を外れていれば人は死なない。
反対に、ほんのちょっとした鋭利な破片があれば、人を殺すことができる。
拷問を加える事件が、増えているというのもよく分からない話だ。
長門は拷問のエキスパートでもある。
拷問とは、効率よく人に口を割らせる方法であり、そのプロセスは死と直結したものでなければならなかった。
「蛇」
Set a thief to catch a thief.




