STEP1 Frozen Flare 48
(襲ってどうするんだ?)
長門の身体には、あちこちに白い傷痕が残っている。
SGAでの事件の際についた愛美にも覚えのある傷以外に、手当をした時には既についていたものと様々だ。
よほど手当がよかったのか新陳代謝がいいのか、傷は殆ど目立つものではないが、銃創も幾つかあるようだった。
長門は、どんな人生を生きてきたのだろう。
アメリカにいたことがあるのは聞いたが、それ以外のことは何一つ知らなかった。
親は? 友人は? 恋人は?
長門にだって、子供時代というものはあったのだろう。
別に、今のこの恐ろしげな顔と、最低最悪の性格でポンと世の中に出てきた訳ではないだろう。もし、今と変わらないそのまんまの子供だったら、絶対嫌だ。
それは嫌すぎるが、愛美にはどうしても長門の子供時代が想像できないのだった。
まだ二二、三才だろうが、自分の年を軽く越える数の人間を、殺してきているに違いない。
それをどう思っているのだろう。
長門からは、何一つ読みとることはできない。
愛美は、殺人ウィルスが蔓延した時、警官に撃たれた長門の肩の傷に指で触れていた。
「人ん家で何やるつもりだよ」
思わず愛美は、ギョッとして扉から出てきていたザキを見た。
デニムとTシャツと先ほどとあまり変わらないような格好で、髪の毛を拭きながらザキが立っている。
愛美は、慌てて手を引っ込めた。
「そう珍しいものじゃないだろう?」
長門は、愛美に向かって言ったものとみえる。
(もしかして、ザキに誤解された?)
予感は当たっていた。
不貞腐れたように、ザキは顔を背けて言い訳のように口の中でモゴモゴと呟く。
「お前らは、そりゃやり慣れてるんだろうけど」
意外や意外、案外純情なんだろうか。
しかし、それは大きな勘違いだ。
その場凌ぎの言い訳に同棲しているとは言ったが、恋人同士だと認めたのだ。勘違いされて当然である。
「まあ、一緒に暮らしてるし」
長門は、完全に自分の身体の傷のことを話題にしているつもりになっている。
(今この状況で、そう言うことを言うな)
「ボタンつけ、服着たままだったら刺しちゃうの」
愛美はそう言って、長門からシャツをもぎとる。
ザキの一言は、ボタン付けなんてできるのか、だった。
お粗末様。
愛美は俯いて、黙々と針を動かして、手早くボタンを付け直してしまう。
長門は返されたシャツを、無言で羽織るとボタンを止めた。ザキは、同じ場所から動かずにタオルでゴシゴシと頭を拭いている。
愛美は、小さなケースに糸や針を仕舞っていた。




