第二話「知らない世界」
…僕は、パチクリと目を覚ます。
気を失っていたようで、私はなんとか体を起こす。
先程まで痛んでいた全身や、裂かれて血が流れ落ちていた左腕を確認する。
だけど、そこにはさっきまであった傷はなかった。
「…?あれ?」と言い、ブンブンと左腕を振り回すが、正常に機能する。
「…治ったんだ、よかった。」と、特に気にせずに立ち上がる。
近くにはさっき戦った謎の存在の死骸が転がっている。
「…こいつ、結局何だったんだろ…結局僕と同類だったのかな?」と言い、足先で死骸をつつく。
「…」ゆっくりとそのまましゃがみ、そいつから手で肉のようなものを引き剥がす。
引き剥がした肉を、眺める。
そして、そのまま口へ運んだ。
「…食べられないってほどではない…」と言い、もう一度肉を抉り取り、口に運んだ。
〜数分後〜
食べ進めていき、残ったのは、骨だけになった。
「…んしょ、私」と言い、骨をいくつか組み合わせて、小さい人形に組み立てる。
「うん、そろそろ行こう。」と言い、それを地面に置くと、大きくて太い骨を1本拾う。
そして、そいつの爪をその骨に差し込む。
何度かぐりぐりとやっていると、爪は骨に食い込み、固定される。
「…拳銃、弾無くなっちゃったから…外にもこいつみたいのがいた時、身を守らないと。」と言い、布などを巻きつけ、不格好なナイフを作り上げる。
「……」ムスッとした顔でそのナイフを見つめる。
「…好きじゃない…」と、少し息をつき、懐にしまう。
そして歩き出そうとした時、何かを踏んづける。
「ん?」
足元を見ると、そこには遺体が転がっていた。
「あ…こんなやつもいたな。」と、さっき食ったやつの近くに転がっていたやつだと思い出す。
そのまましゃがみ込み、そいつの身につけている物をひっぺがしていく。
分厚く、防御力のありそうなベスト。だが、僕にはサイズが合わない。
「…かなりでかい。」と、奪ったTシャツだけでも、袖が手首まで垂れ、膝まですっぽり隠れてしまう。
「…でも、あの白衣?よりはあったかい…」と言い、別の場所も漁る。
「…何だろこれ。」と言うと、円柱状の何かを発見し、持ち上げる。
持ち上げた瞬間チャプッと中から音がする。
「…?」それを振り、音を聞く。
「ちゃっぷちゃっぷ音が鳴る…すごい…中どうなってるんだろ…」と言い、蓋のような場所を引っ張る。
「ん〜…!」と、力を入れるが、当然開かない。
「…開かない…」と言い、もう一度振る。
「…」と、無言で蓋に噛みつき、引っ張る。
その時、引っ張る力が回転方向に加わった。
グルリ!と回転し、蓋と容器が離れ、思いっきり引っ張っていたせいで、そのまま僕は後ろへひっくり返る。
それと同時に、その円柱は宙を舞い、ゴロゴロと転がっていく。
「いてっ…あっ、開いた!」と言い、すぐに立ち上がる。
そのままその円柱状のものへ駆け寄り、拾う。
「…中は、からっぽ?」と言い、床に目を向けると、その円柱が落ちた場所から広がるように、色が違う場所がある。
「…」蓋をもう一度閉め、その円柱を振る、だが、何も音がしない。
仕方なく、床の色が違う場所に触れてみる。
「…ちょっと冷たい?」と言い、ちょんちょんと触れる。
「…冷たいのが指についた」と、指を眺める。
「…なんの味もしない。」と、その指についたものを舐める。
「…でもなんか…もっと沢山欲しい…」と、喉の乾きに気づく。
「…これと似たものを見つけて、中に入れたら直るかな。」と言い、その遺体から取った鞄にその円柱を入れ、似たようなものを求め、歩き出した。
…しばらく歩くと、先に眩い光、薄暗くて、飽き飽きしていた通路の出口が見えた。
出口に近づくにつれ、光は強くなり、僕は目を細める。
「…ん…」
そうして、光に慣れてきた目をゆっくりと開くと…
青い空に、見渡す限りの広大な木々が見えた。
「…わぁ…!」と、見慣れないものに僕は心を躍らせる。
「…青い…」
「…広い…!」
「…すごい…!!!」と言い、ピョンピョンと跳ね回る。
そのたびに草が足に触れ、少しくすぐったい。
「あれは〜…確か…空!これが木!これが草!」と、興奮したままなぜか自然にわかることと、見えているものを照らし合わせている。
「グルルル…」と、そんなことをしていると、唸り声が聞こえる。
「…?なんだろ。」と言い、そこへ目線を向ける。
「…動物?」自然と、そんな唸り声を出す動物と呼ばれる生物がいた気がする。
だが、次に姿を現したのは…四足で動き、深く暗い紫色の体をした謎の生物だった。
「…色的に、さっきのやつと同族…かな?う〜ん…」と僕は小首を傾げた。
次の瞬間、そいつが素早く動いた。
明確に殺意、その牙を剥き出しにし、突撃してくる。
だが、僕は…もう既にこう言うやつと戦ったことがあった、だから──
その脳天に、深々と即興のナイフを突き刺した。
そいつの頭を貫き、そのまま重力と重みのまま落ち、ナイフは地面に突き刺さった。
「…やっぱり動きも似てるしあいつと同族なのかな?」と言い、ナイフを引く。
「ま、いっか。」
次の瞬間、ガサッと近くの草が揺れる。
「…っ」と、考えるより先に体は動き、そちらへナイフを投擲していた。
全身の動き、右腕の力を使った全力の投擲により、風を切るようにナイフはそちらへ飛んでいった。
「…?…??」と、自分の手を見て一瞬困惑する。
「…あっ…ま、待ってぇ」と、すぐに気を取り直し、そのナイフを追いかける。
少し行ったところで、ナイフは木に刺さり止まっていた。
その近くに、何かが走ったような足跡がある。
(…逃げた?いや…間に合わなかった、かな。)
「…この足跡の主を殺すために…体が反応したのかな…」
「逃げるほど弱いのに…なんで…」と、少し考えて
「ま、いっか」と、木からナイフを引き抜く。
「…見た目以外はいいね…」と、手に持っている不恰好なナイフを見つめる。
〜数時間後〜
「うぁ〜…あづいぃ…体べとべとするぅ…」と、ヘロヘロになっていた。
「…うぅ…あの冷たいの欲しいぃ…喉がカラカラするぅ…」と言い、唾を飲み込んで耐えながら歩いている。
「…?なんか聞こえる?」ザァァァという音、何かはわからないが、なぜか…そこへ向かいたいと感じ、そちらへ進行方向を変え、歩き出す。
しばらく歩くと、そこにはかなり大きな湖があった。
あれは湖に川の水が流れ、岩にぶつかる音だった。
「…これ…」と言い、湖に手を入れてみる。
「…」ペロッと手についた水を舐める。
「…!これだ!」と言い、鞄からあの円柱状のものを取り出し、中に水を入れる。
そのまま手ですくい、水を飲む。
「ぷはぁ〜!」
「ちゃっぷ♪ちゃっぷ♪」と、中に水が入ったことで音が出るようになった円柱を振る。
「…」そこで動きを止める。
「…これってもしかして、中に入れて持ち運ぶためのもの?」と言い、円柱…もとい水筒を見つめる。
そんなことを熟考していると、バサァッ!と、水面の上を何か影が掠めた。
「うわっ…!?」とびっくりして水筒を落としそうになる。
そちらを見ると、何かがおり…何度も急降下して、水面に近づいている。
「…何してるんだろ…」
刹那、その影はまたしても急降下し、水飛沫をあげる。
そして、上空に飛び上がり、速度が少し落ちたことでやっと姿が正しく視認できる。
それは──「鳥」だった。
深く暗い紫色をし、足に銀色の魚を持っていた。
「…あれと今は戦いたくないな…素早いし…」
だが、そんなことを考えた矢先、大量のその鳥が集まりだす。
「…嫌な予感がする。」と言い、走り出す。
そして身を翻した瞬間…どこかからか、グシャッ!と音が鳴った。
「…え?」と、困惑の声を漏らし、僕はその音の発生源を見る。
僕の太ももの端の一部が…えぐられている。
「ぐっ…!あ゛ぁ゛…!」と倒れ込む。
背後を向くと、空にいる鳥の1匹が口に肉を咥えている…それは…僕の肉だ。
その鳥が口に肉を咥えているのを確認すると、周りの鳥達も、僕を見た。
その瞬間、僕はゾワリと、背筋にとてつもない悪寒が走った。
僕は木の裏へ転がり、木の幹に背をつける。
次の瞬間、ダダダダダダダッ!という、まるで大量の大粒の石が高速で飛んできたかのような音と共に、ジリジリと木の端が削れていく。
(どうする)
(どうしたらいい?)
(怖い)
(当たったら死ぬ)
(時間がない)
と、考えていると…音が止む。
(…音が…止んだ…?)
(次の攻撃の準備だ。)
(脚の傷はもう出血が止まってる…)
(…この木はもう持ち堪えられない…)
(なら…今別の木に移動するしかない!)と言い、木の陰から飛び出す。
その瞬間、僕の脚のすぐそばに何かが飛来し、砂埃が舞う。
頬に掠り、生暖かい液体が頬を伝う。
(…当たらないように…!早く!早く!)と、前だけ見て走り…
ズサァ!と音を鳴らし、僕は木の陰に隠れた。
またしても何度も何度も音が鳴り響き、木を削る。
「はぁっ…!はぁっ…!」と深呼吸をする。
(…あいつらの攻撃は間違いなく何かが飛んでくるもの…)
(でも、あいつらがそんな道具を持ってるようには見えなかった…)
(……魚を取るとき…あいつらは滑空と急降下を繰り返してた…)
(それなら…攻撃が止むのにも説明が──
と、思考していると、木が削れ、肩に何かが掠り、血が流れ出た。
それと同時に、攻撃はまた止む。
(…この木はもう耐えきれない…でも!別の木に移動したところで…さっきみたいに移動を乗り切れるとは限らない…!それに…仮に移動に成功したとして…それで、それで何に…!)と、考えた瞬間。
「グォォォォォォォォォォ!」と血を揺るがすような声があたりに木霊した、その声に僕は思わず耳を押さえる。
それを聞いた瞬間、さっきの鳥達はどこかへ飛び去ったのが音からわかる。
(…助…かった…?なんだ…今の声…)と言い、無意識に恐怖し、震える体を抑える。
「…早く…離れないと…」と、呟き、そこを後にした。
走って…走って…
僕は限界を迎えた。
背後を振り向き、目を凝らしたとしても既にあの湖はもう見えない。
そこで座り込み水筒の水をグイッ!と飲む。
だが、肉体の疲労は限界で、もう走れそうにない。
ここで襲われたら…僕は何もできないだろう。
だから、足を叩き、自分に喝を入れ、また歩く。
そして、やっと辿り着く。
それはただの横穴だった。
だが、焚き火の跡があった。
だが、そんなことすら気にする暇がないほど、僕の疲労はピークに達し…意識を失うのだった…。
(あれ…なんか…デジャ…ブ…?)
続きをお楽しみに




