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9/12

映画

 石田さんから届いたのは、


 『今週末、空いてる?』

 『予定が無かったら、同空、観に行こうよ』


 だった。


 同空は、『同じ空の下で』という、恋愛映画の略称。そこに出てる俳優さんが、今話題の人で、気になるねと、話していたからだ。希ちゃんに、届いたレンラクンを伝えると、


 「何、めっちゃグイグイくんじゃん。石田さん、本気だったりして」


 と、私よりウキウキしている。好きになってしまった人からのデートの誘いはすごく嬉しい。でも、まだ心のモヤつきが晴れず、少し苦しい。


 モヤつきが晴れないまま、当日になった。


 またもや、大型ショッピングモールの、KOKOsika.katanで、待ち合わせで、予定より早く着きすぎた私だ。ガラスに写る私を見て、


 (今日の服、ミスったかなぁ… イマドキの高校生と変わらないよ)


 と、悩みに悩んだ挙句、選んだ服装に、後悔する。最近は、小学生でも大人顔負けのファッションだ。しかも、私の歳は、若く見られすぎるのも嫌だし、老けて見えるのも嫌だという、贅沢世代。それ故に、服装に迷うのだ。ガラスの向こうに、同空に出ている俳優の女性に目を向け、なんでも似合うっていいなと、羨ましく思いながら、石田さんを待つ。



 「もう来てたんだね。 ごめんね、連絡気づくの遅くなって。僕も早く着いたから、店の中ブラブラしてたんだ」


 石田さんは外から来たのではなく、カタン(KOKOsika.katanの略称)から、出てきたのだ。紙袋を一つ下げて…


 「全然です! 何かいいもの見つけました?」


 「なかなか男一人でブラブラする事ないですけど、たまにはいいですね。さっ、映画の時間もありますし、入りましょうか」


 

 映画は、14時20分に始まった。


 「同じ空の下にいるんだから、寂しくなかったよ」


 男が女を優しく包容する。


 「嘘。待っていてくれてありがとう。結婚しよう」


 「ぅん…」


 女は涙を一つ、二粒、流しながら、うなづいた。


 エンディングと共に、結婚式の映像が流れ、遠距離恋愛を経て、ハッピーエンド。



 石田さんを見ると…



 (な、泣いてる…!?)



 どうしてあげたら良いか分からず、とりあえず、頭を撫でて、慰めてあげた。


 だが、我に帰り…


 (ん? これあってる? もしかしてミスった…?)


 と、心配したが、石田さんはそれどころでは無さそうだ。


 しばらくして落ち着いた石田さんは、気恥ずかしそうにしていて、口数が少ない。いつも話を回してくれているお礼に、慣れないが、私が話を回しながら、カタンから外へ出ると、次の課題が出てくる。


 (このまま解散? それとも、ご飯誘ったほうがいい?)


 只今、16時30分。夜ご飯にしては若干早いが、まだ映画の話もあまりできていないのに帰るのもどうなのか…


 迷っていると、石田さんの口が開いた。


 「いやぁ…、さっきはすみません。自分でもあんなに泣くとは予想してなくて、泣きながらも自分に驚いてました。困らせてしまって申し訳ないので、よかったらこの後、ご飯でもどうですか?」


 汚い心の私は、少し違和感を覚えたが、


 「はい、喜んでっ。この前は私の口に合わせてもらったので、今日は石田さんの行きたいところでお願いします」


 と、賛同した。


 「分かった。じゃあ… 刹那さんを連れて行ってみたい店があったので、そこに行かせてもらいますね。どんな店かは、着いてからのお楽しみで」


 と言いながら、自然に私の手を繋ぎ、誘導される。


 きゅんっと胸が熱くなるが、それと同時に、心のモヤつきがねっとりとへばりつく。



 店に着くと、そこは、凄く高級そうな、焼肉屋だった。


 「僕はここ好きなんだけど、口に合ったら嬉しいな」


 「いえいえいえっ! こんな雰囲気抜群、しかも個室で、これで口に合わないなんて私が言ったら、ぶん殴って下さい」


 「ふはっ。刹那さんて、ホント面白いね」


 まただ。気取ろうとしているのに、笑う時は初めて会った時と、違う雰囲気。これに勘違いするなと言われても無理があるよね。


 焼くのが好きだと言う石田さんに任せて、どんどんもてなしてくれる。まさかとは思うが、ここで告白されないだろうか…。だったら、私の本音をぶつけるのは、今だ。


 心臓の鼓動がどんどん早くなり、私は勇気を振り絞る。



 「石田さんは、私の事、どう思っているんですか?」


 ちょうど焼き終えたお肉をお皿に分けて、石田さんが答えた。


 「好きだよ」


 と。

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