映画
石田さんから届いたのは、
『今週末、空いてる?』
『予定が無かったら、同空、観に行こうよ』
だった。
同空は、『同じ空の下で』という、恋愛映画の略称。そこに出てる俳優さんが、今話題の人で、気になるねと、話していたからだ。希ちゃんに、届いたレンラクンを伝えると、
「何、めっちゃグイグイくんじゃん。石田さん、本気だったりして」
と、私よりウキウキしている。好きになってしまった人からのデートの誘いはすごく嬉しい。でも、まだ心のモヤつきが晴れず、少し苦しい。
モヤつきが晴れないまま、当日になった。
またもや、大型ショッピングモールの、KOKOsika.katanで、待ち合わせで、予定より早く着きすぎた私だ。ガラスに写る私を見て、
(今日の服、ミスったかなぁ… イマドキの高校生と変わらないよ)
と、悩みに悩んだ挙句、選んだ服装に、後悔する。最近は、小学生でも大人顔負けのファッションだ。しかも、私の歳は、若く見られすぎるのも嫌だし、老けて見えるのも嫌だという、贅沢世代。それ故に、服装に迷うのだ。ガラスの向こうに、同空に出ている俳優の女性に目を向け、なんでも似合うっていいなと、羨ましく思いながら、石田さんを待つ。
「もう来てたんだね。 ごめんね、連絡気づくの遅くなって。僕も早く着いたから、店の中ブラブラしてたんだ」
石田さんは外から来たのではなく、カタン(KOKOsika.katanの略称)から、出てきたのだ。紙袋を一つ下げて…
「全然です! 何かいいもの見つけました?」
「なかなか男一人でブラブラする事ないですけど、たまにはいいですね。さっ、映画の時間もありますし、入りましょうか」
映画は、14時20分に始まった。
「同じ空の下にいるんだから、寂しくなかったよ」
男が女を優しく包容する。
「嘘。待っていてくれてありがとう。結婚しよう」
「ぅん…」
女は涙を一つ、二粒、流しながら、うなづいた。
エンディングと共に、結婚式の映像が流れ、遠距離恋愛を経て、ハッピーエンド。
石田さんを見ると…
(な、泣いてる…!?)
どうしてあげたら良いか分からず、とりあえず、頭を撫でて、慰めてあげた。
だが、我に帰り…
(ん? これあってる? もしかしてミスった…?)
と、心配したが、石田さんはそれどころでは無さそうだ。
しばらくして落ち着いた石田さんは、気恥ずかしそうにしていて、口数が少ない。いつも話を回してくれているお礼に、慣れないが、私が話を回しながら、カタンから外へ出ると、次の課題が出てくる。
(このまま解散? それとも、ご飯誘ったほうがいい?)
只今、16時30分。夜ご飯にしては若干早いが、まだ映画の話もあまりできていないのに帰るのもどうなのか…
迷っていると、石田さんの口が開いた。
「いやぁ…、さっきはすみません。自分でもあんなに泣くとは予想してなくて、泣きながらも自分に驚いてました。困らせてしまって申し訳ないので、よかったらこの後、ご飯でもどうですか?」
汚い心の私は、少し違和感を覚えたが、
「はい、喜んでっ。この前は私の口に合わせてもらったので、今日は石田さんの行きたいところでお願いします」
と、賛同した。
「分かった。じゃあ… 刹那さんを連れて行ってみたい店があったので、そこに行かせてもらいますね。どんな店かは、着いてからのお楽しみで」
と言いながら、自然に私の手を繋ぎ、誘導される。
きゅんっと胸が熱くなるが、それと同時に、心のモヤつきがねっとりとへばりつく。
店に着くと、そこは、凄く高級そうな、焼肉屋だった。
「僕はここ好きなんだけど、口に合ったら嬉しいな」
「いえいえいえっ! こんな雰囲気抜群、しかも個室で、これで口に合わないなんて私が言ったら、ぶん殴って下さい」
「ふはっ。刹那さんて、ホント面白いね」
まただ。気取ろうとしているのに、笑う時は初めて会った時と、違う雰囲気。これに勘違いするなと言われても無理があるよね。
焼くのが好きだと言う石田さんに任せて、どんどんもてなしてくれる。まさかとは思うが、ここで告白されないだろうか…。だったら、私の本音をぶつけるのは、今だ。
心臓の鼓動がどんどん早くなり、私は勇気を振り絞る。
「石田さんは、私の事、どう思っているんですか?」
ちょうど焼き終えたお肉をお皿に分けて、石田さんが答えた。
「好きだよ」
と。




