爆弾
ピポッ… ピポッ…
(この横断歩道を渡れば待ち合わせ場所だ…)
マッチングアプリと違うところ、それは、お互いが知人の信用できる相手だということ。今までは、まずは、連絡をとって、電話をしてみたり、会うまでにどんな人か探り合いが必要だが、今回は違う。すぐに会えて、お互いにアリかナシかを定めれるのは、時間が無駄にならなくて、凄く良い。
ただ、今までと違うのは、好きな人がいる事だ。付き合ってもないから、浮気にもならないし、悪い事でないはずなのに、後ろめたさがある…。そんな気持ちで、待ち合わせ場所のカフェに着いた。
そう、ここは、希ちゃんとよく来るカフェだ。そして、石田さんも居た所…。ここを選んだのは希ちゃんだ。私がリラックスして会えるように、行き慣れたお店の方が良いだろうって気を回してくれたんだ。私の事を思っての事だから、嬉しいけど、ちょっと複雑…。
カランカラン♪
(うわぁぁぁぁ、この人、すっごくワイルドだ。オシャレ…)
お店の前で待っていると、ワイルドでオシャレな男の人がお店に入っていった。髪は長いのか、後ろに束ねている。
(あんなワイルドでオシャレな人に間近で出会った事がないから、新鮮だったな…)
カランカラン♪
(あれ、また出てきた。テイクアウトだったのかな?)
ワイルドな男の人は、周辺をキョロキョロしている。
(ん?もしかして…)
「あの… 柴田さんですか?」
希ちゃんの旦那さんの同僚さんの名前が柴田さんというらしい。なんだかそんな気がして、声をかけてみた。
「はい…。え! もしかして、刹那さんですか?」
「はい、そうなんです。あはは」
「えぇーーー、俺、すっごい恥ずかしい事してた…。こんなに可愛い人だとは…」
「そんな事ないですよ! 柴田さんも、凄くオシャレで見惚れてしまいました…」
「見惚れるなんて、照れますよ! 店の前で話すのもあれなんで、中入りましょうか?」
「そ、そうですね。うふふっ」
(んんんーーー? これは、もしや、良いスタート切れたんじゃないのー?)
そう、心が躍りながらも、私は取扱説明書を持ってるから、油断は出来ない…。
席を取り、お互いに好きなドリンクを注文した。
「刹那さんは、コーヒー好きなんですか?」
「大好きです! 柴田さんはお好きですか?」
ポッと頬が赤くなった柴田さんは、
「俺も好きなんですよ。よく、ここの豆、買いにくるんです」
と、見た目通りのオシャレな趣味を持っていた。
「ここのコーヒー美味しいですよね。でも、私、自分で入れるのは手間だと思っちゃって、ここに来ちゃうんです」
「分かります。自分で入れるのも美味しいですけど、このお店の雰囲気の中で飲むコーヒーも良いですよね」
私の意見も尊重してくれる、優しい人だった。話しているうちに、お互いにこれからの事を意識し始めた。
「俺は今年30になるんですけど、刹那さんは結婚願望とかありますか?」
ド直球な質問だ。
「はい…。いつかは結婚したいと思っているんですが、その前のお付き合いで上手くいかないと…と、思っている所です」
「そうなんですね!」
柴田さんは、なんだか凄く嬉しそうだ。結婚願望がある事に、喜んでいるんだろう。
「あの… 凄く言いづらいのですが…」
「はい、なんでしょうか?」
ここで、私の爆弾を投下する。
「私、次にお付き合いする人には、これを渡して受け取ってもらえる人だと決めてるんです。キモいと思うかもしれませんが、今まで、自分の思いが伝わらず、勝手に悲しくなったり苛々しちゃって、相手に結局悪い事をしてしまっていて、その対策としてなんですが…」
「私の…取扱説明書…?」
私の取扱説明書を手に取った柴田さんは、不思議そうに封を開け、読み始めた。
「あ、あの… 目の前で全て読まれると、恥ずかしいといいますか…。すみません、私が渡したのに」
「あぁっ、ごめんなさい。つい、読んじゃいました」
「…引きましたか? 私の事…」
(きっと、この女、ハズレだって思っただろうな。そんな簡単に、見つかる訳ないよね…)
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