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英雄になる最強魔法剣士ができるまで 〜前世で動けなかった俺は、三歳から身体を作り直して多くの人を救う〜  作者: むぎ
第3章 共に生き残る力

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第44話 結果発表

 翌日、俺たち5人は揃って寮を出た。


 今日は朝9時に、学園の門前に掲示板が設置され、クラス替え試験の結果が発表される。


 学園の中へ入るわけではないため、制服を着る必要はない。


 それでも俺は、制服に袖を通した。


 俺にとって、それだけ重い試験だった。


 意外だったのは、ほかの4人も制服を着ていたことだ。


 誰かが合わせようと言ったわけじゃない。


 それなのに全員が、同じ気持ちで今日を迎えていたらしい。


 いつもなら俺の隣で話し続けているアイリスも、今日はほとんど口を開かない。


 エルナも冗談を言わず、前を向いて歩いている。


 ジークはいつも通り真面目な顔をしていたが、歩き方が少しだけ硬い。


 リリアは落ち着いているように見える。


 しかし、胸元で重ねた両手は、指先が白くなるほど強く握り締められていた。


 俺も何か話そうとは思ったが、言葉が出てこなかった。


 筆記と魔法は、今の俺にできる限りのことをした。


 だが、剣術の試験では、相手を圧倒してしまって、自分の実力を出せずに終わってしまった。


 勝てばいい試験ではない。


 俺の剣術を、試験官がどう評価したのか分からなかった。


 学園の門へ近づくにつれ、周囲を歩く生徒の数が増えていく。


 門前には、すでに大きな掲示板が立てられていた。


 全学年の結果が貼り出されているようだ。


 その前を、大勢の生徒が取り囲んでいる。


 喜びの声を上げる者。


 悔しそうに俯く者。


 掲示板の前から離れられず、何度も自分の名前を確認している者もいた。


 俺たち5人は、誰からともなく足を速めた。


 人混みの隙間を抜け、1年生の掲示板の前へ出る。


 大きな紙の一番上に、クラス替え試験の結果が順位順に書かれていた。


 俺は息を止めて、先頭から名前を追った。


【Sクラス】


 1位 セイン・グランベル


 自分の名前を見つけた瞬間、心臓が強く跳ねた。


 1位。


 俺はSクラスに入れた。


 剣術も、きちんと評価されていた。


 胸の奥から一気に喜びが込み上げてきたが、まだ声には出せない。


 すぐに、その下へ視線を動かす。


 2位 アイリス・エーレンフェルト

 3位 エルナ・レイフォルト

 4位 ジーク・ランバルト


 3人の名前が続いていた。


 しかし、次の名前を見た瞬間、込み上げていた喜びが止まった。


 5位 マリウス・クレイン


 リリアの名前がない。


 Sクラスに入れるのは、上位5人までだ。


 見落としたのかと思い、もう一度、1位から名前を追う。


 何度見ても、リリアの名前はなかった。


 視線を少し下へ落とす。


【Aクラス】


 6位 リリア・ベルフォード


 すぐ下に、リリアの名前があった。


 順位の差は、たった1つ。


 だが、掲示板ではSクラスとAクラスを隔てるように、はっきりと空白が設けられていた。


 誰も声を出せなかった。


 俺たち4人はSクラスへ入れた。


 本当なら喜んでいいはずなのに、誰も掲示板の6位から目を離せない。


 隣から、小さく息を呑む音が聞こえた。


 リリアは掲示板を見上げたまま、動かなかった。


 握り締めていた両手に、さらに力がこもる。


 細い肩が震え始めた。


「リリア……」


 俺が名前を呼ぶと、リリアはゆっくり俺たちを見た。


 無理に笑おうとして、口元をわずかに持ち上げる。


「皆さん……Sクラス入り、おめでとうございます」


 声が途中で震えた。


 その言葉を聞いた瞬間、アイリスがリリアを抱き締めた。


「そんな顔で、先に私たちを祝わないでよ……」


「アイリス……」


「悔しいなら、悔しいって言っていいんだよ」


 リリアの指が、アイリスの制服を掴んだ。


 しばらく何も言わなかった。


 それでも、アイリスは急かさず、リリアを抱き締め続ける。


 やがて、リリアの口から、掠れた声がこぼれた。


「悔しい……です」


 アイリスの制服を掴む指に、力がこもる。


「あと1つだったのに……。皆さんと一緒のクラスに、行きたかったです……」


 リリアの目から、涙が落ちた。


「私だけ……違う教室になってしまうのが……嫌です」


「教室が違うだけでしょ」


 アイリスは、リリアの背中を撫でながら言った。


「朝も昼も晩も、ご飯は一緒に食べる。選択科目だって一緒に受けられるし、寮に戻れば今まで通りよ。私は絶対にリリアから離れないから、安心して」


 エルナも、すぐに頷いた。


「そうや。クラスが違うくらいで、うちらが勝手に離れるわけないやん」


 ジークは真剣な表情でリリアを見る。


「悔しがるなとは言わない。だが、6位は十分に誇れる成績だ。リリアが努力していたことは、俺たち全員が知っている」


 俺もリリアへ言う。


「俺たちが仲間であることは、クラスで決まったわけじゃない。俺たち3人が幼なじみであることも変わらない。教室が違っても、リリアの居場所はここにあるよ」


 リリアは何か言おうとしたが、涙で声にならなかった。


 その時、俺たちの後ろから、聞き覚えのある声がした。


「おっ? ちょうどSクラスのみんなが集まってるべさ」


 今、一番言ってはいけない言葉を口にしながら、マリウス・クレインが近づいてきた。


「俺はマリウス・クレイン。クレイン辺境伯家の三男だべ。これから同じクラスだな。よろしく頼むべ」


 アイリスが、リリアを抱き締めていた手をゆっくり離した。


 そして、マリウスへ振り返る。


「ああ!?」


 空気が一瞬で変わった。


 俺は慌てて、アイリスとマリウスの間へ割って入る。


「待て、アイリス! マリウスは悪くない! ただ、タイミングと言葉選びが最悪だっただけだ!」


「違うわ、セイン。この田舎者は昨日からずっと私に喧嘩を売り続けているのよ。上等じゃない!」


 アイリスが拳をポキポキと鳴らし始めた。


 マズい!


 昨日より明らかに怒っている!


「な、なんでそうなるべ!? 俺は普通に挨拶しただけだべさ!」


「よりによって今、Sクラスのみんなって言うヤツは間が悪すぎよ!!」


「いや、だって実際に――」


「黙れ! それ以上しゃべるな!」


 俺が怒鳴ると、ジークとエルナも同時に声を上げた。


「今は黙っていろ!」


「ほんまに口を閉じとき!」


 3人の声が綺麗に重なった。


 マリウスが目を丸くして、俺たちを順番に見る。


「な、なんか……間が悪かったべか?」


「だからしゃべるな!」


 その時、後ろから小さな笑い声が聞こえた。


「フフッ……」


 振り返ると、リリアが口元を押さえていた。


 目にはまだ涙が残っている。


 それでも今度は、無理に作った笑顔ではなかった。


「フフフッ……皆さん、息がぴったりですね」


 リリアが笑ったことで、張り詰めていた空気が少しだけ緩んだ。


 マリウスも、ようやくリリアの涙に気づいたらしい。


 掲示板の順位を見てから、申し訳なさそうに頭を下げた。


「そういうことだったべか……。何も知らなかったとはいえ、悪かったべ」


「いいえ。マリウスさんは悪くありません。当たり前の挨拶をしただけですから」


 リリアは目元の涙を指で拭った。


「悔しい気持ちは、まだ消えません。でも……私はいつの間にか、こんなに大切な仲間に恵まれていたんですね」


 俺たち4人の顔を順番に見ながら、リリアは笑った。


「クラスが違っても、今まで通り仲良くしてください」


「当たり前じゃないか」


「当たり前やん」


「当然だ」


 アイリスは、もう一度リリアを抱き締めた。


「私たちは、ずっと親友でしょ?」


「はい!」


 リリアが強く頷く。


 6位だった悔しさが消えたわけではない。


 これから俺たちだけがSクラスで授業を受ければ、寂しく感じることもあるだろう。


 それでも、掲示板の前で震えていたリリアの手は、もう固く握り締められていなかった。


 俺たちは掲示板を離れ、寮へ戻ることにした。


 その途中、隣を歩いていたエルナが、何度も俺の方を見ながらモジモジし始めた。


「エルナ、どうした?」


「セインは明日からの夏休み、どないするん? グランベル領に帰るん?」


「そのつもりだよ。明日、父さんが迎えに来るけど……どうしたの?」


 エルナは少し迷ったあと、意を決したように俺を見た。


「それなら、うちも馬車に同乗させてもらって、グランベル領に行きたいんやけど……ダメかな?」

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