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英雄になる最強魔法剣士ができるまで 〜前世で動けなかった俺は、三歳から身体を作り直して多くの人を救う〜  作者: むぎ
第2章 守れる力の芽吹き

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第28話 村が生まれ変わる日

 襲撃から2日後の朝、俺たち10歳児を乗せた馬車がロウエン村へ到着した。


 俺は、馬車を降りたところで言葉を失った。


 踏み荒らされ、駄目になった畑。


 扉や壁を壊された家。


 家畜小屋には血の跡だけが残り、どこにも家畜の姿はなかった。


 村長屋敷の前では、父さんと母さんが村人たちへ炊き出しの食事を配っていた。


 俺に気づいた母さんが駆け寄り、そのまま強く抱き締めてくる。


「セイン!! 会いたかった!! お母さん、お父さんに殺されちゃうところだった」


 父さんが即答する。


「何でだよ! ……まあ、来るのが遅くて悪かったことは認めるけどよ……」


「そうなのよ、セイン……! お父さん、来るのが遅くて、お母さん本当に死ぬところだったわ!!」


 母さんの口調はいつも通りだが、目は殺気に満ちていた。


 ロウエン爺の背筋がピンと伸びたのは言うまでもない。


 俺が母さんの言葉に耳を疑って尋ねた。


「母さんが死ぬところだった……? どういうこと?」


「そうよ。お母さんはか弱いのに、お父さんに無理やり戦わせられたのよ!」


 その言葉に、自警団のメンバーの全員が一斉にこちらを振り向いた。


 みんなの言いたいことはわかる。


 少なくとも、絶対にか弱くはない!


 むしろ、たくまし……いやいや、言わなくても誰もがわかることだ。


 やめておこう。


 それから俺は、ロウエン爺と一緒に襲撃の経緯を聞いた。


 78体ものコボルトが村を襲い、母さんは村人を逃がしながら、最後まで村長屋敷を守った。


 死者は1人も出ていない。


 でも、父さんがあと少し遅れていたら、母さんも自警団の若者たちも殺されていた。


 母さんがそこまでやらなければ、この村は守れなかったのか。


 父さんが間に合わなければ、全て終わっていたのか。


 それでは、あまりにも危うすぎる。


 父さんと母さんが強いだけでは、グランベル領は守れない。


 このままじゃ絶対に駄目だ!


 朝の炊き出しを受け取るため、広場には村人のほとんどが集まっていた。


 俺は1つの答えを出し、父さんとロウエン爺に自分の考えを話した。


 ロウエン爺は目を丸くしながらも、ゆっくりと頷いた。


「ほう……確かに今が良い機会ですな」


 父さんも笑いながら俺の背中を叩いた。


「セイン! お前、その歳ですごいな!! さすが俺の息子だ!! 優秀すぎて、お父さんは逆に心配になるわ!!」


 父さんにそう褒められて、少し身体がむず痒くなった。


 それから、俺は炊き出し用の空いた木箱に乗り、この場にいる村人全員へ呼びかけた。


「みんな、聞いてください。今回は死者が出なくて心から安心しました。でも、このままでは近い将来、必ず死者が出ます。皆さん、このままで本当にいいんですか?」


 ガヤガヤしていた雰囲気が一転して、村人の視線が俺に集まった。


 俺は続ける。


「俺はこの村で誰も死んでほしくありません。そこで考えました。この村に住む18歳以上30歳以下の男性には、俺が考えた項目に沿って、毎日必ず鍛練してもらいます。それ以外の人も、希望するなら参加できます。皆さん、どうですか?」


 1人の村人が俺に問いかける。


「若様、畑はどうするんですか?」


 胸の奥が熱くなった。


 それでも、これは村人全員の生活に関わる話だ。


 俺は言葉を選んだ。


「畑が大事なのは百も承知です。だから、畑仕事をやめろと言っているわけではありません。でも、今の村を見てください。畑も家畜も、襲撃から守れなければ失ってしまうんです!」


 村人は全員黙る。


 俺はさらに続ける。


「そもそも、今度襲撃されたら今回のように死者を出さないとは限りません。皆さんは自分の家族、恋人、子どもを目の前で殺されても黙っているんですか? 自分の畑、愛する人を他力本願ではなく自分で守る、そう考えられませんか?」


 若い男が大声を張り上げる。


「若様、俺たちは兵士ではない! 役割が人それぞれ違うだろ?」


 他の人も同意する。


「そうだ!! 畑は1日放っていい時期と悪い時期がある。収穫期とかはどうするんだ!?」


「その通りだ!! 若様は畑のことを分かっていない!!」


 俺はすぐに答えた。


「鍛練は毎日、畑仕事の前に行います。収穫期のように忙しい時期は、量を調整します。鍛練に参加しない人たちには、強制参加となる人の畑仕事を少しずつ手伝ってもらいます!」


 反対の声を上げていた若い男の妻らしい女性が、横から言い返した。


「そうやって、一昨日みたく、私と子どもを置いて自分だけ先に逃げるんですね。何だかんだと理由を作って、自分を正当化しようとして、みっともない!!」


「お、お前、ここで話す話じゃないだろ!?」


「みっともないことをしているあなたに、そんなことを言う権利はありません! 私はあんたみたいな情けない人とはもう一緒にいたくない!!」


 母さんもブチギレた。


「あんた、家族を逃がす前に自分が先に逃げたのかい!? ふざけんじゃねえぞ!! テメー玉ついてんのかよ!! クソ野郎が!!」


 父さんとロウエン爺は今にも正座しそうな神妙な顔つきだった。


 母さんは続ける。


「他のやつも、こえー! こえー! って言って何もしないやつはこの村から出ていけ!! そんなクソ野郎どもはいらねえんだよ!!」


 ロウエン爺が現実を話す。


「出ていったところで結果は同じですな。全国的に魔物被害は多発していて、騎士団が出払っています。出ていった先で自分や家族が殺されて終わりですな」


 母さんは続ける。


「あたいだって魔物と戦うのは怖えよ。一昨日は、本当にもう駄目かと思ったんだ。もうセインに会えないと思ったら、涙が止まらなかった。でも、この村のみんなを死なせたくなくて立ち上がったんだ!」


 村人全員が、神妙な顔で俯いた。


 村を守り、村人全員の命の恩人となった母さんの言葉には、誰よりも説得力があった。


 父さんが話を引き取る。


「俺もクレアやセインに同意だ! ここでみんな立ち上がらなかったら後悔するぞ!! 畑が大事なのはわかるが、それをみんなで強くなって守ろうと言っているんだ!!」


 父さんは続ける。


「今は昔と違って、統率された魔物が出るようになった。みんなだって見たんだろ? 群れの後ろから、俺たちの動きを観察していたコボルトを! 昔は、この辺りにあんなのはいなかっただろ!?」


 村人はざわざわする。


「確かに旦那様の言う通りだ。昔だったら一斉に襲いかかってきたはずだ」


「魔物が強くなっているのかい?」


「もうあんな恐ろしい思いはしたくないな」


 父さんはざわつきを抑えるように大声を張り上げた。


「みんな!! 頼む!! 実際には俺やロウエン、自警団だけではもう限界だったんだ!! みんなの力が必要なんだ!! 協力してくれ!!」


 そう言って頭を下げた。


 ニルくんが手を上げた。


「旦那様!! 俺はやるよ!! 最初は若様みたいにできないかもだけど、俺はこの村が好きだ!! 大切な人がたくさんいる!! 俺はこの村を守りたい!! そのために戦わないとならないなら、強くなって自信を持って戦いたい!!」


 ニルくんの発言で、明らかに空気が変わった。


「俺も強くなって家族を守りたい!」


「怖いなら鍛練して強くなればいいんだな!」


「俺は30歳を超えているけど、鍛練していいですか?」


「もちろんです! 年齢や性別に関係なく、希望する人は一緒に鍛練しましょう!」


 俺はすぐに紙へ鍛練項目を書き、村人たちに見せた。


 鍛練に参加する村人たちは、紙に書かれた項目ごとの量を見て、一様に青ざめた。


 ニルくんも例外ではなかった。


「若様! これを本当に毎日やるんですか?」


「ああ、魔物はまたいつ襲ってくるかわからない。早急に強くならないとね! あと、これを毎日やれば絶対に強くなれる!!」


 これで1人ひとりが戦えるようになれば、今回のように母さん1人へ全てを背負わせずに済む。


 誰か1人だけに全部を背負わせるより、ずっと多くの命を守れるはずだ。


 こんなことが2度と起きないように、村は動き出した。

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