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英雄になる最強魔法剣士ができるまで 〜前世で動けなかった俺は、三歳から身体を作り直して多くの人を救う〜  作者: むぎ
第2章 守れる力の芽吹き

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第27話 間に合った剣

 街道でクレアの使いから手紙を受け取った俺は、馬車と子どもたちをロウエンに任せ、3時間近く馬を走らせ続けた。


 ロウエン村に到着した時には、辺りはすっかり暗くなっていた。


 村長屋敷は、10体ほどのコボルトに取り囲まれていた。


 その中に、群れの指揮役らしい一回り大きなコボルトがいた。


 そいつは俺の姿を見るなり、仲間を置き去りにして、東へ1体だけ逃げ出した。


 共同井戸の方へチラリと目をやると、コボルトの死体が折り重なるように、大量に横たわっていた。


 コボルトの数が多すぎるだろ!?


 コボルトの死体は、村長屋敷まで続いていた。


 よく見ると、村長屋敷の扉が開かれており、中までコボルトが入り込んでいた。


 なぜ、クレアは氷槍で応戦しないんだ!!


 あのクレアが魔力枯渇!?


 まさか、間に合わなかったのか!?


 俺の脳裏に最悪の想像がよぎる。


 指揮役を追っている場合じゃない。


 今は、クレアが先だ。


 俺は、村長屋敷の外に残ったコボルトを蹴散らす。


「どけ!! オラアーー!!」


 そして、村長屋敷の中に入った。


 中では自警団の若者2人と、コボルト4体が対峙している。


 若者2人の震えは激しい。


「りょ、領主様!!」


 その奥では、クレアが避難壕へ続く接続通路の扉にもたれ、俯いたまま床に座り込んでいた。


「クレア!!」


 コボルトの1体が、自警団の若者を無視してクレアに襲いかかる。


 俺の中で何かが弾け、目の前が赤く染まった。


「俺の女に触るんじゃねええーーー!!」


 俺は強く床を踏み込み、叫びながらコボルトを縦に一刀両断した。


「グギャ!!」


 コボルトは悲鳴と共に血飛沫を撒き散らして倒れた。


 続けて、若者2人と対峙していたコボルト3体に狙いを定め、1番近くのコボルトを横薙ぎで胴から真っ二つに斬った。


 若者2人は俺のあまりの迫力に腰を抜かして、その場でへたり込んでしまった。


「ヒ、ヒィーーー!!」


「あ……あ……」


 地面に座り込んで、悲鳴を上げたり、言葉にならない声を発したりしながら、俺とコボルトの戦いを見ていた。


 お前たち、自警団だろうが!


 しっかりしろよ!!


 コボルトが俺に短剣で横薙ぎに斬りつけてきた。


 俺は剣で余裕を持って受け止め、すぐさま斬り返して、コボルトの首を落とした。


 コボルトは首から鮮血を撒き散らして倒れた。


 その様子を見ていた最後の1体が逃げようとしたところで、俺はその腹に思いっきり蹴りを叩き込んだ。


 ドガーン!!


 コボルトを壁に強く叩きつけた。


「逃げないで素直に死んでくれよ!!」


 そう言いながら、床に倒れたコボルトを剣で何度も突き刺した。


 俺はコボルト4体を殲滅した後に、クレアの前に膝をついた。


「クレア……? 生きているか……?」


 クレアは、涙に濡れた目を少しだけ開けた。


「あんた……ホント……来るのが……遅いよ……」


 俺はクレアの手を両手で握り込む。


「あ、ああ……遅れてごめん……」


「でも……今回は……本当に……助かったよ……」


 クレアは泣きながら言うと、魔力枯渇で意識を失った。


 あれだけのコボルトを倒しているんだ!


 魔力枯渇は無理もない。


 だが、まさか、あのクレアが泣くなんて……!!


 くっ!!


 それだけ死を覚悟したということか!!


 絶対許さん!!


 俺はクレアを力強く抱き締めた。


「クレア……あとは任せろ!!」


 俺は自警団の若者2人に確認した。


「村の被害状況を話せ!!」


「村人、自警団ともに怪我人は多数! ですが、死者は出ていません! 村の損害はご覧の通りです!」


 俺は目を見開いたが、すぐにニヤリと笑った。


「これだけの襲撃で死者は出ていないだと!? ……十分すぎる戦果じゃないか!!」


 そう言うと、俺はすぐに屋敷の外へ向かい、コボルトの残党を斬り伏せに行った。


「おりゃあああーーー!!」


 気合い一閃、2体のコボルトを同時に横薙ぎに斬り払う。


 それを皮切りに、俺は次々とコボルトに襲いかかった。


 振り向きざまに1体を下から斬り上げ、鮮血を散らす。


 向きを変え、そのまま次の1体へ剣を振り下ろして一刀両断にする。


「おおおーーー!!」


 俺に飛びついてきたコボルトを腹への前蹴りで蹴り落とし、そのまま地面に向かって刃を突き刺す。


 周りのコボルトが怯んだ隙を見て、突進した勢いを利用して再び横薙ぎに斬り払い、2体のコボルトの胴を同時に真っ二つにした。


「まだ終わってねえぞ!!」


 俺は怒りのまま、剣を振り続ける。


 最後に、逃げようとするコボルトが2体ほど出た。


「逃がすわけねえよな!!」


 1体目を執拗に追いかけ、後ろから剣で突く。


 さらに2体目も追いかけ、首を斬り落とした。


「ハア……ハア……ハア……これで終わりか……」


 俺は村長屋敷周辺のコボルトを全て片付けると中に戻り、クレアを優しく丁寧に抱え上げた。


「村長屋敷周辺のコボルトは全て片付けた。お前たちも避難壕に行くぞ!」


「は、はい!」


 避難壕は、村長屋敷の裏にある大きな洞窟を利用して作られ、屋敷とは地下の接続通路でつながっていた。


 俺はクレアを抱えながら、自警団の若者2人を連れて接続通路を通り、村人たちがいる避難壕に到着した。


 避難壕に入ると、村人たちの視線が一斉に俺へ向く。


 俺の腕の中には、意識を失ったクレアがいる。


 誰もが息を呑んだ。


 子どもを抱えた母親が叫ぶ。


「奥様……奥様は大丈夫なんでしょうか!?」


「ああ……だいぶ無理をして気絶しているだけだ」


「この子は逃げ遅れて隠れていたところを、奥様が抱きかかえて救ってくれたんです」


「そうか……」


 小さな子どもが、母親に抱かれたまま泣きそうな顔でクレアを見ていた。


 老人が、震える手で頭を下げる。


「奥様が……助けてくださった……」


 その言葉を聞いた瞬間、避難壕の中にいた村人たちが、次々に頭を下げた。


 クレアは何も答えない。


 ただ、魔力枯渇で眠るように意識を失っているだけだった。


 それでも、その場にいる全員が分かっていた。


 自分たちが生きているのは、クレアが最後まで戦ってくれたからだ。


「みんな!! 聞いてくれ!! 村長屋敷周辺にいたコボルトは殲滅した!」


 その言葉を聞いて、村人たちはざわめいた。


 俺は続ける。


「だが、暗くて村全体の様子までは確認できていない。だから明日、村の中を確認して片付ける。今夜はここで寝てくれ!! ここには大量の毛布があるが、足りなければ手配するから言ってくれ!!」


「自警団は火を絶やすな!! 俺と一緒に交代で夜通し警戒するぞ!!」


「それと、明日からしばらく炊き出しをする。安全を確認して自宅に戻れるやつは戻ってもいいが、炊き出しには参加してくれ!! 以上だ!!」


 俺はそう言うと、クレアを毛布に包んで、火の近くで寝かせた。


 俺はその傍らに座り、慈しむようにクレアの頭を撫でた。


「これほど大規模な襲撃をほぼ1人で食い止めて、死者を出さないなんて、お前にしかできねえよ。本当にありがとうな」

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