第61話 勝ったらどうする負けたらどうする
昼食後の馬車移動、
魔王ジマーは早くもおやつを食べている、
いやほんと少女だな、喰い過ぎ注意は担当のファロラさんに任せてっと。
(あっ、もちろん馬車内は音声遮断魔法をルビアさんがかけています)
なので馬車を運転している騎士団の人には会話は聞こえません、改めて。
「ではあのシグリヌさんに夢中な『ガーデンオブリリーズ』に勝った時の要求はどうしましょ」
「ふむ、私のことは諦めろ、ではもったいないな」「かといって身ぐるみ剥いでもねえ、っていう」
「私が剥ぐと喜びそうだが」「ご褒美をあげてどうするんですか」「では何かさせるか」「うーーーん」
させるって言ってもねえ。
「ではいっそのこと」「はいルビアさん」
「手下として使うのは」「うわ、めっちゃ喜びそう」
「あくまでも『魔の谷』の基地で、ですわ」「あっ狩りでじゃなくって」
でも、それもそれで喜びそう。
「とりあえず~、修繕や建設関係を~」
「あーリムラさん、それ騎士団の方の仕事らしいですよ」
「では予定外のも~」「ていうかむしろそれ、僕もやりたかったり」
よわよわ勇者の、
数少ない出来る仕事だ、
こんなのでも男手ですから!
「とりあえず食事係でもやらせる?」
「ファロラ、給仕かあ、僕だけ眠り薬入れられそう」
「薬師のあの人に?」「意外とああいうのが毒があるんですよ薬師なだけに」
一応、魔王にも聞いてみよう、と目を合わせる。
「何よ、面白くなかったわよ?」
「いやジマーの意見も聞こうと思って、勝ったらどうしよう」
「アタシの散歩でもして貰おうかしら」「そのまま逃げる気じゃ」「♪~」
な~に口笛吹いてるんだか。
「セルフィはどうなのよ」
「うんファロラ、あれとどうこうする趣味は無いし」
「私たちとする趣味はあるのにね」「いや趣味というか奥さんだし」
あと餌だし。
「むう、結論が出ないな」
「まあ決闘までは、いや『魔の谷』までは時間はあるんで、じっくり考えましょ」
「それでだが、もし負けた場合は」「シグリヌさん行きたくないでしょ」「当然だが」
うーん、正体明かすのもなあ。
「僕の意見としては、少しの間だけシグリヌさんを貸してみるのもいいかなと」
「お試し期間か」「で、逆に彼女達の方が足手まといになれば」「そういう作戦か」
「こっちのフルパーティーが一緒に居ると誰かがフォローしちゃうので、シグリヌさん単騎で」
ただ、問題は意外とスムーズに行った時なんだよなあ。
「セルフィ、わざと嫌われるって手はどう?」
「うーんファロラ、あの感じだとシグリヌさんが何をどうやっても喜びそう」
「塩対応しても?」「そうだね」「暴れても?」「そうだね」「襲っても?」「そりゃあもう大喜びだろうね」
逆効果だ。
「それでは~、セルフィさんが一緒に行って~、彼女達を襲うのは~」
「うんリムラさん、確実に僕が返り討ちにあうね!」「私が護るが」「いやそれだと2人で襲うことに」
「では~、いっそ『ホーリーアンライヴァルド』で襲うというのは~」「何そのくんずほぐれつ、それこそ喜ばれるよ」
気が付いたら僕だけ放り出されていそう。
「整理いたしますと負けた場合の対処方法ですわね?」
「ルビアさん、良い案でも」「しばらくは周囲をうろつくのを許すくらいしか」
「それで済むかなあ」「あまり積極的な部分は拒否して良いと思いますわ」「まあね」
いくら決闘で負けたからって限度がある、
まあそれは勝った時にも言えることなんだけど、
当のシグリヌさんはどのくらい許容範囲があるのだろうか。
(と、視線を向けると考え込んでいるや)
そして目を見開いた!
「おっそ、やるか」「えええ」
「それで済むのであれば」「済みますかねえ」
「私はセルフィの魔力さえ吸えれば、他の事は多少は我慢しよう」
多少ねえ。
「あっ、ちなみにジマーはどう思う?」
「そんなの相手に聞けば良いでしょう」
「なある、そりゃそうか」「それで擦り合わせれば?」
戦う前にか、
確かに勝った時と負けた時、
それぞれにやらされる事の重みが吊り合わないと。
(意外とジマー、しっかりしてるな)
それでも魔王をやるには早すぎた感はあるが。
「それじゃあ決闘の時に聞いてみましょう」
「でだセルフィ」「はいシグリヌさん、あと何か」
「戦うのは夕食の前か後か」「日が残っている内だから、前でしょうね」
食後の運動に丁度良いかも知れないけど。
「わかった、では早めにおやつを頂こう」
「あっはい、おやつ、ですよね」「魔力は足りているが」
「……そういえば魔の谷って、魔力供給できるんですかねえ」
ウチのホーリーサキュバスの地元、
あの魔族領だと自然と魔力回復した、
またいだ人間領でも近ければある程度は。
(だから、魔の谷でも自然回復しれくれれば……!!)
まあ、着けばわかるか、
その前に、いよいよ決闘だ!




