第51話 旅立ち前日の王都デート 中編
「シグリヌ様、わたくしたちもお供させて下さい!」
「何でも、本当に何でもしますから、お願いします!」
「どこへでも、どこまででもついて行きますから、どうか!」
朝食後に出発すると、
例のシグリヌさん目的な女性冒険者一行、
もう僕らが明日、発つのをどこかで聞いてきてしまったのだろうか、必死だ。
「お前たち、だから私は女に興味は無い」
「そんな、明らかにメスを惹きつけるオスの顔をしておいて!」
「良いんです本性は私たちだけがわかっていますから」「それとも御自分で気付いてないのかも」
どうしてもこの女性パーティーは、
シグリヌさんをそういう方向に持って行きたいみたいだ、
願望を押し付けられる方は良い迷惑、ていうか僕がはっきり言ってやろう。
「あの、実はシグリヌさんって僕の側室っていうか」
「わかります、両方イケるクチなんですよね、許容範囲内です!」
「ええっとリーダーの何さんでしたっけ、シグリヌ様をお借りしますね」「ええ、少々20年ほど」
おいおいおいおい!!!
「ウチの前衛持って行かれては困るっていうか、だから嫁だって」
「つまりそういうことにしておられると」「わかりますわかります」
「でも大丈夫です、これからは私たちがシグリヌ様のお世話を」「あーもう」
着いて行くと言ったり、
お借りするって言ったり、
お世話とか言ったり、結局どうしたいんだっていう。
(つまりは欲しいだけなんなんじゃないか!)
あんまり強引な事をするなら呪いでもくれてやろうかっていう、
すでにルビアさんもリムラさんもファロラも僕の一声で何でもする感じ、
いやもちろん一番イラついているのはシグリヌさんだろうけど、リーダーの僕の判断待ちだ。
「シグリヌさん」
「なんだセルフィ」
「ここはシグリヌさんに任せます、あっ剣は抜かないでね」
任せますの「ま」を言った所で手を背中の剣にかけそうになった、
判断が早い、早すぎる、そして容赦なく斬るのは、さすがにどうかと。
「わかった、私の好きにして良いのだな?」
「あまりに手荒な真似はやめてあげて下さい」
「私で良いのか」「あっそうか、いやまあ、お任せします」
手荒じゃないなら魔法が良いんじゃって提案か、
それも含めてお任せしますよっていう僕のお返事を受け、
シグリヌさんはスタスタと、って僕の真正面へっ?!
(少し屈んで、顔を近づけて……て、ま、まさか?!?!)
おもむろに、唇があ!!
「んぐ、んぐぐぐぐっっ!!!」
シグリヌさん追っかけの女性パーティーから歓声が!
ていうか普通に通行人にも見られているからあああ!!
「……ふう、これでわかっただろう、さあ帰って良いぞ」
「いえ、むしろもっと見たいです!」「ありがとうございます!!」
「あぁ、シグリヌ様の濃厚な……いずれは私も」「あーもうルビアさん」
僕の声に無詠唱で、
追っかけ女冒険者たちの足に、
光の鎖を……さすが女性相手か、そこまでキツくは絞めてなさそう。
「半日くらいで消えますわ、そこまでまったく動けない訳ではないですわよ?」
うん、がんばれば多少は引きずれる、足止めには十分だな。
「という訳で僕らは行きますが、邪魔にならないように道の端にでも移動して下さいね、何とかして」
しかし女性パーティーは……
「ああっシグリヌ様、これが試練なのですね」
「この鎖はきっとシグリヌ様の愛情表現、嬉しいです!」
「ここで先ほどの、シグリヌ様の濃厚なシーンを思い出して……あぁ、ああ!!」
駄目だこれ。
「ねえセルフィ」
「どうしたのファロラ」
「私とは今日、いつ、どこでする?」「えええ」
さすが正妻である。
「それより~、お買い物です~」
「だねリムラさん、一応、ポーションも買っておく?」
「転売目的でしょうか~」「あっそういう考え方もあるのか」
人外魔境へ行くからね、
ていうか冒険者ギルドからの依頼荷物にもありそうだな。
「じゃあ真面目な買い物を先に」
「ですね~、その後は真面目じゃない買い物を~」
「メイド服とか女装アクセサリーとかは、やめてー!!」
そんなこんな王都デートである。




