第44話 馬車の中で脅されたものの
「んー! んーー!! んーーー!!!」
「煩いなぁこの魔王の小娘」「セルフィ、いっそ斬るか」
「いやシグリヌさん、これをこのまま冒険者ギルドに売る手もあるかなあって」
下手すれば一生遊んで暮らせるお金になるかも?
「冒険者ギルドまでの道中、暇ですわね」
「はいルビアさん、じゃあ馬車の中だけど、ちょっとこの魔王の名前でも聞こうか」
「口の鎖だけ解きますわ」「……んはあ、アンタたち、いいかげんにしなさいよ!!」
うっわ噛みつかんばかりの荒ぶり方だ、
ろくな教育受けてこなかったんだろうな、
と思ったが魔王なら仕方がないか、よくあの四天王は世話してたな知らないけど。
「ファロラ、四天王の亡骸でも見せて大人しくさせる?」
「じゃあ生首でも並べよっか」「きーーー! そんなことより私をどうするつもりよ」
「冒険者ギルドに突き出すんで、後はまあ洗いざらい白状させられるなり、解体されるなり」
リムラが無詠唱で何か魔法をかける。
「……うう、なんだか怖いわね」
「畏怖を感じる魔法です~、とりあえずこれで大人しく~」
「ということで名前を教えて、僕はセルフィ」「……ジマーよ」
ファロラがじーっと見つめる、
鑑定スキルを使っているようだ。
「種族はデーモンね」
「じゃあ魔王で間違いなしだね」
「今は弱いけど放っておくと、相当強くなるわ」
じゃあ相手が早めに出てきてくれて助かったのか、
まだ未熟なうちに……見た目は少女だから可哀想に見えるけど、
所詮は魔物、人間と敵対している魔族であれば慈悲をかける必要は無い。
「か、帰して、戻してよ」
「今回、君のせいで人間が何人も死にかけた」
「こっちだって、やられる一方だったわ」「それを言い出したら、きりがないけどね」
このあたり、
伯爵領に隣接する魔族領は上手い事やっている、
相互不可侵にして互いが互いに平和に生きている、それぞれ生贄を渡して。
(人間に引き渡された生贄がファロラです!)
魔族領に渡された伯爵家の御嬢さんは、
おそらく今でもアヘっていることだろう、
1日に30分ほど正気に戻っていたが、幸せといえば幸せとか言っていたな。
「とにかく、アンタこのサキュバスについて隠してるんでしょ」
「な、なんでそれを」「ずっと人間に擬態させてたからよ私の前まで!」
「まあそれは、そこまで本気を出させる相手が居なかったから」「冒険者ギルドとかいう所でばらしてやるわ」
あっ、脅された!
「つまり言われたくなかったら放せと」
「そうよ、元に戻しなさい、だったら秘密は守られるでしょ?」
「いや、ここで口封じをすれば、シグリヌさん」「ああ、首を刎ねて舌も抜こう」「ちょ、じょじょ冗談よ!!」
でも生け捕りで渡すとそういうリスクがあるのか。
「ルビアさん、何か良い呪い、いや魔法ありましたっけ」
「まずはティム魔法ですわね、しかし魔法クラスをティムとなると」
「何かリスクが」「まずティムの間、他の魔物のティムが不可能に」「なんだそんなことですか」
飼うのが面倒だからあまりティム魔法は使っていない、
ルビアさんの場合ね、僕の場合はホーリーサキュバスに対して、
バレたらティムって言い訳するけど実際は生贄、もとい正妻と側室だ。
(まあティム魔法が使えたとしても、勇者魔力がほぼ無限な僕なら大丈夫だろうけど)
ちなみにティムした魔物は売買されたりするが、
魔力の高いテイマーでないと強い魔物は従えさせられない、
魔王レベルとなると人間レベルではまあ無理、あっそうか、だからか。
「あとは、魔王をティムするとなると疑われますわ」
「うん、ルビアさんが人間じゃないって」「ハイエルフでも無理ですわ」
「じゃあどうしましょ」「精神拘束魔法、わたくしどもの秘密をばらそうとしたら首が絞まる呪いですわ」
無詠唱て手をかざすと、
首に光の輪が装着されてそのまま消えた、
かなり強力な呪いなのが見てとれた、これ解除できるのルビアさんかリムラさんか、あとファロラが力技を使えば。
(あとホーリードラゴン、って意外と居るな解呪できるの)
一応、確認してみるか。
「それで魔王ジマー、何をばらすって?」
「もちろん、そこの4人が……ぐああああああ!!!」
「おお、光の輪が絞まる絞まる」「それでも喋ろうとすれば、死にますわよ」
これ便利な魔法だな、
容易に口止めできるけど、
魔王相手にかかるルビアさんの魔力よ、供給源は僕だけど。
「ふう、これで口止め完了か、って馬車の運転手に聞こえてないよね?」
「音声遮断魔法を~、この馬車内に~」「リムラさん、さすがです」「いえいえ~」
「処刑される瞬間に喋ったりしない?」「大丈夫ですわファロラ、きっと声になりませんわ」
ちなみに筆記も駄目らしい、
おそらく書いても魔物語だろうけど!
という訳で冒険者ギルドに到着したのであった。




