第40話 C級講習会のはずが
「そのなんだ、これはあくまで講習の実技なんだが」
ばつの悪そうな冒険者ギルマス、
隣に居るのは緑を基調とした服のお爺さん、
例のクランその重鎮というか髭まで緑なのな別に良いけど。
「ワシは『オールウェザー』先々々代のクランマスター、勇者ミゲルであーる」
「はあ、偉い方なんですか」「こやつの師匠じゃ」「あっギルマスの」「すまない」
「講習の一環として、我がクラン員の解呪を頼んだぞ」「そういう手を使ってきましたか」
うん、クランというものが、
いったいどういう組織なのかよくわかった、
クラン員のためならどんな手を使っても助けたいらしい。
(もっとこう、ぎりぎりで慈悲をかけるつもりだったんだけどな)
並べられた廃人寸前の3人、
もうこれは冒険者としては駄目かも知れない、
とはいえ僕にあんなことをしてきたんだからね、当然の報いではあるが。
「断ったらB級にあげないとかあるんですか? ってやっぱいいや」
「あ、あくまで講習というか、か、貸しで良い」「いや、貸し借りを押し付けられても」
「なんじゃ、ワシの100年に1度の『必殺土下座』でも見たいのか」「ミゲルさん何歳ですか」「101歳じゃ!」
なんだかここまでくると、
また違った意味で可哀想になってくるな、
どっちみち最終的に許すつもりはあったんだし、適当な条件で終わらせるか。
「じゃあミゲルさん」「おう見ておけ」
「いえ、お爺ちゃんの土下座を見ても特に何ともなんで」
「では何が見たいんじゃ? あんまり腰に負担がかかるようなことは」「何か面白い冒険談を、鉄板のやつ」
元クランマスターならあるでしょ。
「実はな、ワシの嫁はかつて、現役冒険者時代『淫乱バーサーカー』の二つ名で呼ばれておってな」
「あっ、面白そう!」「インキュバスという魔物の集団8体を相手にした時の事じゃったんだが……」
あっ、インキュバスはサキュバスのオスね、
なお話の内容は面白かったけど下品すぎて省略、
いや泣かすなよインキュバスを、一番怖いのは人間だったとさ。
「どうだセルフィ」
「はいギルマスさん、まあ合格で、リムラさん」
「では~、ささっと解呪いたします~~」「おお、無詠唱で!」
驚くギルマスの声とともに、
催眠魔法がかかったように眠る3人、
よっぽど眠れなかったんだろうね本能的に。
(やっぱり身体が解呪をわかるんだろうね)
ミゲル爺さんも、
ほっと一安心といった感じ。
「済まなかったのう、やり方が全面的に間違っていたとは言わぬ、
ただ相手を完全に間違えた、それに関しては詫びよう、もう土下座はせんがの」
「いえ、面白い下ネタ冒険談が聞けて良かったです」「そちらの女双剣士、現役時代の嫁に似ておるのう」「止めていただきたい」
あっシグリヌさんのマジトーンが出た!
一応、人前ではお堅いイメージで行くんだっけ、
サキュバスが下ネタに乗り気だと尻尾が出ちゃうからね。
(物理的にじゃないよ!)
そんなことより講習どうなった。
「ではセルフィよ」「はいギルマスさん」
「先ほどのミゲル師匠の話を講習としよう」
「えええええインキュバス5体同時に●玉握りつぶした話がですかあ?!」
あっ、受付嬢長のルミナスさんが思わず吹き出した、
慌てて取り繕っているが今更、眼鏡クイッしても遅いっていうか。
「重要な先人の体験談だ、そういうことにしてくれ」
「まあギルマスの決定なら」「内密に頼む」「そんな人には言うなよ的な」
「ではワシの仕事は終わったの?」「師匠、申し訳ありませんでした」「なに構わんよ」
大仕事が終わったみたいな貫録だなこの御大、
杖ついて出て行った、そしてギルマスが何か書類にサイン。
「これを受付へ持って行けばB級だ」
「わあいわあい」「……無理して喜んでいないか?」
「一応、先を見据えているので」「やはりか」「ええ目的は」
納得といった表情のギルマス。
「ではその前にグランドダンジョンを頼む、明日夜に各代表が集まっての打ち合わせだ」
「各クラン集まるんですよね」「それと王宮騎士団、教会からもだ」「教会って誰が代表で」
「ホーリーアンライヴァルドというパーティーが」「聞いてないんですが」「これから聞くのだろう」
なんだかネタバレを聞いた気分、
まあ確かに、午後は教会へ行く予定だったけど。
「わかりました、そこまでどうしても嫌だって訳じゃないですから、で、その打ち合わせに出たらA級に」
「気が早いな、確かに軽微な依頼でもクリアしたら昇格だが、打ち合わせは打ち合わせだ、せめて調査に出てからだ」
「……ですよねー、まあそのあたりは従います」「正直、君たちはかなり重要なメンバーだと思っている、期待している」
そこまで言われると、
うん、そうだ、良い事を思いついちゃったぞっと。
(でもまずは教会に行かないと)
珍冒険談(下ネタ)の次は、
こっちの師匠の思い出話を聞こう。




