第39話 元貴族としてのご挨拶
「ここだねブルスグルク公爵家」
朝食後、今度はファロラと2人だけで訪れた屋敷、
いや朝の散歩は実はここの確認もあったのですよ、
一応、我が辺境伯家と妻の伯爵家、まあ共にもう出ちゃったけど、その領地を更に上から監督するのがこの侯爵家だ。
(王都に来て落ち着いたら尋ねると、事前に手紙は出してある)
もう貴族じゃないから、
あくまでもご挨拶としてね、
教会に対してもだけど、抜けた後も一応の顔見せは必要だ、実家のためにも。
「セルフィ、この鐘を鳴らせば良いみたい」
♪リンリンリンリン!!!!!
「ちょ、乱暴!」
「えー、これくらいしないと気付かれないんじゃ」
「これきっと魔道具だからめっちゃ響い、って飛んできた!!」
いや空をじゃなく、
慌てて急いでやってきたって意味ね、
ちょっと怪しまれたがきちんと挨拶して中へ入れて貰い……
「セルフィ・ボワルネアルーとファロラ・フェルカエールか、久しいな」
「いえ公爵様、もう私共はそれぞれ辺境伯家と伯爵家を出された身、一介の冒険者でございます」
「わたくしも更には教会を円満に出て参りました、貴族でなくなっても夫セルフィを永遠に護ります」
という勇者カップルを前に、
ふむふむという感じのおじさん、
50代で貫録たっぷり、さすが陛下の学友、らしい。
「そうか、実は噂は聞いている、君たちの所にとんでもない回復力を持つ僧侶が居ると」
「あっどなたか治療したい方でも」「居ないと言えば嘘になるな、隠居した執事なのだが」
「それでしたらウチのリムラを、最も簡単な治療ならファロラも出来ますが」「はい、私もある程度は」
僕らも一応は貴族モード、
こうやって畏まるのは最後かもね、
いや陛下に謁見するとかなったらまた別だけど。
「そこでだ、君たち、我が公爵家のお抱え冒険者にならないか?」
「いえ、その、僕たちは王都はあくまでランクを上げに来ただけで」
「形だけ、籍だけで構わない、王都に来るたびに煩い教会の代わりをしてくれるだけで良い」
やっぱりそれが目的かあ、
とはいえ両親の手前、無下にはできない、
それはファロラも同じなんだけれども、でも……
「申し訳ありませんが、教会にも義理立てがあるので、
ただもちろん個人的な依頼があれば優先させて頂きますが、
自分の立場としては、どこかに属するとかいうのは、その、出来るだけ自由にやりたいので」
でないと、
わざわざ貴族や教会を追放扱いにして貰った意味が無い、
何より変に所属するとサキュバスがバレてしまう危険性がある。
(まさか陛下にサキュバスを謁見させる訳にもいかないしなあ)
最高級レベルの王宮神官が見破ったら一発で終わりだ、
サキュバス全員ひっ捕らえられて僕も不敬で……だったら今から、
王宮にだけ事情を説明するという手もあるが、そのあたりどうなるか陛下のさじ加減、悪い方に転ぶ可能性も。
「わかった、とりあえずは様子をみよう」
「ありがとうございます、理解して頂き感謝です」
「とりあえずはグランドダンジョンが不穏な動きをしている報告は受けている、そちらを頼んだ」
さすが公爵、
そういう情報がすでに入っているんだ、
僕らがその調査メンバーに依頼されていることも……?
(だとしたら、行って来いってことか)
まあどっちみち前向きだったし。
「はい、まだCランクのひよっこで、これから研修ですが」
「うむ、頑張ってBランクに上げてくるが良い、期待しているぞ」
「ははっ」「では改めて日時を報せる、その時にまた来てくれ、頼んだ」
ということで、
1回の挨拶で済ませるつもりが、
治療でリムラさんを連れてくるはめに。
(まあ、ウチやファロラの(人間としての)実家が、お世話になってるからね)
それは今後も続く、
だから抜けた身とはいえ、
発つ鳥が後を濁さないようにはしたい、鳥籠に入れられるのは勘弁だけどね。
「ごめんファロラ、流れ的にこうなっちゃって」
「良いのよ、私はセルフィに全面的に従うわ、だって正妻ですもの」
「うん、じゃあ早速戻って、軽く講習を受けて午後から教会だ」「みんな待ってるわ」
ということで、
ハーレム宿へと戻ると……
「ハルク様」「あっルビア」
「割り出して、して参りましたわ」
「あっ、やってきちゃったんだ」「泣きついてきても知りませんわ」
まーた呪いの、
悪夢の犠牲者が1人増えた……
いやほんと、どうするんだろうね、まあいっか。
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