第3話 宿で確認、パーティーメンバーの正体は……
「セルフィ、良い湯だったぞ、やはり風呂は夕食後に限る」
「あっはいシグリヌさん、さすが王都の宿、お風呂がついていて広かったですよね、宿泊客供用だからでしょうが」
「それなのだがチップを払って私達4人だけの時間にして貰った」「言われたら見張りくらいしたのに」「役に立つか?!」
ま、まあ確かに、
勇者としては最弱の僕は、
単体では頼りない、それはわかってはいるが。
「いやその、元聖職者の女性冒険者が4人入ってますよーって」
「そんな顔をするな冗談だ、少なくとも私はセルフィを湯冷めさせたくは無い」
「あ、ありがとうございます」「では今から、私達専用の食事を」「えっもう?! って、他の3人は」「色々と風呂上がりのケアらしい」
女性だからね仕方ないね、
逆にシグリヌさんはあまりそういうのをしないのか、
しても全てにおいてあの素早さだから手際が良いのだろう、にしても相変わらず、身体全体の迫力が凄い。
「とりあえず軽く魔力を分けて貰おう」
「そ、それは良いのですが、ここって4人部屋ですよね?」
「ベッドが4つだが一応、追加の毛布があってそこのソファーでセルフィが寝る建前だ」
宿の主人にそういうことで同室を許されている感じ、
もっと冒険者としてランクが上がり名声を高めれば、
特別なVIPルームとか泊まれるんだろうけれどもね。
「確認なんですが、声は漏れませんよね?」
「もちろんだ、入った早々、結界を張ってある」
「じゃあその」「なんだ、人間体のままでは不満か?」
……どっちでもいいけど一応、
他の3人を待ちたいな、どうせ
『あー、まーた先に始めて!』
とファロラあたりが言いそうだ、
なのでちょっとでも時間稼ぎをしたい。
「いえ、ちょっとお話を」
「なんだ、人間は前後に長話をするのが好きとは聞いてはいたが」
「シグリヌさんは何もかもが早いんですよ」「先手必勝という言葉があってだな」
僕をベッドに押し倒す、
いやそれだけで並の男なら畏怖を覚えそうだ、
冒険者であってもね、でも、お風呂上がりの良い匂い。
「ええっと」「言いたい事があるなら聞こうか」
「いやほんとシグリヌさんって男前の女性ですよね」
「途中の街の大衆浴場でも、人間の女性に取り囲まれたな」
かっこ良すぎるんですよ、
あと貴族っぽい男性に金貨撒かれて
『これで我を踏んでくれっ!!』
とかもあったし、
一応は教会出という立場もあって断ってた、
そんなお金の稼ぎ方をしたくも無いからね、って誰か来た。
「ふう、良いお風呂でしたわ、元の姿で湯に浸かるのは最高でしたわ」
「あっルビアさん!」「なんだルビア、その割には人間の姿で戻ってきたが」
「当たり前ですわ、人間とすれ違う可能性だってありますもの、それよりもう始めますの?」
眼鏡を外すルビアさん、
相変わらず色気が凄いんだよなあ、
魔法使いの女性冒険者って地味なイメージがあるけど、彼女は美人学者風、大きい教会なら名物案内人になりそう。
「僕としてはもう少し落ち着いてからっていうか、シグリヌさん近いです!」
「時間なら、心の準備とかいうのであれば私たちの入浴中、猶予があったはずだが」
「いえ今更そういうのは良いのですが、あっルビアさん」「人間の男性はデリケートなのですわ」「それこそ今更だが」
ルビアさんも僕らのベッドに乗ってきた。
「さて、では勇者の魔力を御馳走に」
「ちょ、ちょっと待って」「お水でしょうか、それとも」
「王都に来ておいて何ですが、改めて確認を、本当に良かったんですか?」
ふうっ、とため息をつくルビアさん。
「良いとか悪いとかいう話ではありませんことよ」
「ま、まあそうなんだろうけど」「合言葉が必要でしたら」
「なんだそんなことか、セルフィ、お前いつから乙女になった」「いやいやいや」
とかやっていると……
「あら~、まだ手を着けていませんでしたか~」
「リムラさん、ま、待っていました」「そうかセルフィ、回復役待ちだったのか」
「確かに私達が、激しいからですわね?」「そういう訳では」「先ほど~、怪我を痛がっていた冒険者の殿方を治療致しました~」
まーたそんな辻治療を、
感謝されるのは良いが引き抜きが面倒なんだよな、
教会出は教会が認めたパーティーにしか入れないっていうのに。
(そのためにも僕が居るんだけれども)
それよりもリムラさんまでベッドに……
さすがに狭いな、と思ったらシグリヌさんが降りて、
離れていた他のベッドとくっつけはじめた、いや凄い力だけど床は大丈夫なのか。
「いや済まない、セルフィはベッド1つでは狭いということを言いたかったのだな、それでか」「え」
「シグリヌさん、勘付いてさしあげるべきでしたわ、シグリヌさんの巨体相手に『ベッドが狭くなる』は言い難いですわ?」
「さすがセルフィ様です~、お心遣い感謝です~」「いやまあ僕は単にその、って4つともくっつけるのお?!」「よし、あと少しだ」
などとガタゴトやっていると……
「あー、まーた先にやってるう!!」
「ファロラ、まだだよまだ」「あら珍しい」
「というか声が大きいぞ、ドアが開いていれば結界も意味は無い」
静かに閉めるファロラ。
「ていうか広く大きなベッドね、ハーレムベッド?」
「ファロラさん、たったいまシグリヌさんが詰めてくれたのよ」
「これで思う存分~、補給できますね~」「そういう事だ、それよりファロラ、遅かったが」
首から勇者の紋章が付いたペンダントを外す。
「絡まれたのよ、変な冒険者の男連中に、どこの娼館から来た、もう終わったのかって」
「あー、この宿でもやっぱそういうの居たんだ、高い宿なのに」「で、紋章見せたら嘘付けっていうから」
「ふむ、一戦交えた訳か」「元神官勇者って言っても信じてくれないから」「勇気ありますわね」「飢えてたんでしょ」
それこそ自分で娼館行けっていう。
「でも~、もし現役の神官勇者様だったら~、全教会出入り禁止になっても、おかしくないでしょ~」
「そうね、でも現役はこんな所に泊まらないでしょうし、元でも女勇者自体が珍しいから気もちはわかるわ」
「だとしてもファロラ、もう出たとはいえあの煩い教会に面遠しは済ませてあるんだから、報告はした方が」「セルフィ、面倒くさいわ、それより」
あーあ4人揃っちゃった、
繋げたベッドの上、中央で取り囲まれた僕、
いつもは真面目な、聖女然とした表情の4人の顔が恐ろしく感じてくる。
「ではセルフィ、魔力の補充をさせて貰おう」
「魔力の面でお腹が空きましたわ、大人しく捕食されてくださいませ」
「本日も~、今回も横になっているだけで構いませんので~、よろしくお願いします~」
そして最後に……
「じゃセルフィ、覚悟は良いわね?」
「……無いって言ったら」「良・い・わ・ね?」
「はいファロラ、その、それじゃあ」「変身を解くわよ」
こうして姿形が変形した彼女達は、
白い角に白い翼、真っ白な肌の……
魔物だった、そう、サキュバス、正確にはホーリーサキュバス……
「今更、緊張はするな、なあに天井を見上げている間に終わる」
「そうですわ、眠くなって寝ても、意識が無くなっても勝手にやっておりますわよ」
「苦しくなったら~、言って下さいませ~、いくらでも回復魔法を~」「それ拷問になる時あるから!」
脱がされる僕、そして……
「それじゃ、い・た・だ・き・ま・す」
覆いかぶさってくるサキュバス姿のファロラを見ながら、
これまでの事を思い出す、そう、どうしてこうなったか、
話は18歳の誕生日、僕が辺境伯家で、父上から命じられた言葉から……始まった。




