表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/41

第四十一話「カーカラシカの焦燥」



 地球、カーカラシカ皇宮。

 重苦しい空気が、会議室を支配していた。

 円卓を囲むのは、カーカラシカ五大家の当主たち。

 そして上座には、女帝ニーナが、鋭い眼光を放っていた。


「で?」


 ニーナの声は、氷のように冷たかった。


「梅子の居場所が判明したというのは、本当なのね?」


 サヤカが、緊張した面持ちで、頷いた。


「はい。キヨシから報告がありました。ウメ・ボムという名前を使って、自由主義連盟の防衛軍に所属しているようです」


「ウメ・ボム……」


 女帝が、眉をひそめた。


「しかも」


 サヤカが、続けた。


「シオンのコンサート会場に現れた偽パニッシャーを撃退したのも、どうやら梅子のようで……」


 バン!


 女帝が、机を叩いた。


「あの子は、一体何を考えているの!」


 イシュタル家の当主が、恐る恐る口を開いた。


「陛下、梅子様の回収を、急がなければ……」


「分かってるわ!」


 ニーナは、苛立たしげに髪をかき上げた。

 七十を超えているとは思えない若々しい姿だが、その表情には、深い疲労が滲んでいた。


「問題は、どうやって連れ戻すか、よ」


 ベオルブ家の当主が、咳払いをした。


「デストロイヤー殿に頼むのは、如何でしょう。彼なら自由主義連盟に、顔が利きます」


「ダメよ」


 ニーナが、即座に否定した。


「ブリオンの使徒に梅子の存在が知られたら、それこそ、最悪の事態になる」


 実際、梅子の存在が秘匿されてきたのには、理由があった。

 生まれた時から、異常に高い法力。

 わずか五歳でエネルギー値が一万を超え、十歳で、二万。

 そして現在は――。


「三万近いエネルギー値……」


 ナブ家の当主が、震え声で言った。


「もし、敵の手に渡れば……」


「分かってる!」


 ニーナが、立ち上がった。


「だからこそ、十八歳まで瞑想の星で秘密裏に育てたのよ。先月の誕生日に全てを明かして、正式に後継者として迎える予定だったのに!」


 彼女は、窓の外を見つめた。


「竹彦は?」


「偽パニッシャーの対応で、手一杯です」


 ラムザが、答えた。


「各地で破壊活動を行っていて……」


 偽パニッシャー。

 竹彦のクローン体。ブリオンの使徒が、過去の医療記録から作り出した、劣化コピー。本物には遠く及ばないが、それでも一般人から見れば、化け物だ。


「厄介ね……」


 ニーナは、深いため息をついた。


「それに、シオンも狙われた。情報が漏れているのよ」


 会議室が、静まり返った。

 カーカラシカ皇族の情報が、敵に漏れている。それは内通者の存在を、示唆していた。


「とにかく」


 ニーナが、決断を下した。


「梅子を今すぐ、回収しなさい。自由主義連盟の本部近くにいるなら、場所の特定は難しくないはず」


「アンナムに連絡します」


 サヤカが、端末を取り出した。


「キヨシなら――」


 *


 その頃、アンナムの本部では――。


「無傷で捕まえろ、か」


 キヨシが、資料を見ながら、苦笑いを浮かべていた。

 写真に写る、梅子の姿。あの時会った、地球人の女の子。


「竹彦に子供がいないわけ、ないよなあ……」


 独り言を、呟く。

 竹彦には三人の妻がいる。そのうち松子との間に子供がいないと聞かされていたが、どう考えても、嘘だとはおもっていた、あれだけ仲が良くて子供が一人もいないっていうのは少し奇妙だとは思ってた、ほかの奥さんとは作ってるのに。しかも家出していたとは…。


「しかも、エネルギー値、三万……」


 キヨシは、頭を抱えた。

 前に会った時、確かに尋常じゃない気配を感じた。でも、三万とは。


「無傷で捕まえられるわけ、ないだろ……」


 マリアが隣で、鼻息を荒くしていた。


「あなた、頑張って。カーカラシカに恩を売るチャンスよ」


「簡単に、言うなよ……」


 キヨシは、立ち上がった。でも、やるしかない。


「部隊を編成する。最精鋭を集めろ」


 命令が下され、サムライたちが、動き始めた。


 *


 一方、自由主義連盟の本部星では――。


 梅子は、宿のベッドで寝転がっていた。

 姉との騒動から、数日。まだ興奮が、冷めない。


「シオン姉さん、怒ってただろうなあ……」


 でも、少し嬉しかった。

 家族が、自分を探してくれている。心配してくれている。


 ドアが、ノックされた。


「梅子、起きてる?」


 ラエルザの声、だった。


「うん、どうしたの?」


「なんか最近、変な噂が、あるんすよ」


 ラエルザが、入ってきた。心配そうな顔を、している。


「地球人を探してる集団がいるって」


 梅子の顔が、固まった。


「え?」


「それも、かなり本格的に。何か心当たり、あります?」


 梅子は、首を振った。

 でも内心では、分かっていた。

 家族だ。

 とうとう本格的に、動き出したのだ。

 姉の経済力からすれば、家出した自分を捕まえるために芸能界の人間を動員することなどたやすいだろう。この奇妙な逃避行が終わりを迎えつつあるような気がしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ