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オレは貴族の女子高生。  作者: Cookie
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9/17

加速する疑念と、迫る学園祭

舞踏会での「聖人による浄化」というパフォーマンスは、王都の貴族たちに強烈なインパクトを与えた。ハインツエッジ家の令嬢フィリアは、もはや単なる公爵令嬢ではなく、「聖人の寵愛を受ける特別な存在」として一躍学園の頂点に君臨した。


しかし、その栄光の裏側で、フィリップは静かな恐怖を感じていた。


(カインドの魔力が、俺の身体に馴染みすぎている……。まるで、俺の魔力回路そのものが、あいつの操り人形に作り変えられたみたいだ)


その違和感は、フィリップの魔力操作に以前とは違う「鋭さ」を与えていた。

学園祭に向けた魔法実技の訓練中、フィリップが軽く風を操るだけで、周囲の風景が歪むほどの威力を発揮するようになったのだ。


「……ねえ、フィリア様。最近、少し雰囲気が変わったと思わない?」


休憩中、以前の対戦相手であるセシリアが、不敵な笑みを浮かべて近づいてきた。彼女は舞踏会での騒動を疑っている派閥の一人だ。


「そうかしら? 聖人様に浄化していただいたおかげで、少し魔力が澄んだのかもしれませんわ」


「そうね……でも、私には見えるわ。あなたの魔力の奥底にある、あの『冷たい輝き』。……あれは、女の魔力じゃない。まるで、戦場で幾多の命を狩り尽くした、強者のそれよ」


セシリアの鋭い指摘に、フィリップは心臓が凍りつく。

(バレている。……いや、感づかれている)


「……何を仰りたいのですか、セシリア様」


「何も。ただ、学園祭の魔法競技会決勝戦が楽しみだと言っているのよ。……私の持てるすべてを使って、あなたの『仮面』を剥がしてあげるわ」


セシリアの背後には、裏金ルートを握る理事長からの指令があるはずだ。彼女はフィリップを暴くための「捨て駒」として、禁忌の魔道具を与えられているに違いない。


一方、フィリップの耳元に、風に乗ったカインドの声が響く(魔力による遠隔伝声だ)。

『フィリップ。学園祭までに、理事長の裏金をすべて白日の下に晒せ。それができれば、貴様の素性を守るための「嘘」をもう一つ上塗りしてやる』


(……相変わらず、無茶を言う)


フィリップはエリザの隣で紅茶を飲みながら、学園祭の準備表を眺める。

表では学園祭の出し物、裏では理事長の不正摘発、そして目の前では正体を疑うライバル。


(……忙しすぎるだろ、この女子高生生活)


フィリップはふと、学園の窓から見える孤児院の方角を見やった。

「血筋じゃなく、生き方で証明する」と決めたあの日から、俺は確かに少しずつ強くなっている。だが、その代償として「本来の俺」がどんどん薄まっていくような恐怖もある。


学園祭まで、あと一週間。

フィリップは、自分が「令嬢」として学園祭を成功させるべきか、それとも「工作員」として理事長を失脚させるべきか、その両方を選ぶという茨の道を選ぼうとしていた。

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