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オレは貴族の女子高生。  作者: Cookie
7/10

初めてのドレス

翌日。


フィリップ――いや、フィリアは鏡の前で硬直していた。


目の前には豪華なドレスが並んでいる。


白。


青。


桃色。


紫。


金糸で刺繍されたものまである。


「どれも高そうだ……。」


孤児院育ちのフィリップには値段の想像すらできなかった。


一着で家が建つのではないかと思うほどだった。


「本日は採寸とドレス選びを行います。」


セバスチアンが優雅に一礼する。


「採寸?」


「はい。」


「ドレス選び?」


「はい。」


「俺が?」


「フィリア様がです。」


フィリップは頭を抱えた。


最近、自分が誰なのかわからなくなってきた。


そこへエリザが飛び込んできた。


「フィリア!」


「お、お姉様。」


「今日は姉妹にとって大切な日です!」


「そうなんですか?」


「初めて一緒にドレスを選ぶ日です!」


「そんな記念日聞いたことないです。」


エリザは満面の笑みだった。


その後ろからザッケリンも現れる。


「うむ!」


「公爵様。」


「御父上だ。」


「まだ慣れません。」


「フィリアよ!」


「はい。」


「遠慮はいらん!」


ザッケリンは胸を張った。


「この屋敷の予算の三割までなら好きに使え!」


部屋が静まった。


エリザも固まる。


セバスチアンも固まる。


「旦那様。」


「なんだ。」


「国家予算並みになります。」


「そうか。」


「そうかではありません。」


フィリップは思った。


この人はたぶん金銭感覚がおかしい。


そこへ。


「朝から騒がしいな。」


黒ローブの少年。


カインドが現れた。


エリザが慌てて立ち上がる。


「猊下。」


「おう。」


カインドはフィリアを見る。


数秒沈黙。


さらに数秒。


「……。」


嫌な予感がした。


「そのドレス全部却下。」


「まだ着てませんよ!?」


「なんか違う。」


「なんですかその理由!」


カインドは腕を組む。


「フィリアはな。」


全員が耳を傾ける。


「もっとこう。」


真剣な顔。


「強そうな服がええ。」


全員沈黙。


「女学院ですよね?」


フィリップが確認する。


「せや。」


「戦場じゃないですよね?」


「せや。」


「なんで強さを求めるんですか。」


「強い女はモテる。」


「どこの価値観ですか。」


エリザが咳払いした。


「猊下。」


「なんや。」


「女学院では可愛らしさも重要です。」


「知らん。」


「知ってください。」


珍しくエリザが反論した。


カインドは不満そうだった。


「じゃあ本人に選ばせたらええやん。」


その言葉で全員の視線がフィリップへ向く。


「俺ですか?」


「フィリアです。」


エリザが訂正する。


「フィリアですか……。」


フィリップは並んだドレスを見つめた。


正直わからない。


だが。


一着だけ目に留まるものがあった。


白薔薇の刺繍が施された淡い青色のドレス。


派手すぎない。


それでいて美しい。


「これ。」


エリザの顔が明るくなる。


「素敵ですわ!」


ザッケリンも頷く。


「我が家の白薔薇に相応しい!」


セバスチアンも微笑んだ。


「お似合いになるでしょう。」


カインドだけが腕を組んでいる。


「弱そう。」


「もういいです。」


フィリップは諦めた。


その後。


採寸が始まった。


肩幅。


腕。


脚。


身長。


次々と測られていく。


そして。


「……。」


メイドたちが何かを相談し始めた。


「どうしました?」


一人のメイドが答える。


「フィリア様。」


「はい。」


「脚が綺麗すぎます。」


「はい?」


「大変です。」


「何がですか。」


「学院で人気が出ます。」


「意味がわかりません。」


エリザが真剣な顔で頷いた。


「確かに。」


「お姉様まで!」


ザッケリンも腕を組む。


「心配だ。」


「何がですか!」


カインドが一言。


「襲われんように気をつけろ。」


「女子校ですよね!?」


誰も答えなかった。


フィリップは初めて気づく。


もしかすると。


女子校は安全な場所ではないのかもしれない。


そんな不安を抱えながら、


未来の公爵令嬢フィリア・ハインツエッジの準備は着々と進んでいくのだった。

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