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オレは貴族の女子高生。  作者: Cookie
6/10

淑女養成計画

翌朝。


フィリップは見知らぬ天井を見上げていた。


ふかふかのベッド。


広い部屋。


高級そうな家具。


窓の外には美しい庭園が見える。


孤児院とは比べ物にならない環境だった。


「……夢じゃないよな。」


昨日起きた出来事を思い出す。


公爵家。


出生の秘密。


暴君カインド。


そして――


女子校入学。


「夢であってほしかった。」


フィリップは頭を抱えた。


コンコン。


部屋の扉が叩かれる。


「フィリア様。お目覚めでしょうか。」


セバスチアンの声だった。


「はい。」


「失礼いたします。」


扉が開く。


セバスチアンの後ろには数人のメイドがいた。


全員が何かを抱えている。


大きな箱。


長い布。


化粧道具。


靴。


アクセサリー。


嫌な予感しかしない。


「本日より淑女教育を開始いたします。」


「やっぱり。」


メイドたちが一斉に頭を下げた。


「フィリア様、お着替えを。」


「待ってください!」


フィリップは慌てて立ち上がる。


「男ですよ俺!」


「存じております。」


「なら何で平然としてるんですか!?」


「問題ありません。」


問題しかない。


セバスチアンは真面目な顔で続けた。


「我が公爵家は不可能を可能にしてまいりました。」


「意味がわかりません。」


「女学院入学程度で今さら騒ぐ必要はありません。」


「十分騒ぐべきです!」


メイドたちは慣れた様子でフィリップを囲む。


「失礼します。」


「ちょっ――」


数十分後。


大きな鏡の前。


フィリップは呆然としていた。


そこに映っていたのは。


赤毛の美少女だった。


肩まで伸ばされた髪。


白い肌。


上品なドレス。


整った顔立ち。


どう見ても貴族令嬢である。


「誰だこれ。」


「フィリア様です。」


「俺だよな?」


「はい。」


「俺なのか……。」


フィリップは複雑な気持ちになった。


エリザが部屋へ入ってきた。


そして固まった。


「……。」


「……。」


「お姉様?」


フィリップが恐る恐る言った。


次の瞬間。


エリザは顔を真っ赤にした。


「かわいいですわぁぁぁぁ!!」


抱きつかれた。


「ぐえっ!」


「お人形さんみたいです!」


「離してください!」


「無理です!」


「なんで!?」


エリザは興奮していた。


「学院中の殿方が恋に落ちますわ!」


「女子校ですよね!?」


「そこは気にしないでください!」


「気にします!」


大騒ぎである。


その時。


部屋の扉が開いた。


「朝から元気やな。」


カインドだった。


黒ローブ姿のまま入ってくる。


フィリップを見る。


数秒沈黙。


さらに数秒。


「……。」


「……。」


「どうですか?」


エリザが尋ねる。


カインドは真顔だった。


「アカン。」


全員が固まる。


「どこか変ですか?」


「可愛すぎる。」


部屋が静まり返る。


「は?」


「これ学院入れたら目立つやろ。」


「そこですか!?」


「もっと地味にせな。」


「そっちですか!?」


カインドは真剣だった。


「お前、顔面偏差値高すぎるねん。」


「知らないですよそんなの!」


「父親似やな。」


「嬉しくない!」


カインドは椅子に腰掛ける。


そして指を鳴らした。


「今日から教育や。」


セバスチアンが深々と頭を下げる。


「お任せください。」


「まず歩き方。」


「はい。」


「次に言葉遣い。」


「はい。」


「ダンス。」


「はい。」


「礼儀作法。」


「はい。」


フィリップは青ざめた。


「いつ終わるんですか?」


セバスチアンは優しく微笑む。


「入学式まで毎日です。」


「終わらないじゃないですか!」


こうしてフィリップ改めフィリアの、


地獄の淑女教育が始まったのであった。

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