赤毛の暴君
ティーカップを手にしたカインドは、つまらなそうにクッキーを齧った。
「さて、どこから話したもんかな。」
フィリップは身を乗り出した。
「父さんのことを教えてください。」
カインドは鼻で笑う。
「父親なんて言い方はやめとけ。夢が壊れるぞ。」
「……。」
「お前の父親、エルミナンドはな。」
そこで一度言葉を切った。
「世界最悪の問題児や。」
フィリップは固まった。
ザッケリンが頭を抱える。
「猊下、それでは何も伝わりません。」
「事実やろ。」
「事実ですが。」
「ならええやん。」
フィリップは嫌な予感しかしなかった。
カインドは紅茶を飲む。
「強かった。」
一言だった。
「今でもワシより強いかもしれん。」
部屋が静まり返る。
フィリップは驚いた。
カインドは勇者パーティーの一員であり、聖人と呼ばれる存在だ。
その人物が認めるほど強い。
想像が追いつかなかった。
「だが性格は終わっとる。」
「そんなにですか?」
「そんなにや。」
カインドは即答した。
「喧嘩を売る。」
「はい。」
「王様にも売る。」
「はい?」
「神にも売る。」
「はい?」
「魔王にも売る。」
「はい?」
「ワシにも売った。」
「はい?」
フィリップは頭が痛くなった。
どうやら父親は想像以上の人物らしい。
エリザがおずおずと口を開く。
「ですが、お父様は優しい方だったと聞いております。」
「誰からや。」
「お母様からです。」
「嘘やな。」
即答だった。
ザッケリンが咳払いする。
「猊下、もう少しフォローを。」
「しゃーないな。」
カインドは頬杖をつく。
「エルミナンドは気に入った奴には甘い。」
「甘い?」
「家族とか仲間とかな。」
「……。」
「だから世界中に敵を作っても仲間は多かった。」
それは少しだけ救いだった。
フィリップは胸を撫で下ろした。
「じゃあ、どうして俺は捨てられたんですか?」
部屋が静かになった。




