表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オレは貴族の女子高生。  作者: Cookie
PR
14/17

聖人の告白、王国の原罪

禁書庫に流れる張り詰めた空気を切り裂くように、カインド・ピースフルはゆっくりと歩み寄った。その手には聖剣はなく、ただ一冊の古い日誌が握られている。


「歴史は勝者が書き換える。……貴様が読んだその羊皮紙は、権力者たちが都合よく改竄した『公式の嘘』だ」


カインドが投げた日誌を、フィリップは受け止めた。それは当時の王宮直属の聖騎士であった男の記録――若き日のカインド自身の直筆だった。


「二十年前、我ら勇者パーティーは『魔王討伐』という大義を掲げた。だが、当時の王は『魔王と手を取り合って新たな秩序を築く』と公言していた。……我らは騙されていたのだ。『魔王=絶対悪』という教義を盲信し、救世主であると信じ込んで、世界で最も慈悲深き賢王を手にかけた」


カインドの黄金の瞳が、過去の追憶に曇る。


「我らは英雄となった。だが、その裏で国は腐敗し、血の継承が始まった。……私が今、この国で『処刑人』として振る舞うのは、己の罪を背負い、かつて救うべきだった王の血筋を絶やさぬようにするためだ」


フィリップは絶句した。カインドがこれまで自分を殺さず、泳がせていた理由。それは、監視や粛清のためだけではなかった。彼自身もまた、過去の過ちに縛られた「亡霊」だったのだ。


「貴様は、その王の唯一の生き残りだ。今の王家は貴様の存在を知れば、世界を滅ぼしてでも貴様を消そうとするだろう」


カインドはフィリップの肩に手を置いた。その手は、以前のような冷徹なものではなく、どこか震えていた。


「フィリップ。私と一緒に、この腐敗した王国を終わらせないか。……王として君臨するのではない。この国の『システムそのもの』を破壊し、人々が本当の意味で自由に生きられる世界を作るために」


エリザが静かにフィリップの隣に並び、その手を取った。彼女の瞳には、カインドの言葉に対する疑念と、フィリップを信じるという強い意志が同居している。


「フィリップ、私はあなたの隣にいるわ。……たとえカインド様が、私たちを切り捨てる日が来るとしても」


フィリップは深く息を吐き出し、コンパクトを握りしめた。

カインドという強大な共犯者を得た今、フィリップの「偽装」は、もはや国を騙すためのものではなく、王国を根底から覆すための「最強の武装」へと昇華しようとしていた。


「……わかりました。カインド様。俺は、公爵令嬢として、そして貴方の『毒』として、この国の心臓を止めてみせます」


地下書庫の影で、少年、公爵令嬢、そして聖人が手を組んだ。

王国の滅びと、新たな世界の胎動が、この瞬間から始まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ