始まりのはじまり5
そういえばさやか、急で悪いが明日別邸で催しがある。それに参加してくれ」
「催し?何の催しなの?」
「簡単に言ったら顔合わせだな。ただ神使に対応できるものを集めるもの。もちろん検使庁の者も来る」
「ほんとですか!おじさま、その催し私も参加してもよろしいでしょうか!?」
ここで京ちゃんが真剣な顔でお父さんに聞いてきた。
「かまわないが…ああ、検使庁の者が来るからか」
「はい」
お父さんも京ちゃんが検使庁に入りたいことを知っている。そのためその食いつきから想像できたのだろう。
『検使庁』
国家公安委員会の一つ。
警察庁の上に立つ組織であり、内閣府の下についている。そして主な組織行動は・・・
神使の討伐。
それ以外にも様々な役目があるがそのすべてが国にとって重要事項であり、ほとんどの構成員が能力者である。そのため大きな権力を持っており、その力は一国の軍隊にも匹敵するといわれている。
「わかった。検使庁のものは数人しか来ないと聞いてるが19時からだよ」
「ありがとうございます!」
「で、お父さんどうして私もなの?魔法とかも使えないのに……」
正直そのような催しには興味がない。しかも参加者のほとんどが能力者なら居づらくて尚更だ。
「うん。実は私もそう思ったのだが、検使庁からぜひ顔を見てみたいという申し出があったのだ。裏があるかもしれないがそれぐらいだったら断る理由もないからね。ということで頼むよ」
「検使庁から?どうして…」
「……」
私はこの時どうしようもない不安を拭い去ることができなかった。
そして、そんな私の知らないところで京ちゃんも静かに考えごとしていた。
―ゴトゴトゴトー
「ん?地震か?」
テーブル上のティーカップから見て地震なのは間違いない。が、あまりにも奇妙な揺れだったのでお父さんが周りを見渡している。
そして、私だけでなく、京ちゃんやお母さんも同じように警戒し始めた。
なぜなら魔法がある今、地震が人工的に行われてもおかしくはないからだ。
しかも地鳴りによる空気振動が広範囲に広がっていく感じだ。
そうしていると屋敷のほうからスーツを着た数人の男がこちらに向かってきた。
ただ、この人たちは怪しいものではなく、うちで雇われている能力者の護衛だ。
そして、お父さんは護衛の男たちの状況を聞いていた。
「何が起きている?」
「今別邸のほうで大きな『陣』のようなものが地面に浮かび上がっています」
「大きな『陣』?」
「はい、私どももあのようなものは初めて見るもので正体不明です。ですから至急、避難をお願い致します」
「いや、もしそれが危険なものだったら住宅街ではないとはいえ何とかしなくてはならない。ここには使用人たちもいる。急いで別邸に向かう」
「しかし…」
「私は屋敷の主として役目を果たさなければいけない。もちろんこれで私に何かあっても君たちのせいではないよ」
「…かしこまりました。ご案内します」
お父さんは護衛の方と話が終わったのか、こちらに向き直った。
「さやかたちはすぐに非難してくれ。私は地震の発生源に…」
『私もいく』わ』
私と京ちゃんは同時に言葉を放ち、お父さんの言葉を遮った。
「ダメだ。おそらくこれは魔法の一種だろう。さやかたちを連れて行っても意味がない」
「でも、もしそれが広範囲型の魔法だったら意味がないでしょ。それに私や京ちゃんは現役の学生。その陣を見たら何かわかるかもしれないよ」
魔法には規模の大きい力が作用するものがある。この揺れからその可能性は十分にある。
しかし、これは正直苦しい言い訳だ。
護衛の方々はいわゆるプロだ。学生の知識などたかが知れたものだろう……。
それでも、なんだか私はそこに行かなくちゃいけない気がする……。
「…おじさま、私たちも引く気はありませんし、時間もありません。ここで議論している余裕はありませんわ」
京ちゃんは恐らく興味半分だろうが、二人の頑な態度に何を言ってもダメかとお父さんは悟ったようだ。
「ハア…わかった。ただ指示には従ってくれよ。由香里、君は避難を」
「わかったわ…二人とも気を付けてね…」
「うん!『はい!』」
「よし。急ごう」
そして私たちは護衛の方々を先頭に問題の場所へ向かった。




