始まりのはじまり4
『神使』(カミツカイ)
その昔、文字通り神の使いとされていた。
だが、それが現れるのは神の祝福などではなく、神の怒りとされていた。
いつから存在していたのか正確にはわからない。ただ靄にも獣にも見え、現れては人の魂を奪っていく。ただそれだけ。
自らは暴れて民家を壊したり、供物を求めたりもしない。
言葉を交わした事例もなく、ただの天災として扱われてきた。その証拠に歴史的遺物には絵や言葉でその存在が確認されてきたからだ。
その実1000年以上昔からとされている。
庭園で4人はそのままお茶を楽しんでいた。
「そういえば京香ちゃんは彼氏とかはできたの?」
「ゴフっ!」
由香里、お母さんの唐突な質問に京ちゃんはまたもやむせていた。
「ゲホゲホッ。おばさま何でそんな急に?」
「だってうちのさやかは全くそんな話をしないから仲のいい京香ちゃんはどうかなと思って」
「ゴフッ!」
今度は私がむせてしまった。
「オホン。まったく、そういう話は私のいないところでしてくれないか?」
笑顔で質問してきたお母さんをよそにお父さんは気まずそうにしていた。
「まあまあ。あなたも気になっているでしょう。娘たちもいい年頃なんですから~」
そう言われてお父さんは何も言えなくなってしまったようだ。
「で、どうなの京香ちゃんは?」
「今のところはそのような方はいません。もちろんいい方がいれば話は違ってきますけど」
「まあ…それは意外ね。そんな立派なものがあるなら言い寄る男の子も多いでしょう?」
そう言い、お母さんはニヤケ顔で京ちゃんの年齢にそぐわないほど大きな胸に目線を向けていた。
「そ、そうでもないですわ。た、確かに交際を申し込んでくる男もいますけど、どうもその…体目当てのような気がして……」
京ちゃんは色香があるけど、逆にそれをコンプレックスに感じてしまっているところがある。そのせいか、男性との交際が今まで一度もないほどだ。
「そうなの…大変ね。さやかも私の遺伝子を受け継いでいるなら将来楽しみなんだけど…」
そう言い、次は私の胸を見てきた。
そう。今の服装からはわかりにくいがお母さんも実は大きい。いわゆる隠れ何とかというやつだ。
「そ、そんなに小さくはないよ!友達の中では大きいほうなんだから!」
そう言い自分の胸をチラ見しながら言った。
「そうですよ、おばさま。さやかも大したものですよ。それに殿方からも結構人気なんですから」
「それは本当かな京香ちゃん?」
さらにはここぞとばかりに京ちゃんは対象を私を移すように誘導してきた。
そして、ずっと沈黙を貫いていたお父さんが娘に男の気配があるという話が出た途端にすばやく話に入ってくる。
「ええ本当ですわよ。前に同じクラスの子に告白されていましたから」
「ちょっと!京ちゃん!」
なんと、とんでもない爆弾を投入されてしまった。あとそのニヤケ顔やめて…。
「本当かいさやか?」
「あら?それは初耳ね?」
もう体が熱くなって恥ずかしくてしょうがなかった。
なんで親の目の前で狼狽しなくてはいけないのか…。
「ほ、本当だけどお断りしたわよ。だから今は私もそんな人はいないの!」
「そうかい」
「あら~それは残念ね~」
お父さんは少しホッとしたような感じで、お母さんは明らかに面白がっていた…。
「しかし、京香ちゃんの家ではお見合いのような話は出てこないのかい?うちはそういう話は全部お断りしてるんだが…」
ここにきて初めてお父さんが話題をふってきた。
「え?そんな話がきたことあったの!?」
「ああ。お前に魔法が使えなくてもうちとの繋がりができることにメリットを感じるものが存外多くてね。もちろんそんな奴らは門前払いしてるが」
「そ、そう。ならよかった」
「それにお前にはまだ早いと考えている」
「それはそれでそのうち困るんだけど…」
家族話をよそに京ちゃんは少し短い溜息をしていた。
「…私の家では今のところそのような話はありませんわ」
ただ…と京ちゃんは話を続けた
「昔そのような話がありまして、一度はなかったことになったんです。ただ最近になってその話を蒸し返すような噂があると数少ない使用人から聞いたんです」
「…そうか。それはあいつにも中々聞きにくいだろうね。今度会うときそれとなく聞いてあげるよ」
あいつとは京ちゃんのお父さんのことだろう。うちのお父さんとは旧知の仲らしい。だからこそ京ちゃんとは幼少期から知り合うことができ、もう一人の娘という感じで可愛がっていた。
「おじさま…ありがとうございます。是非ともお願い致します」
「これも気にしないでくれ。私が話を持ち掛けておいてなんだが、この話はここまでにしよう」
お父さんは京ちゃんを気遣い、話を次の話題にかえた。




