始まりのはじまり3
そこは先ほど見えた豊かな緑に日の光が反射している池、赤いカーペットのようなものと日影用の大きな傘が見える。日本式のお茶の場だ。
それ以外にも如何にも高価そうなテーブルとイスが複数置いてある。
そしてそのイスに座っているスーツ姿の男性と純白のブラウスにロングスカート女性の影が見えた。
「おや、さやか。もう学校は終わったのか」
「おかえりなさい、さやか」
黒条琢磨
黒条由香里
黒条家の現当主とその妻だ。二人の年齢は40代だが、琢磨は年齢よりも若く見え、由香里は年齢を聞かなくてもいいほど端麗だ。
「京香ちゃんもいらっしゃい」
二人は穏やか笑顔で二人を迎えた。
「ただいま」
「おじさま、おばさまお邪魔いたしますわ。先日はご挨拶もできず申し訳ありません」
「京香ちゃん気にしないでくれ。さあ二人ともお茶にしよう」
どうやら琢磨は二人の後ろから文代さんがお茶を運んでくるのが見えたので席に座るように促した。
そのまま文代さんは私たちの分のお茶を準備をしてくれて、静かに下がっていた。
「それではいただきます」
二人は席に座り京ちゃんが挨拶をしてお茶をいただいた。
「お父さん、お母さんごめんなさい。今回もダメだった」
「ゴフッ!」
さやかが話題に出るであろう内容の返答を直球で言ったので京ちゃんがむせていた。
「ん?ああ、そうか。プログラムはダメだったか。しょうがない、また次回頑張りなさい」
「そうよ。それにもう魔法にこだわらくてもいいのよ…」
二人は京ちゃんのむせている姿をまったく気にせず、お父さんは笑顔で答えお母さんは少し怯えた表情で答えた。
まるで娘の結果がこれでよかったと思っているかのようだった。
「うん、そうだね」
そしてさやかも二人の表情の差に気づいていたが、それを不思議には思わなかった……。
「そ、そうだわ。おじさまは本日のお仕事はもう終わりましたの?」
嫌な雰囲気になりそうだったので、さやかが先ほど言ったように和ます役目に入った。
「一応ね。一番の本題だった『神使』の『会議』で全然内容が決まらなくてね。また中断のうえに日を改めてってことになったんだ」
「そうなんですか。相変わらず『上層部』の方々は口だけのようですわね」
「そう言われては返す言葉もない。まあ私も具体的な案を出すことができなかったのだが」
「おじさまは悪くありませんよ。『上層部』はもっと『検使庁』に力を入れるべきだと気づくべきです」
『上層部』とは一つの組織を指す言葉ではない。
国に影響力のある人たちの集まり。国家権力をもつ政治家などはもちろん経済・外交・法律など国というものを運営するために必要な大物達のことをさす。
そして、その集まりを『会議』と隠語で呼ばれ、そこでは様々なことが決まり、国会議事堂で議論される法案よりも重大な内容も決まることもある。
「でも『神使』の議論なんてもう何百年もしてきたことでしょ。大したことなんてもう決まらないじゃない」
さやかも話に混ざり、お茶を飲み始めた。
「はは。そうかもしれない。だがその何百年も議論がされてる話題が二つあるだろ」
さっきまで笑顔を絶やさなかった琢磨は真剣な顔になって言う。
「『神使』は一体どこからきて、どうして能力者の魂を奪うのか…。そして、どうやったら根絶することができるのか……」
「…それじゃ三つじゃない」
「はは。そうだね」




