始まりのはじまり
西暦2055年
この世界には不思議な力が存在する。
それはこの地球というマクロな単位のみだけでなく、人というミクロな単位にも当てはまる。
だが、この世界は不平等であった。
地球には不思議な力が存在する。しかし、その恩益が確認されているのはある一国のみ。
日本。
この国は世界からの独立を図り、世界から大きな嫉妬を受けていた。
ただ世界は知らない…
この力、『魔法』というものがいいことばかりではないことを…
「ハア…またダメだった…」
「こればかりはしょうがないわね」
とある高等学校の中庭。
お昼過ぎ、制服に身を包んだ女子生徒二人がベンチに座りながら、たわいもない会話をしていた。
ただその雰囲気は花があるものではなく、片方の女生徒がいかにも落ち込んでますという空気を作り出していた。
「どうして私には魔法が使えないのかな…」
そうつぶやいているのは身なりの整った制服に肩まである茶髪の少女。すらっとした体系で可憐さがある美少女と言うべきだろう。
「そんな簡単なものじゃないでしょう。そう考えてるのもあなただけじゃなくて数多大勢いるんだから」
そして肩を並べて答えているのは金色の長髪に色香のある少女。ただ座っているせいでわかりにくいが、身長も女性としては高く170近くはある。そして胸部の膨らみには男性だったら自然と目移りしてしまうほどだった。
そんな彼女を少し見上げた茶髪の少女、黒条さやかは不満そうながらも気を取り直した。
「そうだね。まだ魔法プログラムを受ける機会もあるし、そのうち発現する可能性もあるよね」
「そうそう。全学校で行われているんだから、これも学生の特権よ」
魔法プログラム、これは授業カリキュラムの一つであり、魔法の発現もしくは強化訓練する時間だ。
そして、このカリキュラムで能力発現する事例も多く、この機会を学生は貴重なものとしていた。
だが、これも学生まで。成人になれば、この機会はない。なので、卒業後に魔法が発現することが稀であるとされている。
「それに、さやかはさ魔法使えなくてもいいんでしょ?」
「まぁそうなんだけど、でも家柄的にはちょっと良くないじゃない?」
「そーお?もう黒条家としては気にしてないならいいじゃない」
「うん…」
私は親の優しさに恵まれた。
『財閥一家』、私はその俗語を生まれながら背負っている。そして魔法が使えないというのは今の時代不名誉の一つになる。しかし、これが一般家庭の育ちだったら違ったかもしれない。
魔法が使えるもの、『能力者』は今の日本でも多くはない。だからこそ力の象徴になる。
現在、国に影響力を持つものが能力者に占められていることもあり、経済影響の大きい私の家で能力者でないものは対外的にはよくない。
だが、そんな私を両親や叔父は優しく励ましてくれた。
もちろん、他にも理由があるけど…。
「京ちゃんはいいよね。もう魔法も発現してるし、やりたいことも決まってるから」
「まあね!だから、今日さやかの家に行っていい?授業も午前中までだしさ!」
金髪の彼女、奥黄京香は先ほどの雰囲気を払拭するようにさやかに話を持ち掛けた。
人にもよるが魔法プログラムは心身に疲れ及ぼすことがある。なので、学校では半日授業になることが多い。だが、この時二人にその影は見当たらなかった。
「え?でも今日習い事があるって言ってなかった?」
「別にいいよ。さやかも言ったでしょ。もう私にはやりたいことが決まってるんだら。
『検使庁』に入る!だから今更習い事なんて意味ないの」
京ちゃんの家も私と同等以上の家柄の出。なのでそういった習い事をさせているらしい。
それに彼女には見た目的には似合っていると思う。
奥黄京香には海外の血が四分の一入っている。
数十年前、まだ日本に入国することが難しくなかった時代、彼女の叔父が日本国内でも大層な大金持ちだったそうだ。そして、そのまま日本の国籍を取得し日本人女性と結婚。そして京ちゃんのお父さんが生まれたと前に聞いたことがあった。
ただ、その時京ちゃんのお父さんちょっと気難しい人だとも聞いてる…
「わかった、わかりました!だけど家には連絡しといてよね。後で大変なことになるから」
彼女がこう言ったら聞かないことはわかってる。こう見えても幼少期からの付き合いだからだ。
「はーい。じゃあ早速いきましょ!」
「はいはい……」
二人は立ち上がり校門に向う。そして、そこには呼んでもいないのにリムジン型の黒い高級車が止まっており、それが当たり前だと言わんばかりに女子たちは車に乗り込んでいった……。




