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カジノ ─ Casino ─  作者: くどい
四章 Y2K RebellioN
71/99

4-20 壱拾四話 ニアリーイコールアイソトープ 5


 簡素ながら因果律的(エントロピー)に最も確実な方法で、カキツバタと呼ばれた兄妹との

契約を交わした後、我々は最重要人物であるヒビヤミサキを村瀬から守護する為

夜半の東北自動車道を一路北上する。


 宮城へ向かう車中で、時折クゥクゥと可愛らしい音が後席から聞こえ

私はその度、音のするうしろを振り返る。するとお嬢が顔を赤らめてそっぽを向く。

そんな事が何度かあって私はハンドルを握る隣のトライデントに、途中の程々に

大きなサービスエリアに車を止めさせ少女と少年に食事をとらせるよう

トライデントに命じた。


 私は、心もとなくなった煙草を自販機で仕入れ、ロールスの助手席扉へもたれ

掛かりよれた包から最後の一本を取り出して火を灯し、少女たちの帰りを待った。


「しかし──────どうしてこう、征く先々でイレギュラー要素が発生する?」


 確かに結果だけしか知らされていない私から見たら過去の事象は言わば

シュレディンガーの猫そのもの。過去という箱に飛び込んだ観測者しか事象を

確認できないのは百も承知だ。

 箱の中の猫がどうやって生き延びたのか苦しんだのか、または苦しまずに死んだ

のか結果に至る経緯(いきさつ)なんてのは実際に箱に飛び込んでみなきゃ解りようがない。


 この時代で任務上、関わらざるを得ない人物のプロファイルリストとその命運だけ

が追加情報としてこの頭にインストールされているだけに、このイレギュラーに私は

心底困惑していた。

 決定された事象、つまり結果を知っていると言うだけで自身の能力以上の奇跡を

起こせるほど未来人も能力者も万能じゃない。万能じゃないからこそ人として

イレギュラーに対しどうすべきか悩むわけなんだが。


「──────しかし、なぁ」


 後部のエマージェンシーシートに先程、二本の足を見事に両断されたその男が

横たわる。私が彼を見つめるのをまるで遮るかのように、視線を煙草の紫煙がさえぎり

その煙たさに思わず眉間に皺を寄せる。


「到着先の乗客名簿にその名が無いのに、あの場において私は──────」

「トライデントになぜ、あぁ命じたのだ? どう動こうと割れていたコップは

 元には戻らぬと言うのに。オリジナルの思考ロジックを時々疑いたくなるよ」

「──────マッタク」


 自らの行いに、いや? オリジナルの性格にあきれながらに天を仰ぎ月夜に

向かって紫煙をくゆらせていると、やがて車内で意識を取り戻したその男と目が

あう。

 

「──────よぉ、オレにも一本もらえるか?」


 逆ヒンジに仕立てられた、ロールスのスーサイドドアをゆっくりと開いて

その男が煙草を求め顔を出す。


「まだ立ち上がらないほうがいい。──────ほら」


「──────すまねぇ、実はまだ足の感覚がねぇんだわ」

 開いた扉越しに、新しい包の封を切り、指先で弾き出した一本を久坂部へ差し

向ける。

「ケッ!洋モク食ってられるとは、Jの連中ってのはそんなに給料いいのかねぇ?」


「これか?このライターは借り物だ、私のじゃない」


「はぁん、さいで。ところで──────」

「この足一体何が有ったのか解らねぇ──────が」

「これもあんた等の為せる技なのか?」


 まるで七分丈に成ったスーツのスラックスからのぞく裸足を私に見せながら

久坂部は私が差し出す煙草を受け取ると、いちいち嫌味を言いながらもそれを

口に運んだ。私はその借り物のライター、オリジナルが癖でやっていたであろう

ライター遊びで火を灯し、彼へ向けた。

 フンと一つ鼻を鳴らして、久坂部がタバコに火を灯すと私と同じく

月夜に紫煙を紡いだ。


「まぁ──────な」

「と、言っても、私やあの兄妹にそんなマネは出来ない。あの赤毛の淑女には

 逆らわないのが身の為だ。いいか──────? 忠告はしたからな」


「へぇ──────彼女が、ね」

「そんな事より、オレがどれだけの時間ぶっ倒れてたか知らんが、あんた等も

 随分悠長なもんだな。四課の連中を追うなら急いだほうが良いんじゃねぇのか?

 なんせあんた等のお相手は空路だぜ。それとも、まさか追う気はないのか?」

「──────んなわけはねぇよな、さっきの車内の話。ガキ共を騙す為についた

 嘘だってことにしちゃちょいと出来すぎ──────おっと!」

「何だってんだ。ナンダこりゃ?」


 煙草を咥えた逆の口角をニヒルに持ち上げながら、嘲笑する車内の男に私は

ポケットから空港で思わず得てしまった戦利品を取り出し、放り投げ渡した。


「ピトー管。コイツが無けりゃ、悪いがお仲間は飛び立てない」

「とはいえ──────。たしかに、こう何時までも悠長にもしていられんがな」

「ところでアンタはどうするこれから───いや、ここはどうしたいと問うべきか。

 Zeroの連中と合流したいってんなら止めはしない、どこへ成りとも行けばいいさ」


「はぁ? 逃がすって言うのかオレを」

「ヘッ、随分とナメられたもんだな──────」


「言ったはずだ、あの魔女と一戦やらかそうとはするなと」

「私は、この後どうするつもりなのか。そう聞いたつもりだったんだがな」

「私自身、お前さんを捕らえたつもりもなけりゃ、救ったつもりもない。

 自分の意思で好きなようにすればいいサ」


「ヘッ、勝手に人を助けといて、今度ァ子猫でも突き放すように勝手にしろってか?」

「随分な言い草だなぁオイ、いまさら四課に戻れるわきゃねぇだろタコ!!」

「つか・・・・・・、もうこの手帳ともお別れかもなクソッ!」


「──────その手帳(刑事)に随分な思い入れが有るみたいだな?」

「お前さん、何で刑事(デカ)になった?」


「はぁ──────? なんでそんな事アンタに話さなきゃならねぇってんだ!」

コイツ(煙草)の見返りでも寄越せってかァ?」


 そう言いながら血気盛んな若いその男は、指に挟んだ煙草で事もあろうに

私の顔を指した。そのあまりにもナマイキな態度に、若干腹がたった私は、礼節を

教えてやることにした。そういうことにしておこう。

私は若造に、師から教わった搦め手をお見舞いする。


「──────別に、煙草が燃え尽きる間のツナギさ、ただの年長者の気まぐれ」

「ただなお前さんが卒倒する直前に口走ったんだ。刑事として、誰かの役に立ち

 たかったってな。その言葉がお前さんがずっとしてるその粗暴な態度から

 あまりにも想像もつかなかったんで、ついな」


「なんッ!!」


「あの少年もお前さんを助ける際言っていたぞ」

「お前さんの心が澄んでいるから助けたいと、お前さん本当は自分の心を表に出すのが

 下手だからわざと粗暴な()()をしてるんじゃないのか?」


「ばっバカかテメ──────」


「──────別に、生まれ持った正義感は恥じることでも隠すことでも無いだろ」

「ましてや、自分の心に素直になることは、決して──────弱さじゃない」


「ふざッ──────」


「それともお前さん・・・・・・」

「まさか、年長者の気まぐれに付き合えん程」

「もしかして本当に、ただの照れ屋なのか?」


「こん───ッッ!」

「・・・・・・・死んだオヤジと約束したんだよッ!」

「困ってる人を見過ごせない、オヤジみたいな立派な警官にオレも成るってな!!」

「あぁ、くそっ! 満足したかオッサン!!──────ッタク!」


「いた!──────エメス!!チョット聞いてよ!」


「チッ! い、いいかオッサン!! ガキ共に話したらマジでボコすからなッ!!」


 久坂部は、私の気まぐれに抗うこと叶わずに本心をさらけ出し、戻ってきた兄妹を

認めると頬を赤らめつつ、咥えていた煙草を私の足元へ投げつけ、開け放たれていた

扉を勢いよく閉ざした。


 やれやれだ、まるで誰かの若い頃を思い出す。私は彼の投げつけた火の灯ったままの

煙草をコンバットブーツのソールでふみ消し、拾い上げると愛用の革製携帯灰皿へ

自分の吸い殻と共にしまい込んだ。


「御姉様ったら、私がお勧めしたタコ焼きに一切手を付けないんですの!」


「おっ、御姉様ぁ?!」


「それで甘いものばかり召し上がって──────」

「なによ! 御姉様って呼んでは可笑しい?」


「シラユキ、お嬢なんか変なもんでも食ったか?」


「いえ、好物の蛸焼きと、私は焼きそば──────」


 シラユキの話を途中まで聞いて私は、ある意味の合点を得ていた。

あの時、私はトライデントとお嬢の感情リンクを構築させる為、交差点で兄妹の乗る車へ

忍び込み足止めし、兄妹と交渉中お嬢にトライデントの目を離すなと言った。

 村瀬を守護する病院でトライデントと刃を交えた際、アヤメは絶対的な力の差によって

トライデントに敗北した。私はその圧倒的な力の差を利用し、両者に感情的なつながりを

持たせようとした、“絶対的恐怖”としてな。だがその必要もなくトライデントと

お嬢の間にはリンクが確立されていた。


 恐怖を上回る感情をアヤメは既にトライデントに対し育んでいたと言うことだ。

“憧れ”って言う──────な。


「チョット!! 何笑ってるのよエメス!」


「──────いや、自分の空回り具合があまりに無様でな」

「そんな事よりもう出るぞ、あとは目的地までノンストップだ」

「お前たち、トイレは済ませたのか?」


「なっ!! デリカシーの無さにもほどがありますわッ!!」

「す──────、済ませましたわよ...」


「結構。では乗ってくれ」


「フン! あら、バカかべ。目を覚ましましたの? 死んでて結構でしたのに」

「んだと!このメスガキ!! ひん剥いて“わからせ”んぞコラァ!!」


「やれるもんならやってご覧なさいな! 何よ、まだ立てもしないくせに」

「それとも、そちらの方もヤクタタズに成ってしまわれたのかしら?」

「見た目だけじゃく、そちらもザコなのかしら?」


「シラユキくーん、よろしく」


「アヤメ、よしなさい」


 そんな騒がしいやり取りが後席で繰り広げられ、私は大した休息も取れぬまま

車は一路宮城、仙台市へと急ぎ向かうのだった。




                   ♠




エレクトラの精神世界とも言える時の牢獄に囚われ、美咲を救う唯一とも思われた

方法であるカキツバタとの連絡も失敗し、落胆する私の隣のミスターソウマは、少女の

視線から戻り両の手を組んだまま神妙な面持ちで、何かに思いを馳せているようだった。


 楽観主義の彼にしては珍しい、その苦悩とも困惑とも取れる表情に私も迂闊に

話しかけられずにいた。


「・・・・・・・」


 私は他に何か解決案がないものかと、再びこの場所について考え直す。

エレクトラを中心とし彼女と縁の結ばれた我々の、おそらく記憶の結節点である

この場所。時間的整合性を全て無視したこの場所は、さしずめ異次元空間に等しい

のだろう。

 そんな場所だが、ありがたい事なのか、または彼女の意思なの解らないが

私とミスターソウマ、二人の共通認識がある英国大使館貴賓室が不完全ながら再現

されている。だが私と隣の武士様との間には、我々が超えることの出来ない壁が

有った。

 ここへ誘われた際、私と武士様の間にはおよそ数ヶ月の時間差が有り、その時間的

整合性の異なる者同士の物理的接触を阻むような力が働いている。


 隣の彼曰く、時間的不合性をここは温度差というエネルギーで相殺しているらしく

私とミスターソウマ。そして現実世界のこの部屋で私が壊したそこの電話など、私達が

触れようとすると、凍てつくような痛みを伴う力場が働き、互いの接触を阻まれて

しまう。


 そんな時の牢獄。時間的に全く意味をなさない空間だけ有って、私のこの考察も

隣の武士様から見れば、おそらく一瞬のことに見えるだろう。それが証拠に、隣の

武士様が現実世界で縁のある者たちに思いを馳せている時間も、私から見たらほぼ

一瞬のように見える。


 私の体感時間で数分やそこらしか経過していないの間に、ミスターソウマは彼女の

視覚に乗り彼女と共におよそ数ヶ月の時を経ていた。美咲を救ける手がかりを探す

ために。


 幸い我々の体は霊体のような状態だけに、肉体的な疲弊は無いものの、こうして

思考を巡らせていると、なにかしらのエネルギーを消費しているようで、それなりに

精神力を持っていかれる。それは肉体を持っていた時の名残なのだとしたら皮肉な

もんだ。ましてや今の私のように、現実世界の彼らにとって何の力にもなれないと

心底落胆でもすればもはや頭痛のような感覚さえ覚えるのが、皮肉どころか腹立たしさ

すら覚える。


「──────ダニエル、ここ一番の朗報──────」

「だと思うが、それをお前さんに理解させるだけの説得力をもって語るすべが

 今の俺には全くない。絶対確実という確証がない、正直まだ俺自身どう判断して

 いいのかわからん」


「ミスターソウマどうした?」

「なにか動きがあったのは貴殿のその表情を見ればわかる」

「先程からずいぶん思い悩んでいるようなので貴殿の葛藤はおよそ理解はしている

 少し休んだらどうだ。どうせここの時間は止まっているし、貴殿は好きな

 時間軸の彼女の視界に戻れるのだろう?」


「あぁ、ありがたい話だが、向こうの出来事をお前さんは、何も知る術がなくただ

 気を揉んでいるだけじゃいくらなんでも辛いだろうからな。お前さん、今ひでぇ

 顔してるぞ騎士様よ──────」


「──────当然だ、結果的に彼女は・・・、エレクトラは私に“お前は無力だ”

 と言う罰を与える為に、私を此処に留め置いているようだからな」

「ミスター、何が有った?」


「いいか騎士様、これから語る話にゃ理屈や根拠なんか全く無い」

「こりゃどこまで行っても俺のカンだが──────それでも聞くか?」


「フッ、愚問だ、聞くしかなかろう。ミスターソウマ」

「私が、ただ罰を受けているだけではないとするなら、貴殿の話の中で突破口を

 見出すしか無いのだからな」


「いいかダニエル、例の主人公様。今の所信頼に値する人物であることに間違いない。

 誤解を恐れずに言うなら、アイツは、ロイドさんやエレクトラ、そしてダニエル。

 アンタより俺にとって信用に値する人物なんだと思う。」

「まぁ会ったこともないんだがな」


「まて一体──────、どういうことだ?」


「とりあえず、一番理屈が通る奴の行動を説明するとだな──────」

「メモにある情報を走り書き、それを嬢ちゃんに読ませたんだ。

 つまり奴は、嬢ちゃんの瞳を通し、俺が見ていることを知っていると見て

 間違いがない、それどころか」

「メモを読ませるなんて、まどろっこしい方法をあえて取る以上、奴は、俺達が

 現実世界の会話を聴けないってのも承知していることを示唆してる」

「そうとも取れないか?」


「ふぅ、それで? アヤメにただメモを読ませただけじゃないと言う、根拠は?」


「はっきりしたことはまだ言えない。なにせその内容が俺と美咲個人に関わるだろう

 内容だからだ。つまりは、その内容を理解できる人間はおそらく世界中で俺と美咲

 以外に居ないだろうって事だ」


「何でそんな事を奴が知っているのだ? で、なんと書いてあった?」


「スマンがそれを騎士様、アンタにゃまだ話せないんだが──────。この話」

「信じてくれるか?」


「まったく──────。信じるしかあるまいこんな状況で!」

「武士様、アンタを信じないで誰を信じればいいというのだ、こんな場所で私は!」


「それと、奴が信用に値する人物じゃねぇかって、お前さんでもわかる物を持って

 いた俺がお前さんに託し、お前さんはそれを信じ導かれるように美咲の元へたどり

 着いた唯一の道標。俺のライターだよ」


「何ッ! しかしアレは、私がエレクトラに刺された際、私のポケットに有ったはずだ。

 武士様も見ただろう! 私の肉体とともに、身につけていた衣服など全て光と成って

 散ったはずだ。」

「似たような──────、そう。別物(レプリカ)の可能性はないのか?」


「いや、むしろだ。アヤメの視線に相乗りしている俺に、俺と美咲にしかわからない

 メッセージを、俺にしか認識できない確実な方法で送ってくるような奴だぞ?」

「偽物を持ってる可能性のほうが低い。そんな小手先の小細工が消し飛んじまうだけの

 メッセージだったからな。だとすれば、あれはまさしく本物だと考える方が

 よっぽど自然だ」


「つまり貴殿は、その人物を信用するという訳だな?」

「まぁ味方が増えることはいい。その人物にどこまで任せるか、あとはQUEENの守護者たる

 貴殿が決めればいいことだ」

「そして私は──────、安心して成仏できるわけだ・・・・・・」


「まてまて、勝手に死ぬなダニエル。」

「アヤメの瞳を通して見るに、奴は恐らく俺やダニエルと互角かそれ以上の手練だ。

 正直手合わせ願いたくない人物なのは確かだが」

「奴自体なんらかの行動制限が有るようだ」


「──────と、いうと?」


「空港でZeroからカキツバタを助け出すため奴が介入した際、ベレッタを両手撃ちで

 連中を圧倒するような戦闘力を持っていながらに、Zeroの刺客を誰一人として

 殺めてない。確実にお嬢たちを救うなら、降りかかる火の粉は全て確実に払うべき。

 違うか?」


「まさか──────、不殺の誓いでも立てているというのか?」

「愚かな。そんな物は自己満足でしかない」

「ましてや奴が貴殿の言うような手練だとしたら、ただの自惚れでしかない」


「あぁ、自分に課した何かならば、お前さんの言う通りバカな話だ。そのくだらない

 事の為に守るべき者を危険に晒すなんて事になるんだからな」

「ただ、俺やお前さんと互角かそれ以上の手練が、俺達がしようとしたように

 カキツバタの二人に協力を求めた。そして今やエレクトラを引き連れ彼らと行動を

 共にしている」


「──────」


「しかも、お嬢の瞳を通じて俺にメッセージ送ってきている。つまり、俺達にも協力しろ

 って事じゃないのか?」

「確証はないが、奴に対しエレクトラはロイドさんと同じような、絶対的忠誠心を持って

 従っているようだ。そんな奴が、エレクトラを従え、今まさに宮城へ向かっている」

「ならば──────、ダニエル。お前さんがリンクを繋ぐべき相手は」

「カキツバタのお嬢じゃなく、むしろ美咲本人なんじゃないのか?」


「──────、奴がエレクトラを直接美咲に引き合わせようと動いてると言うことか」

「仮にそうならしかし、危険じゃないのか? 貴殿はそれでいいのか?」


「あぁ、あのメッセージが事実なら」

「エレクトラが美咲に対し驚異になることはないだろう。散々話しといてなんだが

 根拠は全く無い話だけどな」


「QUEEN本人と、か。確かにこれ以上確実な方法は他にはないな。」

「しかし──────、これは最も危険な賭けだぞ? 奴とエレクトラがQUEENに襲い

 かかる事態を招いた時、我々は一切手出出来ずに」

「ただ膝を屈することになるのだからな」


「ダニエルさんよ、ソイツはこのまま手をこまねいていても結果は同じだ」

「美咲や富山のオッサン、そしてお前さんの助けた娘も、美咲と共にZeroの毒牙に

 掛かる」


「・・・・・・確かに」


「こうなったら可能性の少しでも多い方に賭けるだけさ」

「この賭け、お前さんも乗ってみる気は有るか?」


「マッタク──────、どうなっても私は知らんぞ!」

「元より、私は賭け事が嫌いなのだからな!」




                   ≒




「あーやっぱりちっとばかり寄り道しすぎた見たいだな、こりゃ」


「オイオイ──────どうスンだよオッサン!」


「アンタは黙ってなさいなバカかべ、このっ!」


「悪ぃがその蹴りちっとも痛くねぇな、まだこの“あんよも”感覚がないんでね」


「アヤメ、よしなさい」


 夜も開けきった午前6時、我々は美咲が匿われている富山邸から程近い場所で

Zeroの連中が張った規制線に阻まれていた。

 これは幸いというべきだが、連中は美咲の能力を恐れるあまり、互いに連絡を

取り合っていないようで、目の前に居るのは“いっとう先”にたどり着いた車両

一台と、四課の2名が富山邸の私道に至る、県道との交差点を封鎖していた。


「久坂部さんよ、連中の規模教えてくれないか?」


「俺が? アンタラの得になるような事言うとでも思ってんのかタコ!」

「ちょ、バカかべ!! このっ!このっ!!」


「でもま、こうやってガキンチョに蹴られてりゃ、ついつい要らぬことを

 口走っっちまうことも有るよなぁ。」

「車両4台それぞれに2名ずつ───」


「了解だ、いいかお前たちは車から降りるなよ。トライデント待機だ」

「承知いたしました」


「ちょ、エメス! 一人でどうにかするつもり?」

「本気ィ!」


 私はM9の装填を確認し、腰へそれを仕舞いロールスから降りる


「いやあ──────まいったなぁ、何か有ったんですかー?」


「そこで止まれ! 我々は警察のものだ。この先は規制中──────」


 運転席扉から半身を乗り出した四課の“駒”へ向け、私はほとんど四つ足の

体勢で一気にその黒塗りの車へ接敵し、扉を蹴り込み、間髪入れずに扉に挟まれた

男の顎先に掌底打ちを見舞い沈める。


「なっ!! キサ──────」


「おっと、抜くなよ若いの。聞きてぇ事がある。」


スーツの懐に手を入れた助手席の男にM9を向けそう願う。

「お前さんたち、先発隊か? 随分お早いご到着だな」

「専用機は飛べなかったはずだが?」


「クッ・・・・・・、貴様があの時の。馬鹿め、空路だけだと思ってたのか?」


 そう語りながら、懐から獲物を取り出そうとする男の肩口をM9の銃口で突き

顎先に拳を見舞って沈めた。


「そうか、ご説明ありがとさん」


「マッタク、相変わらずダルだなこの国のお巡りさんは──────」

「おーいシラユキ。手かせや!」


 ロールスの車内に向かい手をふると、顔を出したカキツバタと久坂部が一瞬の

出来事に眼を丸くしていた。私は呼びつけたシラユキとともに、男たちを拘束し連中の

車のトランクに放り込んだ。


 さって、ここからがちと忙しくなるな。まもなく美咲が学校へ向かうために

この坂を降りてくる。美咲とトライデント、二人を合わせるためにこのまま、鉄壁の

富山爺の城へ乗り込んで、話を通すか。坂を降りてきた美咲に直接話をするか。


「──────、どっちも難題だなこりゃ」



時計を確認し、げんなりしながら私はロールスへ再び戻った。



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