3-5 迎撃
二〇一八年七月二四日 深夜
私は真をロイに預け、一路茜の住む府内の宮田家に急いでいた。
車中、備え付けのセルフォンが鳴る。
「私だ」
『ダニエル、コードナインです。』
「あぁ。今向かっている。」
「クイーンは?」
『いつものようにセーフルームに』
「ではしばらく持つな」
『(貴方・・・)あぁ───、』
『ダニエル、どうやら乗り込んでくる気はないようだが囲まれた』
「心配ない、もう着く」
宮田家に続く一本道を駆け、途中向かい合うように
道を塞ぐ2台のセダンから得物を手に出ようとする人影。
その姿を確認した私はステアリングを一瞬左へ
直後右へ大きく切り返すと同時にアクセルを床まで踏み込む。
車は後輪の接地を失いタイヤより白煙を上げながら滑り出す。
白煙を上げながらドリフト状態で道を塞ぐ相手に対し
窓越しに拳銃で照準しつつ車ごと体当りして仕留める。
直後、もう一台の運転席からせり出した人影に続けて照準し
一発はこちらの窓を割るため、もう一発は標的の脳幹を吹き飛ばす
弾着の紅霧を合図に、一気にアクセルを踏み込む。
体当たりの衝撃でズレた相手の車の隙間にこちらの鼻先を差し込み
連中のバリケードを突破する。
宮田家の正面でドリフトからターン状態で向きを変え
鼻先を街へ向け退路を確保しつつ車を出る。
木陰から飛び出す3つの人影を矢継ぎ早に処理し、PC327R8の
シリンダーを開く。ローダーで再装填して正面に再び照準した。
「まったく・・・見事としか言いようがないね、いつもいつも君は───」
気のない拍手をしながら、影より現れた白い着物姿の
ヤサ男が話し終える前に引き金を引く。
マズルフラッシュが上がると同時に、彼は着物の袖口から滑り落ちた鉄扇を使い
扇を開く仕草でマグナム弾を優雅に弾き飛ばす。
「そちらも相変わらずのようだな」
「──────Jr。」
「再開の挨拶の途中だと言うのに───、全く君は、相変わらず野蛮な・・・」
「性分でね。それよりどうした?直接現場に出向くとはらしくないな。」
その若い男が懐に手を入れようとした瞬間に再び二度引き金を引く
男は手にした扇を、今度は仰ぐような仕草で次々とマグナム弾を弾き落とす。
「オイッッ!」
「やめろ!!電話を取り出すだけだ!」
「いちいち戯れるな! ・・・ったく」
この男の高貴な振る舞いは大体いつも3発の銃弾で砕け散る。
「───、フン」
歌舞伎男は懐から取り出した漆塗りの電話をこちらに差し出し、
私に取るように仕向ける
「父上からだ。いいか?撃つなよ、あと3発しか無いのだろう?」
ミスターカブキの肩越しに、その後ろで私にライフルを向けている
人影を赤く染める。後ろで倒れる赤く染まった黒子を横目で見た着物姿の男
「いいや5発───。おっと、これで4発になったか?」
「ご配慮いただいて光栄だがな、残弾の心配は無用。」
「人払いをしてるからと言っても、片付ける方の身にも成ってくれるかな」
そう一言小言を漏らしながら、お互いにゆっくり歩み寄る。
私はスーツをめくり懐のUSPを彼に見せた。
「まったく・・・全身弾薬庫だな。君は。」
「Jrも相変わらずのカブキ者のようだな」
お互いを讃えながら私は彼の電話を受け取り、彼に照準したまま
私はその電話にスピーカーモードで出る。
「ご無沙汰しているね、英国の騎士殿」
「何用だ」
「協定書に関して、どうやらページを追加しなければならないようだね?」
「申し訳ないが話をする相手を間違っているようだが?」
「では貴殿の言う話すべき相手に伝えてくれるかね?」
「断ると言ったら?」
「我々がアヴァロンへ出向くことになるが。
それでは君もマズイのではないか?」
「TALK!」
これ以上この電話の主に関わっても、私が不愉快な思いをするだけだ。
「先日の夏祭りでの一件。」
「我々の舞台に上がった少年についてだ。」
「見出したのがそちら側としても───、」
「これ以上この国の資産を貴国へ持ち出されるわけにも行かない。」
「そこで我々はある条件を用意した。」
「今後どうするか、彼自身に決めてもらう。どちらにつくべきかね。」
「この協定が有効なうちは彼の命に関してだけは、我々日本側は保証しよう。」
「以上だ、では騎士殿。貴殿は何か質問はあるかね?」
「その協定。信じると思うか?少なくとも私が」
「クックック、思わんよ。ではまたな」
そうして電話は切れた。
私は変わらすリボルバーを向けた正面の彼に漆塗りの
高級な電話を返すべく手を伸ばす。
左手に持ったスマートフォンを彼に手渡すと同時に、発砲する。
彼は扇と逆の手で受け取ったスマートフォンで銃弾を落とすと
彼自慢のスマートフォンは見事なまでに粉微塵になった。
「オイッッ!よせ、馬鹿者ォ!!」
「良かったな、帰りの荷物が一つ減ったぞ」
「まったく・・・信じられんよ。首輪のない野良犬ってのは!」
「狩るべき獲物を自分で選べるならばLONEWOLFも悪くない。」
「まったく・・・・ 用は済んだ。ではまたなハッピートリガー。」
「あぁ、またな二代目」
そう言うと何時もの様に男は霧が晴れるが如く姿を消した。
周囲の殺意が消えるのを確認し宮田家の窓に目をやる。
夫婦がカーテンの隙間からこちらを見ていた。
手を上げ状況が片付いたことを報せ、再び傷ついた車に乗り込む。
「あぁ、また新しい足が要るな。」
窓は割れ、左側面すべて平になってしまったヴァンキッシュ。
私は替えの靴を受け取るため車屋へ戻る。




