2-21 ある日の出来事。
9月もそろそろ終わり。折返してもう一回夏休みが来てほしい。
お昼ごはん後の5時限目。しかも、教科書は───もう小2位の時に覚えちゃった内容。
教科書をなぞるだけの退屈な数学の授業。
寝ちゃうっしょ?普通。
昼下がりのポカポカ陽気にボッコボコにやっつけられて、立てた教科書を盾に
机に突っ伏してオヤスミナサイ。
『 ─── き
『 ── さ き
『 ミ サ キ 。』
夢の中でなら私次第でいつでも会える大好きな人。聞き覚えのある愛しい声。
【 美 咲 ────── 】
す ま な い 。
ヒヤッとした感覚でアタシは飛び起きた。
「 日 ィ ー 比 ィ ー 谷 ァ ー さぁん!」
オンナセンセーの声は無視。ほっといてそれどころじゃない!!
立ち上がって窓の方を見つめる──────、必死に目を凝らす。
ダメ!見えない。窓の外、青々とした空のまたその先。
──────見えない!ダメ!もっと高いところなら!!
椅子を蹴り出して走った。教室の後ろの扉をあけて、外? そう屋上!
もっと空の近くに行かないとダメ!早く屋上へ!
「あっ!待ちなさい日比谷さんッ!!授業中ですよ!」
階段を駆け上がりアタシは屋上へ!
「おワっ!なんか出た!アレっかぁいい子!」
蹴っ放った屋上の扉。不良達がたむろッてるけど無視。
アタシは全速力で柵へ駆け寄った──────
「あぁ?なーにあの娘」
「あぁーアレ3Aの日比谷じゃね?」
「日比谷かぁ、関わんないほうがいいって、見た目はイケてっけんどさー」
「ヤバイってか変? 意味わかんねぇってマジで。アイツ」
「そういやオメェ、こないだ言い寄って股間蹴られ・・・って!?」
「オイ!なんかヤバくね?柵のぼってっぞ!」
「まさか飛び降りる気じゃ!!」
「バッカ!!おいおメーラも来い!!止めろぉォ」
ここよりもっと高く、もっともっと! 高く、高く!アノ人のいる方へ・・・
「───オイ!早まんな!ってイデ!おい顔蹴るなッ!パンツ見えてっぞ!!」
「おい榊ッ!!しっかり足抑えて・・痛っッ!!テメっ!あ、はなぢ───」
「腰つかめ腰っっ!!あ痛った!つむじを蹴るな!おい日比谷!!こんの暴力娘ェ!!」
離して!
飛びたい! 飛びたいの、飛んでいきたい──────
今にも消えちゃいそうなあの人の声、あの人のやさしさ──────
あの人の胸のぬくもり──────・・・。
お願い・・・
「 い か な い で ・ ・ ・ 」
ソ ウ マ ァ ァ ァ ァ !!!
──────
同日同時刻 新宿 ALTA前
「ねーねーこれからどうするー?」
「んーとりあえずー、スタバ?」
雑踏の中、誰も耳を貸さずただ流れるニュース映像。
『 ───ではないかと、見ており、幸いにも秘書官や運転手に怪我は有りませんでした。』
『事故は、秘書官を乗せた車が新宿御苑下を通るトンネル内でバランスを崩し』
『壁と接触、横転したと見て、警視庁は英大使館とともに共同で捜査する方針です。』
『次のニュースは今朝お伝えしたニュースの続報です。』
『硫黄島の西南80Km付近の太平洋上で消息を絶った航空機ですが』
『同時刻に該当空域を飛行予定の機はなく、発達中の低気圧による電波干渉が』
『レーダーのエコーとして映し出されたものではないかとの考えを』
『防衛省及び国土交通省の──────』
『次のニュースです。』
『9月25日未明、埼玉県の会社員、櫻 新さん34歳が大宮の路上で───』
『───何者かに刺され搬送先の病院で死亡が確認されました。』
『警察によりますと櫻さんは出張先の大宮で───』
『以上、お昼のニュースでした。』
──────
同日 同時刻 京都府 某所
「もしもし?おぉご無事でしたか。」
「──────えぇ、すべて予定通りに。」
「そちらは如何ですか?」
「ふむ、なるほど。ほほう、それではまるで貴殿のいる世界は───神域。」
「いわばこの国の守護神となられたようですな。」
「──────えぇ。いやいや、これからも世界に必要なのはバランス。えぇ」
「そうですな、以後ともよしなに・・・」
「Mr.M、もう相見える機会も───ないでしょうがねフフ」
長身の紳士は不敵な笑みだけを残し受話器を置いた。
「この国と合衆国、あちら側も上手く行ったようだよ──────」
「紅茶を、いや───ここはスコッチを頂こうか。」
「頼んだよエレクトラ。」
「乾杯なさいますか?ロイド様」
「そうだな、では。」
「散りゆく者たちへ。」
『散りゆく者たちへ・・・』
二章 裏切りの逃避行 終




