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カジノ ─ Casino ─  作者: くどい
二章 裏切りの逃避行
28/99

2-13 五話 化物の手毬唄 2


翌日。


 数日間降り続いていた雨はようやく、嘘のように止み

テラス側の窓より差し込む朝日に眩しさを覚えて目を覚ます。

毛布をめくり、ゆっくりと体を起こすと、硬い寝床の為か

または窮屈な寝方をした結果か、腰が悲鳴を上げていた。

寝室隣のバスルームで、オレは浴槽から出て立ち上がり

手の甲で数回腰を打つ。


 夜襲を警戒して、シャワーカーテンやバスローブで人が寝ているように

細工したベットを元通りに片付け、昨日若き騎士が座していた椅子に

腰を下ろす。


 結局、ダニエルが手渡してくれた守刀のS&W(M49)の出る幕はなかったって訳だ。

せっかくの工作が徒労に終わった残念さか、または単に安堵とも取れる気持ちで

ふぅとため息をつくと、まるでそれを待っていたかの

タイミングでノックの音が響く。


「ソウマ様、お召し物の換えをお持ちしました。」


 聞き覚えのある声、おそらくロイと一緒に居た赤毛の彼女。

S&Wをドアに向け、変わらず警戒するオレに対し、彼女はそれを、まるで透視するかの

ように俺に言う。


「どうか、(ツルギ)をお収め下さいソウマ様」


 その声にまた一つため息を付き、一晩中握りしめていたそのツルギをくるぶしの

ホルスターへ収めた。

オレは勢いを付けるかのごとく、両手で膝を打ち立ち上がりドアへ向かう。


「失礼したねエレクトラさん、今開ける。」


 解錠し扉を開くと、軽く会釈した彼女は、優雅に滑り込むよう部屋へ入る。

ガーメントバック、シューケースをベットへそっと置いた彼女は

そのままくるりと向きを変え、廊下に続くドアへ真っ直ぐに向かう。


「それでは、失礼いたします。ソウマ様」


呆気にとられるオレに彼女は一礼すると、要件だけを果たし

そのまま部屋を出た。


 再び出そうに成るため息を、そのまま飲み込んだオレは

ベットに置かれたガーメントバックを開く。


中の背広をサラリと撫でると飲み込んだはずのため息が堪らず漏れ出た。

「ったく、どんだけいい生地使ってんだよ・・・」


生地と仕立ての良さにも呆れるが、ため息の原因は

そのスーツやシャツの色だった。

「やっぱり───、黒なんだな・・・」


 用意された替えのスーツは、全てがオレ用に仕立てられたかのような

出来で、その上等な接待ぶりに、いちいちうんざりする。

 オレを迎えるのは確定事項だったといった手際もさることながら

オレの身体データまでお見通しとは恐れ入る。


「これじゃ、みっ子の言ってた愚息のサイズまでお察しかもな・・・」


 泥と雨で汚れた自前の安スーツから、用意された上等な黒スーツへ着替え

椅子に腰を下ろす。また即したようなタイミングで再び彼女が扉の向こうへ現れる。


「ソウマ様、お迎えに上がりました。」


 自分から出向くか考えあぐねていたオレは、迎えとの言葉を聞き

ストンと腑に落ちた。

日中の身の安全は、彼等が確保してくれているって事か?いや、たぶんそれは

昨日ロイが発した警告が、警鐘ではなく注意の範囲だったとオレは理解した。


 それじゃ、CASINOにご招待された理由を聞きに行こうか───。 

黒スーツの上に、コート掛けに吊るされた灰色でペラペラヨレヨレのトレンチコートを

羽織り、オレは彼女の案内のもと、部屋を出た。




大使館別棟一階の応接間へ入ると、舞台に役者は既に揃っていた。

「ミスターソウマ、昨日は良く眠れたかな?」


ロイがオレにそう問う───が、そいつは愚問だろう?


「まぁ──────、少しは休めたかな?」

「それは良かった。さぁ掛けてくれたまえ。」


イヤミなんざ、この連中には一切効果がないかのように、軽くいなされた

オレは、赤毛の彼女が引く席に腰を下ろす。


「さあさぁ、話は食事の後だよミスターソウマ。」

「この館で、大した物は用意できない事情、察していただけると助かるな。」


 そう言うロイがテーブルの鈴を鳴らすと、一般的なイギリスの

フルブレックファストを想像していたオレを裏切るように

チョット上等な旅館の朝食のような日本食が運ばれてきた。


「ご期待に添えなくて申し訳ないが、私たちは日本びいきでね。」


 滑稽としか表現できないその光景にもはや呆れる他ない。

フフフと肩を揺らすロイ、箸を手に静かに両手を合わせる都。

箸を巧みに操り、納豆をありえない速さでかき回すエレクトラ。

その中で日本の朝食を片手一つで断り、英字新聞を読みながら

紅茶だけを口にするダニエル。

というか、納豆食うのか。この淑女は・・・。


 今となっては、ある意味贅沢な朝食を終えた、影の集団。

ついに彼等がオレ自身を必要とする理由を聞く時が来た。

今オレがここに居る理由をロイは言葉巧みに語った。


「──────、つまり。」


「世界平和。いや、あえて言うなら()()()()のためかな?」

「───はぁ・・・、おおよそ理由は理解したよミスターロイ。」


あっけに取られるほど、壮大な目的を語ったこの老紳士の話を

オレは今信じるか否かより、ずっと引っかかっていた疑問をロイにぶつけた。


「理由はわかった。今度はこちらが質問する番───、でいいかな?」

「結構だとも、なんなりと聞いてくれたまえ。」


「まず、貴方がたは何処でオレを見出した?それも───」

「ヨーロッパという遠方から。」


その問いに対し、ロイは丁寧に整えられた顎髭を何度か撫でると語りだした。


「気を悪くしないでもらいたいのだが───。」

「我々が貴殿に白羽の矢を立てたのは、いいや───、立てていたのは」

「今より半世紀以上前の、ある事件が発端だった。」


「また随分と遡るんだな。」


「うむ、貴殿の父上は・・・確か」

「戦後、祖母様の故郷である会津へ身を寄せるため」

樺太(サハリン)から本土へ引揚げた・・・と」


そんな事までお見通しか・・・まぁいい

「それが───?」


「引揚船殉難事件。知っているかな?」

「降伏文書調印後、樺太からの引揚船が何処(いずこ)かの攻撃によって」

「沈められた事件。」


「あぁ、昔聞かされたことが・・・」


「およそ1700名以上の非戦闘員、それも──────」

「多くの婦女、子が無念にも海中へ没した事件だ。」


「父上はその事件の渦中に居、そして生き延びた。」

「恐らく、能力を持ってして」


「・・・・。」

つまり───、彼等は50年も前からこの血統に目をつけていた・・・と?


「幼い父上とその母上様は、大笠原丸という引揚船に乗船された。」

「大泊港を出た大笠原丸は、北海道の小樽を目指し南下」

「しかしその途中、稚内に一度寄港する。」


「その際、幼い父上とその母上を含む数百名は稚内港にて下船。」

「下船した父上とその母上は陸路で会津を目指した。」


「稚内を発ち、小樽を目指した大笠原丸と、他2隻は」

「留萌沖20数キロで海中に没した。」

「何者かの攻撃によってね。」


「おそらく、父上はその攻撃の意思、殺意を感じ、回避行動に出た・・・」


えらく懐かしい昔話だ。オレが幼い頃、婆様からよく聞かされた。

だがなぜだ?

「そうなると新たな疑問が浮かぶよミスターロイ。」

「その話を貴方方は、一体何処で聞いた?」


「ユーリ・レオーノフ」

「核技術者である彼が日本人妻と共に、祖国ロシヤから日本へ亡命する際」

「当時、我々が手助けした事があってね。」


「我々は彼に頼まれたのだよ。」

「亡命後、自分に何かあった時は、妻を頼むと。」

「彼との約束の為に、我々は彼の妻を陰ながら守護していた。

 サハリンの地で。」

「そして戦乱が北より押し寄せる中、我々は彼の妻をつれて

 大笠原丸へ───。」

「我々は一度、君の父上と出会っているのだ。大笠原丸の船上で。」

「そして貴殿の幼き父上は、私達に協力を求めた。」


「ここで降りなければ皆、海に沈むと」


「・・・・。」

親父と───、出会っていた?


「以後、貴殿のお父上を我々は探し続けた。」

「我々が求める力の持ち主として。」

「そして恩人との再会を求めて。」

「だが・・・」


「貴方方は親父を見つけられなかった・・・」

そうだ、戦後復興の中、集団就職組の一人として上京した親父は

そのまま行方をくらませた。


「しかし当時、父上と内縁関係にあった奥方、つまりは

 貴殿の母上を我々は見つけた。」

「この手がかりを見出すまでに、40年ほど費やしたよ。」

「そして悲しきあの墜落事故。」


「あぁ、貴方がたの手掛かりだった母と、幼かった妹は死に。」

「数少ない生存者の中に・・・。オレがいた。」


「そのとおりだミスターソウマ。そしてその時、我々は確信した。」

「稚内で多数の命を救った神童、英雄たる遺伝子が貴殿にも宿っていると。」


「───、買い被り過ぎだ。」

「おや、果たしてそうかな?」


「実際、貴殿の父上がいなければ今の我々は存在していないかもしれない。」

「そうなるとそこのダニエルも───。」

「無論貴殿とて産まれていなかったのかもしれぬ。」

「となれば、ここまで貴殿が守り抜いた都くんは、今頃ミスターMの手の内にある。」


理屈だけ並べりゃそうなるな。

だが───

「───、そりゃ結果論だろ?」


「ふむでは、私の言葉遊びに少々付き合っていただけるかな?」

「ミスターソウマ。」


「───あぁ」


「この国の言葉、いや?言霊信仰に対する問だ。」

「ミスターソウマ。水を温め湯にする事をなんと言うのかね?」


「は?───、そりゃ・・・湯を沸かす───かな?」

「そうだね、ではこの国の主食でも有り、我々が先ほど頂いたライス」

「作ると言う行為をあなた方は何と?」

「───、飯を炊く・・・かな?」


「そのとおり。」


「だが貴殿が言った言葉に、おかしな点はないかね?」

「少なくとも我々、外の人間は疑問に思う。」


「さぁ・・・・な?」

なるほど、ダニエルが言う教授───ね、確かに講義っぽくなってきたな。


「では答え合わせをしようミスターソウマ。」

「水を火に掛け、沸かして湯になるのだろう?」

「湯はいくら沸かしても湯のまま。違うかね?」

「ライスもまた然り」


「ではなぜこの様な言い回しが、古くから現代に至るまで」

「この国では語り継がれているのか?」

「不思議な話だと思わないかミスターソウマ。」

「私はね、こう思うのだよ。」


「信念有る者によって引き起こされた事象は必然へと向かう。」


「水や米を炊いても湯やライスにならないかもしれない。」

「そう思ってキッチンに立つものは居ない。違うかな?」


「まぁ──────確かに」


「故に行為によって必ずその様な結果になる場合に限っては」

「この国では結果を先に語る事がある。」

「必然なる結果、言わば因果だな。」

「中でも私の興味を引いたのが、無くなった方を偲び、謝意を伝える───」

「こういう言葉があるだろう?」


「生前はお世話になりました。」


「おかしいとは思わないかね?」

「故人を偲ぶ言葉であるにもかかわらず、生前とは如何に。」

「生まれる前はおせわになりました───と?」


「私はこの国ならではの美しい表現体、故人と残された者への配慮───」

「いや、ここはあえてこう言おう。思いやり」

「このような言葉が現代でも使われている。」

「まったく素敵な話じゃないか。」


「つまり、生前という言葉に疑いを抱かない貴方がた日本人は」

「既に故人の魂は別のところで生まれている前提なのだ。」


「故に、生前=生まれ変わる前=亡くなる前は と無意識的に理解し」

「この様な言い回しが使われ続けている。」

「疑問を差し挟む余地などなく、ね」


言葉の意味に疑いを抱かない───ね。


「言霊信仰。」

「発した言葉には神が宿り、必然的な結果を招く。」


「うむ、全くもってステキな文化だと私は羨むよ。」

「そして、これら全てに共通する解とは──────」


「因果か・・・」

講義ってより坊さんの説法に聞こえてきたぜ。


「そのとおり、因果からは逃れられない。」

「これは我々の文化圏とて同じく語られる言葉。」


「我々と不死の英雄が時を超え、世代を超えても再び出会えたこの事実。」

「貴殿がハードラックに翻弄されながらも貫こうとする、その思い。」


「全て、因果。この結果は変えられない、こう考えると──────。」

「ミスターソウマ、貴殿はまだ結果に至っていない。」

「辛く乗り越えがたい過去があっても、貴殿は進まなければならない。」


「・・・・。」


「いやすまないミスターソウマ、ここまで語ると釈迦に説法だったかね?」


「いや、気持ちはありがたく受け止めさせてもらうよ。」


立ち止まらず諦めるなと、オレを気遣ってくれている───

と同時に我々に付き従えとも聞こえる。

いや、これは斜から見過ぎかな?


 一通り語り終えた向かい合う老師は、乾いた喉を潤すように紅茶を楽しむ。

そんな彼に、オレはもう一つの疑念を問いかけた。


「貴方方はオレをここに招くために都を使わした。」

「オレを得るために都を餌にした、とも取れる。」

「貴方ほどの人格者がなぜ、都を利用した?」


その問にロイは都を見つめる。

「都君、いいかな?」


ロイの問いに対し、都は静かに頷いた。


「都くんの能力を持ってしてでも、我々はなんとしてでも貴殿を

 迎える必要があった。」

「都くんの能力。女神の微笑(魅了)を使ってでもね。」

「だが同時に、これは通過儀礼でもあった。」


そしてロイに続くように都が語る。

「相馬さん、でも貴方には、私の力など必要なかった。」

「事実、私は貴方と出会ってから一度も力を使っていません。」


再びロイが続ける。

「しかるに、その事実故、我々は一切の疑いも持たず貴殿を迎えた。」

「貴殿は自らの信念に基づいて行動した結果、修羅場を乗り越えここにいる。」


「力を使わずとも貴殿は都くんをここに導いた、一人の人間として。」

「すなわち、私はこう結論した。」

「貴殿は人類の未来を託すに値する正義を持ち合わせた男とである。───と」


「ロイドさんよ────、そいつはチット持ち上げ過ぎだ。」

「いいや、事実だよミスターソウマ。」


そうか、都の能力───。魅了・・・か。 

気が悪い事に、村瀬と同じ能力なのか?


そう思った瞬間、まるで心が読まれているかのように

ロイはその疑問に対し答えを語る。


「ミスターソウマ、都くんの能力は貴殿の上司、ミスターMとは違う」

「彼の能力は───、そうだな。言わばアクティブである故、不完全。」

「完全なる魅了とは少し違うようだ。」


あぁ───、やはり彼等は表側の理屈が通用する連中じゃないんだな。


「それは、つまり日本国としての最高機密でさえ」

「貴方がたの手中にあると示唆している・・・ということか?」


外人さんがよくやる否定を表すボディランゲージをしながらロイが答える。

「いや、純然たる事実よりもたらされた解だよミスターソウマ。」

「ミスターMの能力に関し、恐らくそうではないか?という断片情報は」

「こちらも得ていた、だが貴殿の彼に対する態度」

「それが私を核心へと導いた。」


「たとえば、貴殿は彼に対し絶対的なる服従を誓えるかね?」

「愚問だ、そこのダニエルが見てたはずだ、オレが奴に対し弓を引いたのを。」


「フフフ、ミスターソウマ。そこだよ。」

「本来、女神の微笑とは、そのようなネガティブな感情さえ塗り替える。」

「故に、貴殿のその感情はありえないはず、それともう一つ。」


「最古にして最強とも呼べる都君の力は、コントロール可能なところにある。」

「先ほど都君が自ら語ったように、都君の意思によって力を使うか否かを

 選択できる。」

「女神の微笑に関しては、パッシブであるがこそ最強なのだ。」


「だが彼は違う。」

「ミスターソウマ、貴殿は自衛隊から公安へのリクルートを受けた際───」

「それを拒否するという選択肢もあったはずだが───」

「ミスターMの元へ、鞍替えを決めた決定的な理由は、なんだった?」


「・・・・・。」

 奴がオレの前に現れ、オレに転属の命令を告げた際・・・。

書類上の手続きは完全だったとはいえ、拒否して陸自に残るという

選択肢も───。

確かにあの時、否定出来たはず。

だが・・・なぜかあの時───オレは・・・。


「そうだ、能動的に貴殿が転職を決定し、彼の元へ転属したのであれば───」

「今のような葛藤はなかったはず」

「違うかな?」


悔しいがロイの言うとおりだ。


「これらの事から、彼の能力はアクティブ、常時発動しているのだ。」

「好意的、好戦的問わず人を惹き付けてしまう。」

「これでは能力者として───いや、戦闘単位として完全ではない。」

「トリガーの無い、セイフティも無い銃なんて、ナンセンスだからね。」


「・・・待ってください、だとすると───」


「イエスだミスターソウマ、常時発動の女神の微笑なれば」


「俺が今も抱いている村瀬に対する不信感も」


「如何にも。塗り替えられなければならない。イエスだミスターソウマ」

「私達はミスターMの能力に関して、不完全ではないか?と

疑いを持って捉えているのだよ」


「・・・・と、言うと?」


「彼の能力は後天的に備えたものなのではないか、故にLimitedなのではないか?とね」

「後天的?そんな方法が?」


「無論、これは推測に過ぎないがね。」


 村瀬ならその方法があったとして、いかなる犠牲が伴っても忠義を盾に

実行するだろう・・・。アレはそういう男だ───。


「話を戻そうミスターソウマ、貴殿の話へ」

ティカップに残った紅茶を飲み干し、静かにカップを置いた老紳士は

意を決したかのようにこう続ける。


「誤解を恐れずにあえて言おう。」


「貴殿と都君が世界を制した時。」

「真摯な正義感を元に統べる英雄王。」

「全人類を女神の魅了をもって掌握しせしめる王妃。」

「全世界を───、強制的平和へ導くことも可能。」

「違うかね?」


それまでのロイからは信じられない言葉が出たな。

愚問中の愚問だ。


「それこそナンセンスな話だ。」

「そこに至って、歴史の中で断罪されてきた独裁者と、なんの違いがある?」


「ふむ、ミスターソウマ、果たしてそうと言い切れるかな?」


「相互確証破壊に基づく核兵器による恐怖を元にした強制的世界平和。」

「現代の表舞台と───。ミスターソウマ、何が違うのかね?」


「今の世界は、核兵器と言う名の独裁者が行う恐怖政治の下にある───」

「カリソメの平和。そうとは・・・言えないかね?」


目尻から伸びる皺と見分けがつかない程、

笑顔を元にしたロイの瞳が今、ハッキリと開かれ

恐怖さえ覚えるその眼光がオレを真っ直ぐ射抜いて説いていた。


その時。部屋の隅にある電話が、一瞬静まった部屋に鳴り響く。


問答の最中扉の横で佇んでいた赤毛の彼女が、静かに電話の元へ向かい

受話器をとり、こちらを見据えた。


「ソウマ様、貴方様宛にお電話です。」





「───村瀬様より」




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