1-11 辛酸
二〇十八年七月 深夜
真をロイに預け別れた私は、ロイより受領した本来のアシを駆り
一路、京都市内へと向かう。
道中、車内でこの2日の出来事を振り返る。
ルーチンと異なる事態へ、常に発展するこの国での仕事に私はすっかり
呆れていた。
想像より早かった日本側の対応。対話のチャンネルを開かず直接行動へ
出た彼らの【手に入らないのであればいっそ滅してしまおう】というやり口。
いかにもなあの男らしさに改めて嫌悪する。
今回の仕事に当たり、依頼内容にはにはこちらの存在と意思を匂わす事が
必要とされていた。その為に昨日の花火大会での襲撃者の一人は必ず生かす
必要があった。片腕を落としながらも生存したその男の口から、イレギュ
ラーたる真の存在が日本側へリークするのは、織り込み済みでは有ったの
だが───、真がこちら側の茜と接触した事実を、やはり日本側は黙って
いなかったようだ。
全力を持ってしてでもこちら側へ、新たなカードが渡ることを阻止するといった
日本側の思惑に、私は以前の重々しい記憶を回想せざるを得なかった。
「似ている・・・」
灰色の既視感を紛らわすためにタバコに火を灯す。
「最強にして最古の二枚のカード・・・か」
紫煙を燻らせながら呟く
至近距離で放たれたサブソニックの銃弾をも、無意識下のうちに素手で
受け止めるほどの絶対的生存本能を持つ少年。
標的を自身の有効範囲内なら年齢性別に関わらず、確実に魅了してしまう
力を持った少女。
19年前の辛酸を舐めるような重々しい記憶が、紫煙と共に体に満ちて
いくのを感じ、私はそれまで燻らせていたタバコを備え付けのアッシュ
トレイへ無念なる記憶とともに揉み消し呟く。
「やはり───私はこの国が嫌いだ 」
12気筒の快音を轟かせ、私は茜の元へと急ぎ向かう───。




