1-8 二話 裏返しの日常 1
二〇十八年七月某日 ???時
一人ぼっちの部屋が暁の菫色に染まる中
俺は部屋の隅で目を覚ました。美咲の電話を切った後、眠ってしまった?
それまで何が有ったかあまり覚えていない。むしろ、
なんとなく思い出さないほうがイイような気がする・・・
この焼け付くような焦燥感はなんだろうか───
じっとりと体を覆うオイリーな寝汗を流すためにとりあえずシャワーを浴びる。
目覚めてからコッチ、オデコ辺りがズキズキ痛む。寝ながらどこかにぶつけたかな?
「あ゛ー・・・なーんか忘れてるような気がすんだよなぁ─── 」
熱いシャワーを浴びれば思い出すかと・・思ったんだケドなぁ・・・
引き出しの奥に隠したお宝本が引っかかっちゃって、チョットは開くんだけども
うーん!もどかしい───って、そんな感じ。わかるべ?
シャワーから上がり、頭からバスタオルを被りワシャワシャと髪をかきむしって
パン一で歯を磨きながらふと思う・・・
「ふぁれ?今朝、目覚まひ鳴っれ・・・なひよな」
歯ブラシを咥えたままベットに放り投げたはずのスマホを取り───
「マジか・・・・画面、割れてる・・・」
そういやバイクで事故ったんだったな。そんとき割っちゃった・・・っけ?
あれ?でもそれって先週───
確か寝ちまう前に美咲から電話がかかって───
「イ゛ッ!!・・・ッツう─── 」
瞬間、ズシッと鉄の杭をこめかみに差し込まれたような痛みに
しばらく悶絶する・・・
常備薬のアスピリンを一錠噛み砕いて痛みが引いた頃、冷静になって考える。
「とりあえずスマホが通じないのはマズい、新幹線で紫色の悪魔が来る。」
誠に遺憾ながら貴重な青春の1ページ、本日の予定が決定した。
「とりあえずケータイ屋だな。」
「くっそー金無いのに・・・」
「この先一週間は袋ラーメンオンザエッグにグレードダウン決定・・・」
通帳見ながら泣いてても仕方ないので、とりあえず冷蔵庫の中の物で早々に
朝食を済ませ、灼熱になる前にとケータイ屋の開店時間にあわせアパートを出た───
けど、ダメだ。
昨日の夕立が空気にたっぷり水分を与え、スチームサウナの様相を呈してる
「バっかじゃねーの!!まだ7月ザマスよ?」
汗だくでトボトボと歩きながら妄想王は思う。
「わりぃ、アシが無いのはやっぱつれぇわ」
スマホもそうだけど俺のキングデュラハン号、早く蘇ってくれ・・・
片道15分歩いて駅前のケータイショップに到着。
2時間ほど待たされてやっと修理と引き換えの代替え機を入手。
現在正午くらいか?
SDカードを差し替えて仮復旧を図る、鼻歌交じりに電源を入れた。
映し出されたその画面に一瞬、顔が燃えるように熱くなって刹那
一気に凍りつくように全身の血の気が引くのを感じた。
待受画面には男女3人の顔写真が───
上に天使のような微笑みを湛えた少女
左下にダブルピースを決めながらニッコリ笑う少女
右下にはダブピに画面から押し出されそうになりながらイキり顔の俺・・・
「あ・・・れ───? 」
その瞬間、記憶が俺の頭に滝のように流れ込み現実がおぞましい速度で蘇る。
「う・・そ───。」
その時、彼女たちの名前で頭の中が一杯になる
「あ、茜?・・咲・・・夜───咲夜ぁ!そうだよ!あの二人は!?」
「無事・・・なのかッッ!?」
駅前で一人大騒ぎの俺のを、テニスラケットのケースを持った女子高生達が
ヒソヒソ話しながら避けて通る
おちつけ俺、1つずつ出来ることから始めよう・・・
「とりあえず・・なんだ─── その・・・そうだ連絡先!」
電話帳を開いた瞬間、不在着信履歴8件の表示を見つけ藁を掴む気持ちで
詳細表示にする
1.7/23 10:32 宮田 咲夜
2.7/23 10:33 宮田 咲夜
3.7/23 10:42 宮田 咲夜
4.7/23 10:56 宮田 咲夜
5.7/23 11:12 宮田 咲夜
6.7/23 11:41 宮田 咲夜
7.7/23 @208.33 非通知着信
8.7/23 12:08 宮田 咲夜
目頭が熱くなって鼻の奥がツーンと痛くなる。
「ハハ、ハッ───どんだけ、ガッついて、ん、だよあの小動物・・・は──」
そう言うと俺は人目も気にせずヘナヘナとその場に座り込んだ、泣きながら──
一通り安堵の涙を流した俺、声がえずきで踊らなく成ってから咲夜に電話をした
『この電話は電波の届かない場所にあるか───』
繋がらず。よく考えりゃそうだよな、アイツたぶんいま病院だ。
「ともなれば茜だ、まさか───、あのままあの男に誘・・・ィツッ!」
クソッまた頭痛だ、奴の顔を思い浮かべた途端の強烈な痛み
とりあえず帰宅してから茜に連絡を試みることにして帰路につく
この不安定な頭痛、途中で倒れでもしたら最悪だしな。
駅前から帰る途中の土手で非常線が貼られた一角に通りかかると
制服の警察官が、ここは通れないと丁寧に迂回路を案内してくれた。
というか、もしかしなくても俺、結構重要参考人か最悪容疑者的
立ち位置だけどあの警察官なんにも・・・
「まぁ、今はまず茜だ」
そう足早に歩く最中、迂回路の途中、対岸から例の場所が見えた。
「うぐっッ・・・・」
今度は視界が暗転しそうになる、多分精神的なやつだ───
あんな惨状を見たんだ、普通にしてられる方が嘘だ・・・
なるべく見ないように顔を背け足早に住宅街へ
そうして、夏の暑さをすっかり上回る妙な悪寒に震えながら帰宅した。
鍵をいつもの場所へ放り投げ、自室の扉を開くとそこには・・・
「・・・・───生きていたな小僧」
奴が居た───




