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囚人食  作者: いもたると


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 だが、元々母は大学のことなど良く知らないのと、志望校が全国的に良く知られた国立大学ということもあって、娘がそんなところに入ってくれれば母の株も上がるのではないか、という淡い期待もあったのだろう。

 現役で合格する、という条件付きで、なんとか了承を得ることができた。

 実際は、水産を学ぶにしたって別に北海道でなくてもいいし、私としては母の元を出られればどこでも良かったのだけれど。


 とはいえ、方向性は決まったのだから、私はより一層受験勉強に励むこととなった。

 とにかく出口は見えたのだ。

 あとはそこに向かって努力するだけ。

 母は仕事のキャリアが順調に行っているし、兄も帰ってきた。

 もう私が母を支える必要はない。

 私は今まで我慢してきた。

 幼い頃は父に抑圧され、両親が離婚してからは、兄に心を痛め、母の力になってきた。

 遊びたいのを我慢し、母をがっかりさせまいと、自分を犠牲にしてきた。

 もう十分だ。

 私はもう十分、家族に尽くしたはずだ。

 そうだ、これからは私の人生が待っている。

 自分のために生きよう、そう思っていた。


 その結果、努力した甲斐あって、私は見事、現役で志望校に合格することができた。

 ああ、良かった。

 これで自由になれる。

 もう母の干渉から逃れられる。

 私は意気揚々と海を渡って、希望の大地へと降り立ったのである。

「四年だけだもんねえ」

 合格が決まったとき、母はポロッとそんなことを言ったけど、もちろん私にはそんなつもりはなかった。



 入学式に母は付いてきた。

 私としては、本当は来てほしくなかったのだけれど。

 そのぐらいは我慢しようと思った。

 これを乗り越えれば、あとは自分の人生が待っているのだから。

 もう母にコントロールされる時間はおしまいだ。


 ただ、少し詳しく言うと、ここまでの道のりは相当ストレスの溜まるものだった。

 見知らぬ土地で一人暮らしを始める娘を以上に心配して、母は私が住むマンションから、入学式に着る着物から、何から何まで、一人で差配したのである。

 当然の如く、そこに私の意思が入る余地はなかった。

 ちなみに、もちろん受験のときにも母は付いてきた。

 全部終わって東京の空港に着くや否や、彼女は私と別行動で、タクシーでテレビ局に向かったのだけれど。


 でも、ここまでだ。

 これだけ我慢したのだから、もう私は籠の中の鳥ではない。

 自由に羽ばたいていっていいのだ。

 だが、それは甘い考えだった。

 私が想像するより、母の支配力ははるか遠くまで及んでいたのである。

 母は、それまでの18年間、コツコツと私にある呪いを仕込んでいたのだ。

 それはまるで、私の骨の髄に仕込まれた、時限爆弾のようであった。


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