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囚人食  作者: いもたると


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 私は母の感じ良くというリクエストとは反対に、陰気で内に籠る少女になっていった。

 ご近所の人に会うのが嫌で、なるべく誰にも会わないようなルートを通って学校に行くようになった。

 家に帰ってからも、ほとんど外に出ることがなくなっていった。

 そもそも、それまで家庭最優先で青春を犠牲にしてきた私には、兄のようにつるむ相手もいなかった。


 いつものように学校に行き、帰ってくるだけ。

 定期券の外に出ることなんて、思いもよらなかった。

 時折、ふとそんな考えが頭をよぎったこともあったが、その度に何か目に見えない透明な大きな空気の塊のようなものが、私の体の周りに壁を作って、決められた道を逸らさせないようにするのだった。


 その頃、何もかも壊してしまいたい衝動に駆られることもしばしばであった。

 だが、籠の中の鳥として調教されてきた私は、そんな衝動を無意識に抑圧する方向に進んでいった。

 抑えることは、得意であった。



 そんな中、私は一つの策を講じた。

 いくら私だって、いつまでもやられっぱなしではない。

 高校三年生になり、進路を選ぶ時期になった。

 それまで勉強はそれなりにしてきたから、いくらこの人のDNAを引いているとはいえ、大学に行けるだけの学力は身についている。

 ちょうど兄も戻ってきて、なんとか板前として前に踏み出せる見込みもついてきた。

 そんな状況だった。


 このまま籠の中の鳥を続けている未来を思うと、言いようのない不安を感じた私は、思い切って大学進学を機に家を出ることにした。

 だが、ただ漠然と外の学校に行くというのでは、理由が乏しい。

 普通に考えれば、東京に住んでいるのだから、わざわざ地元を出る必要はない。

 反対されることは目に見えている。

 そこには強い理由が必要だ。


 考えた挙句、私は北海道の大学に進んで、水産を学ぶことにした。

 これなら名案ではないか、と思った。

 北海道を選んだ理由は、なるべく母から遠いところに行きたかったからである。

 関西ぐらいでは、この強烈な母のエネルギーから逃れることはできないと思ったのだ。

 だから遠くへ、なるべく遠くへ。

 かと言って、海外など持っての他であるから、北海道というのはとてもいい場所だと思った。


 北海道にて水産を学ぶ。

 これなら、家を出る理由もちゃんとあるし、北海道でなければならない理由もある。

 水産というのも都合がいいと思った。

 それなら母の専門の料理と繋がりがあるから、母だって了承するのではないだろうか。


 そのまま水産関係の仕事に就いて、北海道に定住しよう。

 いつまでも母の影響力の及ぶところにいたのでは、私は人生がない。

 大学の四年間で、自立しなくては。


 私のはかりごとは、一応は成功を見せた。

 予想通り、母のショックは大きかった。

 あからさまに驚いてみせ、失望した様子もあった。

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