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IDEA24  作者: みかづき
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Episode3

 細心の注意を払いながら部屋を出た。


 声が言うにはこの家、いや規模を考えれば屋敷が適切だが、ともかく地下があるらしい。


 どうやらそこに行けば安心らしい。


 しかしどうしてこれほど構造を把握しているのだ。


 幻聴というのは私の頭の異常、つまり私の知る限りのことしかできないはずだ。


 ……なら、私は忘れているだけでこの屋敷のことを知っている?


 だとしたらベルカナの態度に違和感が……。


 ……まぁいい、今は安全を確保することが最優先だ。




 どうやら私は二階にいたらしい。


 無事にたどり着けるか不安だったが、助言もありあっさり地下へたどり着いた。


 道中何人か、恐らくこの事件を引き起こしている集団を視認したものの、発見されることなくやり過ごすことが出来た。


 自分で言うのもなんだが、息を殺すのが上手いのかもしれない。


 これも恐怖が警戒心を掻き立てているおかげだろうか。


 直接見ることはなかったが、戦闘が発生しているようだった。


 どこかからか金属同士がぶつかる音が複数聞こえた。


 もしかするとベルカナもそこにいたかもしれない。


 その後石造りの地下への階段を発見し、今に至る。


「手前の扉を開けて、そこがゴールだよ」


 声の言う通り進んでいき、その扉の前まで来た。


 「じゃ、部屋で待ってるよ」と言い残し、以降聞こえなくなった。


 待っている……?


 誰が?


 ……まさか、声の主か?


 何を馬鹿なことを。


 そんなことあるわけがない。


 そうなのだが……誰かが待ち構えている可能性は十分ある。


 油断大敵だ。


 私は鼓動の高まりを感じながら金属扉を押し開けた。


 薄暗い室内だ。


 本棚が多く、書斎のような印象を受ける。


 ただ金属の器具が乱雑に置かれていることから、実験室のような役割があることも予想できる。


 そして中央には何かの台座がある。


 何かが飾られているようだ。


 興味本位でそれに近づいていくと、輪郭がはっきりと見えてきた。


「刀……?」


 半分被さっていた布をどけて、手に取ったソレは刀であった。


 かなり年季の入っているようだ。


 黒を基調とした鞘には一切装飾はないが、ごくわずかだが赤い錆のようなものが滲んでいる。


 天井からの光の当たり方を変えれば、僅かに色の違う部分が浮き上がった。


 柄に至っては巻かれた布の至る所がほつれている。


 鞘から少し刃を出してみると、光を受け鋭く光る、研ぎ澄まされた白色だった。


「改めて、初めましてだね。ここまで来てくれてありがとう」


「わっ……!」


 驚きのあまり刀を落としかけた。


 部屋を見回すが誰もいない。


 ……幻聴は続いたままか。


「ふっふっふ、驚いたかい? なんと、声の主は人ではなく刀だった! どうだい、面白いだろう?」


 なるほど、誰、と考えていたが声の主は物だった。


 ……そんな訳ないだろう。


 人が出てくるのか、せいぜい何もないのどちらかだと思っていた。


 どこかに潜んでいるはずの存在を探るが、結果は変わらない。


「まぁまぁ、信じられなくても仕方ないよね。けど事実、僕は君と面と向かって話している。もっとも、僕が面に向かったらスパって切れちゃうけどね、はっはっはっー!」


 ……なんなんだこいつ。


 まるで緊張感の欠片もない。


 ただでさえ何処からともなく声が聞こえてくるのに、それの発信元は刀?


 頭がおかしくなったにせよ限度がある。


 本当にどうしてしまったんだ。


 ……いや、今は自分への懐疑心を育ててる場合じゃない。


「で、これからどうすればいいの? ずっとここにいればいい?」


「いやいや、隠し通路を通って裏口から出るのさ」


 あぁ、なるほど。


 確かに地下にいると何となく守られているような気がしてくるが、敵が来る可能性もあるか。


 ……ならなんでこの部屋まで呼ばれたんだ?


「それじゃあもう行くよ」


 私は立ち上がり、金属扉に向かった。


 と、ノブに手をかけると制止された。


「ちょちょちょ、僕を置いていかないでくれたまえ」


「……え? 何で?」


 逆に何故持っていかねばならない。


 護身用か?


 だがベルカナの所有物だ。


 他人の家にあるものを勝手に持って行っていいわけがない。


 当たり前すぎて口にするのすら恥ずかしい。


 これが私の直感?


 正気じゃないな。


「いやいやいや、困るよ。なんでここに呼んだと思う? 助けるだけだったらこんな寄り道させないよ?」


 全くごもっともだ。


「……あぁもう、仕方ないなぁ。こうなったら奥の手を使わせてもらうよ」


 もし人間相手で「奥の手」と言われれば身構える。


 が、所詮相手は私。


 こんなのに構わずさっさと外に……。


「君が連れて行ってくれないなら協力しない。そうでないなら最大限力を尽くして君を支えるよ」


「なっ……」


 それは……困る。


 一応この声頼りで脱出の算段を立てていた。


 そして、声の言う隠し通路を私は知らない。


 徘徊して探し回るのは当然なしだ。


 こうしている間にも誰かが来るかもしれない。


 ……あぁ、ベルカナにもう二度と会わないことを祈ろう。


「分かったよ。行こう」


「ふんふん、そうこなくっちゃ」


 こんな訳の分からないものに運命を委ねなきゃならないのか、私は。


 私はため息をつきながら、刀を手に取り部屋を後にした。

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