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朱色のゲートウェイ ー 御神体 ー  作者: 此花 陽
令和初期編

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24/28

拒絶の真空、石の防護服


 志乃は、最前線で戦う看護師だった。  


 彼女は誰よりも献身的に働き、

 誰よりもルールを守った。

 

 だが、その「正しさ」こそが、

 周囲の恐怖を逆なでした。



「病院に勤めている人間が近所にいるのは不安だ」

「バイ菌がうつる」。  


 心なき言葉が彼女の自宅に投げ込まれ、

 彼女は次第に、外界との接触を

 完全に断つようになった。

 

 私が彼女の部屋を訪れた時、

 そこは異様な「無」の状態だった。  


 志乃は防護服を纏ったまま、

 空気清浄機が唸る部屋の隅で石化していた。  


 彼女の肉体は、周囲の空気を吸い込み、

 拒絶のあまり周囲に「真空の層」を

 作り出していた。


 彼女の肌は、消毒液の冷たさと

 白い布の質感を宿したまま、

 一切の不純物を寄せ付けない

 

 **「拒絶の石」**へと変貌していた。



「事代さん……

 

 ここには、もう誰もいないわ。

 誰も入ってこれない。


 ……私も、誰にも触れない。


 清潔で……とても静かな場所……」

 


 志乃の声は、呼吸音さえ伴わない、

 完全な真空の振動だった。  


 彼女は、一億人が抱いた

「不浄なものを排除したい」という

 欲求をすべて背負い、

 自らが「究極の異物」となって

 封印されたのである___。



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