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拒絶の真空、石の防護服
志乃は、最前線で戦う看護師だった。
彼女は誰よりも献身的に働き、
誰よりもルールを守った。
だが、その「正しさ」こそが、
周囲の恐怖を逆なでした。
「病院に勤めている人間が近所にいるのは不安だ」
「バイ菌がうつる」。
心なき言葉が彼女の自宅に投げ込まれ、
彼女は次第に、外界との接触を
完全に断つようになった。
私が彼女の部屋を訪れた時、
そこは異様な「無」の状態だった。
志乃は防護服を纏ったまま、
空気清浄機が唸る部屋の隅で石化していた。
彼女の肉体は、周囲の空気を吸い込み、
拒絶のあまり周囲に「真空の層」を
作り出していた。
彼女の肌は、消毒液の冷たさと
白い布の質感を宿したまま、
一切の不純物を寄せ付けない
**「拒絶の石」**へと変貌していた。
「事代さん……
ここには、もう誰もいないわ。
誰も入ってこれない。
……私も、誰にも触れない。
清潔で……とても静かな場所……」
志乃の声は、呼吸音さえ伴わない、
完全な真空の振動だった。
彼女は、一億人が抱いた
「不浄なものを排除したい」という
欲求をすべて背負い、
自らが「究極の異物」となって
封印されたのである___。




