第漆乃鳥居:自意識の鏡
崖下で、
スマートフォンのフラッシュが
激しく点滅したまま石化した、
ルナの遺骸。
私はその遺体と、
彼女が最期まで手放さなかった、
レンズの砕けたスマートフォンを
九地無の里へと運び込んだ。
六本目のノイズの鳥居の隣に、
七本目の鳥居が建立された。
その鳥居は、石灰に数百万個の鏡の破片と、
スマートフォンのレンズの欠片を練り込み、
くすんだ朱色を底に沈めた
「鏡面仕上げ」の門であった。
「この鳥居を、呪われた『自意識』の檻にしなさい」
七本目の鳥居。
この門は、近づく者の姿を歪んだ形で反射し続ける。
この下をくぐる者は、鏡の中に
「自分が最も他人に隠しておきたかった醜い自意識」や
「虚飾に塗れた魂」を直視させられることになる。
人々はこの門をくぐるたび、
一度剥がれ落ちた自意識を、
また必死に塗り固めて現世へと戻っていく。
私は、ルナの喉から摘出した、
七枚目の「石化した舌」を拾い上げる。
それは、クリスタルのように透き通りながらも、
鋭利な角を持ち、触れる者を傷つける
「虚栄の舌」であった。
ハク、伊織、美空、金成、カイ、佐山。
そこに、ルナの「孤高の絶唱」が加わる。
「……不協和音は、
いまや一つの『意思』を持ち始めた」
私は、鏡のように煌めく
七本目の鳥居を見つめ、静かに嘲笑った。
やがて、承認の狂騒は「隔離」という
名の静寂に襲われる。
人々が互いを監視し、
正論という名の暴力で呼吸を止める、
息の詰まるような時代。
「閉塞」という地獄が、
八本目の鳥居の糧を呼び寄せていた___。
【平成末期編:完】




