映えの果て、鏡の石
ルナは、
数百万のフォロワーを持つ
「時代のアイコン」だった。
彼女が食べたもの、着たもの、流した涙。
そのすべてがデジタル信号に変換され、
瞬時に世界中へ共有される。
人々は彼女を羨望し、
同時に、彼女が崩れ落ちる瞬間を
ハイエナのように待っていた。
私が彼女を見つけたのは、
都会の喧騒から切り離された、
断崖絶壁の淵だった。
彼女は究極の「映え」を求め、
誰の手も届かない場所で、
一人スマートフォンを構えていた。
だが、その肉体は既に「生身」を
維持できていなかった。
レンズ越しに注がれ続けた
数億回の視線が、
彼女の皮膚を物理的に「ガラス」へと
変容させていたのだ。
「事代……さん……見て。
私、綺麗でしょ?
もっと、もっと見て……
誰も私から目を逸らさないように。
私が消えないように……」
ルナが微笑むと、彼女の顔面にヒビが入り、
そこから極彩色の光が漏れ出した。
彼女を支えていたのは、
自分を愛する心ではなく、
他者からの「いいね」という名の、
空虚な外骨格に過ぎない。
ルナが最高の一枚を撮るために
足を踏み出した瞬間、
世界中の「嫉妬」が彼女の背中を押し、
彼女は虚空へと舞った___。




