第陸乃鳥居:ノイズの鳴動
佐山が石化した自宅が、
物理的な嫌がらせによって全焼する直前。
私は、黒焦げのパソコンと一体化した
「佐山の石像」を、九地無の里へと運び込んだ。
五本目の灰色の鳥居の隣に、
六本目の鳥居が建立された。
その鳥居は、石灰に砕いた
シリコンチップと
光ファイバーを混ぜ込み、
表面をデジタルの闇を思わせる
どす黒い漆で塗り上げられていた。
「この鳥居を、消えることのない
『残響』で満たしなさい」
六本目の鳥居。
この門の表面には、
常に青白いノイズが静電気のように這い回っている。
この下をくぐる者は、耳の奥で、
数千万人が同時に囁く
「死ね」「消えろ」「お前が悪い」という、
かつて佐山を殺した罵声の残響を聴くことになる。
人々はこの門をくぐることで、
自らの指先が犯した罪を「ノイズ」として
里に奉納し、また新しい仮面を
被って日常へと戻っていく。
私は、佐山の喉から摘出した、
六枚目の「石化した舌」を拾い上げる。
それは、常に微細な振動を繰り返し、
触れると火花を散らす「熱い舌」であった。
ハク、伊織、美空、金成、カイ。
そこに、佐山の「デジタルの絶叫」が加わる。
「……合唱に、狂気が混じり始めた」
私は、ノイズを放つ六本目の
鳥居を見上げ、不気味に笑った。
やがて、情報の暴力は「叩くこと」から、
自分を「見せびらかすこと」へと進化する。
誰もが「自分こそが神だ」と信じ、
他人の視線を渇望する、飢えた時代。
承認欲求という名の地獄が、
七本目の鳥居の糧を育てている___。
【平成末期編:完】




