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朱色のゲートウェイ ー 御神体 ー  作者: 此花 陽
平成中期編

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18/28

電脳の磔刑、情報の石


 佐山は、些細な、

 

 しかし「燃えやすい」誤解から

 ネット上の標的となった。  


 彼の住所、家族の履歴、過去の発言

 ――すべてが暴かれ、

 数万人の「正義の味方」によって、

 彼は一晩にして社会的な死体へと

 作り替えられた。

 

 私が彼の自宅を訪れた時、

 佐山は真っ暗な部屋で、

 狂ったように点滅するモニターの前に座っていた。  

 

 彼の肉体は、既に「生身」を維持できていなかった。

 モニターから溢れ出した

 憎悪の光を吸い込み続け、

 彼の肌は液晶画面のような

 無機質なガラス質へと変貌し、


 指先はキーボードのキーと癒着して石化していた。



「事代……さん……消えないんだ。


 画面を消しても、目を閉じても、

 彼らの『死ね』という文字が、

 俺の脳の裏側に焼き付いて離れないんだ……!」



 佐山が喘ぐたび、

 彼の喉の奥で「キィィィン」という

 電気的な高周波の音が響く。  


 彼は、国中の人間が吐き出した

「無責任な善意の暴力」を一手に引き受ける、

 巨大な**「情報の避雷針」**と化していた。



「佐山。お前がここで完全に石となれば、

 ネットに漂う悪意の霧は一瞬だけ晴れる。


 お前が彼らの毒をすべて飲み込み、

 動かぬ『石のサーバー』となるのだ」



 私は、彼の後頭部に接続されたLANケーブルを介して、

 九地無の呪いを流し込んだ。  


 その瞬間、佐山の眼球は青白く発光し、

 全身が光ファイバーを神経のように取り込んだ


 「電網の石」へと完全に硬化した___。




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